上 下
6 / 65

悪役令嬢に私はなる!

しおりを挟む

「それで秘策はあるの?」

 少し揶揄う様に聞いてくるマデリーン

「来月婚約者候補が順番にフレデリック殿下に会うことになるでしょう?」

「そうね。確か私はトップバッターだったわ。くじで決めたらしいわよ」


 どんな決め方よ! 王宮の方もそれで良いのかしら? 第一王子の婚約者候補の顔合わせにくじ引きって……

「ふふっ。お父様に言われてドレスを注文したの」

「リリーのドレスはいつも可愛いわよね! 今度お店を紹介してくれる?」

「それはもちろん! じゃなくていつものドレスとは違うドレスを注文したの。パステルカラーからの卒業よ! 顔がキツく見えるように大人のドレスを注文したの」

 ふふん! どう?



「まず見た目から変えようと言うことね」

「大正解!」


「……ドレスだけじゃ無理でしょ」

「あと何をすれば良い?」

「しなくても良かったんじゃなくて?」

「え! どう言うこと?」

「リリーは見た目が儚げでしょう? 性格は置いといて」

「……はぁ」

「見た目がおとなしい子がキツいことを言う方がより悪く見えると思うわよ。私がキツいことを言ってもスルーされるかもしれないけれど、リリーが言うとぐさっと刺さると思うのよねぇ」



「……そう? それなら髪型を縦ロールのドリルにするのはやめておくわ。真っ赤なルージュと長く引いたアイライナーもやめた方が良い?」

「ぷっ。くっくっくっ……どこで習ってきたのよ。いつの時代の、」

「マデリーン、あなたから借りた悪役令嬢が出てくる本よ。事実とは異なるのね……」

 しゅんと肩を落とすリリアン

「まぁ良いんじゃない? やってみると良いわ。でも縦ロールのドリルは似合わないし髪が痛むからおススメ出来ないわ!」

「うん。アドバイスありがとう」

「そろそろ戻りましょうか?」


 教室へ戻る二人



******


「行ったか……おかしすぎて腹が捩れるかと思った……」


 人気のいないところを探して横になろうと芝生の上で寝転がっていた所にある令嬢たちがランチを始めてしまった。

 悪いと思い起き上がったが、二人の横を通らなければいけない為に、この場に留まってしまった。会話を盗み聞きするつもりはなかったんだが……悪いことをした。


 リリアン・サレット侯爵令嬢とマデリーン・カサール侯爵令嬢。

 この学園のマドンナとか言われているのに会話は普通の女子学生の様だった。


 二人とも女性しかいないクラスにいるので知り合う機会などない。この学園は貴族の学園で、平等と言っても知り合いではない限り話しかけることはできない。もし話したいのならば友人を介して紹介してもらうか、家同士の付き合いがあればなお良いとされている。


 二人とも第一王子の婚約者候補に挙がっているのに、二人とも嫌がっているとはな。それにしてもサレット侯爵令嬢は面白い子だった。儚げな印象とは違いハキハキと話し少しズレている所は、会話を聞いただけでも愛らしいと思った。

 直接話をしてみたいと思うが、サレット侯爵令嬢と知り合いなんて俺の友人には居ないよな……。

 そう思いながら午後の授業に出るために教室へ戻ろうと思ったのだが……

「ハンカチ?」

 拾い上げるとLilyと刺繍されたアルファベットと百合の花が刺繍されたハンカチが落ちていた。


 サレット侯爵令嬢はリリーと呼ばれていたな。だから百合か。

 拾って胸ポケットにひとまず入れる。

 
話しかけるきっかけが見つかったが、急にこれを渡して君のだよね。なんて気持ち悪いよな。せめてフルネールが刺繍されていれば届けやすかったのにな!


 もしかしたら探しにくるかもしれないから、念のため放課後戻ってこよう。と思った。


 放課後になりすぐにハンカチを拾った場所に戻ってきた。ベンチに座り本を読む。

 すると待っていた少女が一人でやってきた。そして俺に気づいたようで

「あっ……」

 と声を上げた。そして気まずそうに視線を逸らした。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

さっさと離婚したらどうですか?

杉本凪咲
恋愛
完璧な私を疎んだ妹は、ある日私を階段から突き落とした。 しかしそれが転機となり、私に幸運が舞い込んでくる……

断罪された悪役令嬢と断罪した王子は時を巡って運命を変える

あまぞらりゅう
恋愛
 卒業パーティーで王太子から婚約破棄をされたシャーロット・ヨーク公爵令嬢は、さらなる謀略により一族全員が没落させられてしまう。  処刑された彼女が目を覚めると、12歳の頃に時が戻っていた。  「わたくしは人生をやり直すのよ!」  シャーロットは二度と同じ轍を踏まないように新しい人生を歩んで行く。  だが、前の人生の記憶を持つ人物は彼女以外にもいて――……!? ★comicoタテカラー漫画原作コンテストで佳作をいただきました! ★2021.11.4 HOTランキングありがとうございます! ★他サイト様にも投稿しています!

完結 お飾り正妃も都合よい側妃もお断りします!

音爽(ネソウ)
恋愛
正妃サハンナと側妃アルメス、互いに支え合い国の為に働く……なんて言うのは幻想だ。 頭の緩い正妃は遊び惚け、側妃にばかりしわ寄せがくる。 都合良く働くだけの側妃は疑問をもちはじめた、だがやがて心労が重なり不慮の事故で儚くなった。 「ああどうして私は幸せになれなかったのだろう」 断末魔に涙した彼女は……

【完結】とある婚約破棄にまつわる群像劇~婚約破棄に巻き込まれましたが、脇役だって幸せになりたいんです~

小笠原 ゆか
恋愛
とある王国で起きた婚約破棄に巻き込まれた人々の話。 第一王子の婚約者である公爵令嬢を蹴落とし、男爵令嬢を正妃にする計画を父から聞かされたメイベル・オニキス伯爵令嬢。高位貴族を侍らせる身持ちの悪い男爵令嬢を正妃など有り得ない。しかし、大人達は計画を進め、自分の力では止めることは出来そうにない。その上、始末が悪いことにメイベルの婚約者もまた男爵令嬢の取り巻きになり下がっていた。 2021.9.19 タイトルを少し変更しました。

突然現れた自称聖女によって、私の人生が狂わされ、婚約破棄され、追放処分されたと思っていましたが、今世だけではなかったようです

珠宮さくら
恋愛
デュドネという国に生まれたフェリシア・アルマニャックは、公爵家の長女であり、かつて世界を救ったとされる異世界から召喚された聖女の直系の子孫だが、彼女の生まれ育った国では、聖女のことをよく思っていない人たちばかりとなっていて、フェリシア自身も誰にそう教わったわけでもないのに聖女を毛嫌いしていた。 だが、彼女の幼なじみは頑なに聖女を信じていて悪く思うことすら、自分の側にいる時はしないでくれと言う子息で、病弱な彼の側にいる時だけは、その約束をフェリシアは守り続けた。 そんな彼が、隣国に行ってしまうことになり、フェリシアの心の拠り所は、婚約者だけとなったのだが、そこに自称聖女が現れたことでおかしなことになっていくとは思いもしなかった。

平民と恋に落ちたからと婚約破棄を言い渡されました。

なつめ猫
恋愛
聖女としての天啓を受けた公爵家令嬢のクララは、生まれた日に王家に嫁ぐことが決まってしまう。 そして物心がつく5歳になると同時に、両親から引き離され王都で一人、妃教育を受ける事を強要され10年以上の歳月が経過した。 そして美しく成長したクララは16才の誕生日と同時に貴族院を卒業するラインハルト王太子殿下に嫁ぐはずであったが、平民の娘に恋をした婚約者のラインハルト王太子で殿下から一方的に婚約破棄を言い渡されてしまう。 クララは動揺しつつも、婚約者であるラインハルト王太子殿下に、国王陛下が決めた事を覆すのは貴族として間違っていると諭そうとするが、ラインハルト王太子殿下の逆鱗に触れたことで貴族院から追放されてしまうのであった。

私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。

木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるアルティリアは、婚約者からある日突然婚約破棄を告げられた。 彼はアルティリアが上から目線だと批判して、自らの妻として相応しくないと判断したのだ。 それに対して不満を述べたアルティリアだったが、婚約者の意思は固かった。こうして彼女は、理不尽に婚約を破棄されてしまったのである。 そのことに関して、アルティリアは実の父親から責められることになった。 公にはなっていないが、彼女は妾の子であり、家での扱いも悪かったのだ。 そのような環境で父親から責められたアルティリアの我慢は限界であった。伯爵家に必要ない。そう言われたアルティリアは父親に告げた。 「私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。私はそれで構いません」 こうしてアルティリアは、新たなる人生を送ることになった。 彼女は伯爵家のしがらみから解放されて、自由な人生を送ることになったのである。 同時に彼女を虐げていた者達は、その報いを受けることになった。彼らはアルティリアだけではなく様々な人から恨みを買っており、その立場というものは盤石なものではなかったのだ。

【完結】妹ざまぁ小説の主人公に転生した。徹底的にやって差し上げます。

鏑木 うりこ
恋愛
「アンゼリカ・ザザーラン、お前との婚約を破棄させてもらう!」  ええ、わかっていますとも。私はこの瞬間の為にずっと準備をしてきましたから。  私の婚約者であったマルセル王太子に寄り添う義妹のリルファ。何もかも私が読んでいたざまぁ系小説と一緒ね。  内容を知っている私が、ざまぁしてやる側の姉に転生したって言うことはそう言うことよね?私は小説のアンゼリカほど、気弱でも大人しくもないの。  やるからには徹底的にやらせていただきますわ!  HOT1位、恋愛1位、人気1位ありがとうございます!こんなに高順位は私史上初めてでものすごく光栄です!うわーうわー! 文字数45.000ほどで2021年12月頃の完結済み中編小説となります。  

処理中です...