上 下
33 / 36

別々の道

しおりを挟む
涙が止まらないミレイユ

「可哀想にエミリアに虐められて」
レナードがミレイユの肩を抱く
「違うの…そうじゃなくて」
言い淀むミレイユ

「レナード、甘やかすなって言ってるでしょ?」
エミリアが目を細めてレナードを見る

「ミレイユの可愛い目が腫れたらどうするんだ!ルイ冷やしたタオルをもってきてくれ」
「はい、はい…」
レナードに言われた通りに会場へ戻るルイ

「ミレイユ様、このクズに言うことあったら今のうちに言っておきなさいよ?」 

「…はい」
ふぅっと呼吸を整えてレナードの手をギュッと繋ぐ。自分の口でちゃんと言わなくては…

「思いっきり言いなさいよ?スッキリするから」
にこっと笑いかけられた


「幼い頃から一緒に学んで、遊んで…婚約者になって、頑張ってきました。貴方が令嬢に囲まれている頃、わたくしは教師に体罰を受けていた、学園で無視されていた、パーティーに出れば悪口ばかり言われていた。貴方は何も知らなかったとは言え、何年もバカみたいに耐えて…家の為だなんて立派なことを言ったけど…わたくしの貴族としての矜恃が邪魔した。仲のいい婚約者ではなかったけど…リップサービスで婚約破棄なんて…そんなことを言われる筋合いはありません!」

クロヴィスを見る

「悪かった、反省している」

「わたくしは…初めて好きになった人がレナード様です。もう過去は振り返りません、クロヴィス様もお願いだから前を向いてください…」

「ミレイユが私を見捨てるなんてな…」

「クロヴィス様にはエミリア王女殿下と言う素晴らしい方がおられます、同じことを繰り返さないで」

「エミリアにも悪いことをした」

「私は大丈夫よ、クズを更生させて好みの男に仕上げるから…任せなさい」
「頼もしいな」
「うちの国は女が強いのよ、知っているでしょう?」
力なく笑うクロヴィス
「自分の気持ちを押し付けるのは愛情とは言えないのよ、相手の気持ちを尊重しないと」
ハッと気付かされる言葉だった…

「昔からレナードはミレイユの事を好きだった。私より先にミレイユに婚約を申し込んだのはレナードだった、だから奪うようにミレイユを婚約者にした。それで安心したんだろうな…レナードが仮の婚約者まで作っていたと聞いてまだミレイユを諦めていないのかと呆れたよ」

「仲がいいと言う話は一切聞かなかったから、まだチャンスがあると思った」
レナードがクロヴィスに言う

「私はミレイユの事は好きだったけど、成長しきれなかったんだろうな…ミレイユが城にいるだけで安心していた。一番危険な場所だったのに…分かっていなかった」

「好きだったって今言ったわよ?」
エミリアに言われてハッとする…

「言ったか?」
「えぇ」
「幼い時から一緒にいたから…ミレイユに執着していたんだ、それは自分でも分かる」

「クロヴィス様の事は、幼馴染として嫌いにはなれないけど、一緒にはいられない…もう道は分かれてしまったの」

「そうだな…」
 
「言い方は悪いけど、クロヴィスはミレイユ様の事をお気に入りの玩具のように思っていて、取られちゃったから取り返したくなった、違う?」

「レナードに取られたのが悔しかったのかもな…」

「粘着質でストーカーな男より、呆れるほどクズだけど貴方の方が可愛くて好みよ?」

「失礼な女だなっ!」
レナード
「クズ…か」
クロヴィスが肩を落とす

「さぁミレイユ様、涙はおさまった?私と一緒に別室に行きましょうか?お顔を直してきましょう」
ミレイユに近寄りてを差し出す
「こんな失礼な女にミレイユをあずけられるかっ!」
グイッとミレイユの肩を強く抱くレナード

「ううん、エミリア様と行きます、レナード様、あとでね」
胸をぐいぐいと押されて体を離された

「クロヴィス、あとで迎えにきてね、分かった?」
エミリアがクロヴィスを睨む
「…あぁ、分かった」






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王命を忘れた恋

須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』  そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。  強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?  そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

──いいえ。わたしがあなたとの婚約を破棄したいのは、あなたに愛する人がいるからではありません。

ふまさ
恋愛
 伯爵令息のパットは、婚約者であるオーレリアからの突然の別れ話に、困惑していた。 「確かにぼくには、きみの他に愛する人がいる。でもその人は平民で、ぼくはその人と結婚はできない。だから、きみと──こんな言い方は卑怯かもしれないが、きみの家にお金を援助することと引き換えに、きみはそれを受け入れたうえで、ぼくと婚約してくれたんじゃなかったのか?!」  正面に座るオーレリアは、膝のうえに置いたこぶしを強く握った。 「……あなたの言う通りです。元より貴族の結婚など、政略的なものの方が多い。そんな中、没落寸前の我がヴェッター伯爵家に援助してくれたうえ、あなたのような優しいお方が我が家に婿養子としてきてくれるなど、まるで夢のようなお話でした」 「──なら、どうして? ぼくがきみを一番に愛せないから? けれどきみは、それでもいいと言ってくれたよね?」  オーレリアは答えないどころか、顔すらあげてくれない。  けれどその場にいる、両家の親たちは、その理由を理解していた。  ──そう。  何もわかっていないのは、パットだけだった。

嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜

みおな
恋愛
 伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。  そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。  その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。  そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。  ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。  堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・

婚約者は王女殿下のほうがお好きなようなので、私はお手紙を書くことにしました。

豆狸
恋愛
「リュドミーラ嬢、お前との婚約解消するってよ」 なろう様でも公開中です。

はずれのわたしで、ごめんなさい。

ふまさ
恋愛
 姉のベティは、学園でも有名になるほど綺麗で聡明な当たりのマイヤー伯爵令嬢。妹のアリシアは、ガリで陰気なはずれのマイヤー伯爵令嬢。そう学園のみなが陰であだ名していることは、アリシアも承知していた。傷付きはするが、もう慣れた。いちいち泣いてもいられない。  婚約者のマイクも、アリシアのことを幽霊のようだの暗いだのと陰口をたたいている。マイクは伯爵家の令息だが、家は没落の危機だと聞く。嫁の貰い手がないと家の名に傷がつくという理由で、アリシアの父親は持参金を多めに出すという条件でマイクとの婚約を成立させた。いわば政略結婚だ。  こんなわたしと結婚なんて、気の毒に。と、逆にマイクに同情するアリシア。  そんな諦めにも似たアリシアの日常を壊し、救ってくれたのは──。

【完結】彼の瞳に映るのは  

たろ
恋愛
 今夜も彼はわたしをエスコートして夜会へと参加する。  優しく見つめる彼の瞳にはわたしが映っているのに、何故かわたしの心は何も感じない。  そしてファーストダンスを踊ると彼はそっとわたしのそばからいなくなる。  わたしはまた一人で佇む。彼は守るべき存在の元へと行ってしまう。 ★ 短編から長編へ変更しました。

大好きな旦那様はどうやら聖女様のことがお好きなようです

古堂すいう
恋愛
祖父から溺愛され我儘に育った公爵令嬢セレーネは、婚約者である皇子から衆目の中、突如婚約破棄を言い渡される。 皇子の横にはセレーネが嫌う男爵令嬢の姿があった。 他人から冷たい視線を浴びたことなどないセレーネに戸惑うばかり、そんな彼女に所有財産没収の命が下されようとしたその時。 救いの手を差し伸べたのは神官長──エルゲンだった。 セレーネは、エルゲンと婚姻を結んだ当初「穏やかで誰にでも微笑むつまらない人」だという印象をもっていたけれど、共に生活する内に徐々に彼の人柄に惹かれていく。 だけれど彼には想い人が出来てしまったようで──…。 「今度はわたくしが恩を返すべきなんですわ!」 今まで自分のことばかりだったセレーネは、初めて人のために何かしたいと思い立ち、大好きな旦那様のために奮闘するのだが──…。

処理中です...