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あまりよろしくない事だそうです!

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「キリアン・モントール様です」

 兄様がきょとんとした顔をした。





「モントール公爵家の?!」


 今度は大きな声を出した。声が大きいですよ。お母様がいたら怒られますわよー。


「はい。私この歳になるまで幼少期にフレデリック殿下とそれに兄様以外の子息とお話をした事がなかったので、公子様は私の初めての異性のお友達です」

 えへ! と言った感じで嬉しそうな顔をするリリアン。



「どう言った経緯で友達になったんだ? リリーのクラスは女子生徒しかいないし、友達になる事なんてまずないだろう?」

 リリアンの表情とは裏腹に心配そうな顔を見せるシルヴァン。


「公子様にハンカチを拾ってもらいました。それでお話をしていたら、なんとなく? ですけれどお互いに自己紹介をしました」

「……そうか。とうとうリリーにも異性の友達が出来たのか。学園に通っているから仕方がないとは思うが、友達とは言え異性だ! 私は心配だよ」

 お兄様ってこんなに心配性でしたっけ?


「公子様は優しくて穏やかで、なんとなく兄様に似ている様な気がしました。だから親近感が湧いたのかもしれませんね」


「……リリーの兄様は私だけだから、親近感を湧くのはおかしいな。話をするなとは言わないが、二人きりで会ったり話したりするのは、変に誤解を生む可能性があるからだめだよ! リリーはフレデリック殿下の婚約者候補なんだから、周りから良からぬ事を言われては後々リリーが困ることになるよ」


 あ、そっか。そうよね。学園にいると忘れてしまうわ。婚約者候補……

「はい。気をつけます」


「わかれば良いんだ。友達ができることは悪いことではないからね」

「はい!」

「邪魔して悪かった。もうすぐ晩餐だからキリのいいところでやめたらどうだ?」

「はい」



******

 それから両親も帰宅して家族揃っての晩餐が始まった。晩餐では今日1日あった事を話する。


「シルヴァンから聞いたが、子息と仲良くするのは良くない。殿下の婚約者候補に選ばれたんだからリリアンは、」

「分かっています。でも公子様はそんな方ではないと思うの!」

「それは私も分かっているよ。モントール公爵のご子息といえば、成績優秀、剣術も優れていると聞く。うわついた噂も聞かないよ」


 クラスの子達が公子様の話をしていた事を思い出した。成績はいつも上位で剣術大会でも優勝して、令嬢から人気があって子息たちからの信頼も厚いのだそう。

「公子様は世話好きなのかしら? だから異性に面識のない私の友達になってくれたのかもしれません!」


「まぁ……な。公子様が友達と言うのなら断れないだろう。節度ある付き合いで頼むよ」

「はい!」



******

 数日後

「リリーおはよう!」

「マデリーンおはよう!」

 学園につき馬車を降りたらマデリーンも丁度馬車から降りたところだった。


 今日は剣術大会の練習があるとのことで、他校の生徒も我が校に来るとの事!

 他校の生徒とはなるべく関わらないようにと通達されていた。面倒事は学園も避けたいのでしょう。

 いつものごとく他愛のない会話をしていた。するとバッタリと言った感じで公子様に会った。


「やぁ、リリアン嬢」

「キリアン様ごきげんよう」

 軽く会釈をした。

「あらリリーお知り合い?」

 マデリーンが言ったけれど、マデリーンはキリアン様を知っていそうだった。公爵家のご子息だものね。マデリーンは社交界のことも詳しかったりする。耳年増ですもの! マデリーンはお披露目会も終わって立派に淑女の仲間入りを果たしている!


「先日ハンカチを拾ってもらってお話をさせて貰ったの」

「そこで友達になったんだ。私はキリアン・モントールです」

「モントール公爵のご子息様ですわね! よく社交界でも噂になっておりますもの。存じ上げておりますわ。わたくしはマデリーン・カサールと申します」

「カサール侯爵のお嬢様で君もフレデリックの婚約者候補だったね」

「えぇ、そうですわね……」


「キリアン様は今から剣術大会の練習ですか?」

 腰に剣をさしていた。

「そうだよ。他校の生徒には性格が荒い者もいるから気をつけて! 早く教室に戻った方が良いよ」

「マデリーン教室にいきましょうか?」

「そうね。行きましょう」

「それではキリアン様わたくし達はここで失礼致します」


 二人に頭を下げられて手を振るキリアン。周りの男子生徒は羨ましそうにキリアンを見ていた。





「ちょっと、なになに! いつのまにか公子様と知り合ったのよ! 公子様はフレデリック殿下のいとこにあたるのよね!」

 少し興奮気味にマデリーンが言ってきた。

「そっか、そうよね。キリアン様も王族に近い方なんですものね。やっぱりお友達になんて烏滸がましいわね」
 
 陛下とキリアン様のお父様はご兄弟ですもの!


「そういえば来週フレデリック殿下にお会いしてくるわね! どんな感じだったかはまた知らせるわ。フレデリック殿下とお話しするのは初めてなのよねー。少し楽しみだわ」


 くじ引きで決まった順番通りマデリーンはフレデリック殿下に会うそうだ。マデリーンは断ると言っていたけれどどうやって断れるんだろう?


「気をつけてね!」



「気をつけてって……猛獣に会いに行くわけではないのよ?」

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