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第12章 追いかけっこ
宮田
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あいつは一体どこに行ったのか。俺の昔の知り合いに会いに行っているとしたら、次は誰だ?
まさか実家に来てはいないよなと思いながらも、一度母ちゃんのところに顔を出そうと思った。そういえば実家で腐っていた後のことを母ちゃんには何も説明してなかった。
実家に一度寄ったら、案の定透馬が来たと母ちゃんは言う。
「何しに? あいつはなんて?」
「何やってんだい。戻ってきたと思ったらまた出てって」
「そんなことはいいから。あいつ何言ってた?」
「宮田君の家聞かれたよ」
「宮田?」
一体何でそんな奴が出てくるのかわからない。前に家出した時一度泊めてもらっただけで、特に親しいわけでもないのに。透馬は何がしたいのかと思った。
「それよりも説明することがあるんじゃないかい?」
「説明?」
「藤越君と付き合ってるって」
あいつは母ちゃんにまで余計なことを。
「付き合ってるっていうか、あいつがただ好きって言ってくれただけで」
付き合うも何もずっと一緒に住んでいたのだから、今までと何が変わるというのか。
そう思ったけど、やっぱり違うのかもしれない。愛良ちゃんも出て行ったし、結局同じではいられない。
俺は何もわかってなかったことに気付く。だからあいつは出て行ったのか。
「この前帰ってきた時は死にそうな顔してたくせに。全く」
そういえばそうだった。母ちゃんにはちゃんと報告するべきだったと思う。
「ごめんって。色々ばたばたしてたんだよ」
「あんたが元気ならいいけど」
これ以上母ちゃんに心配かけるのはよくない。俺はちゃんと大丈夫だと説明してから宮田の家に向かった。
宮田は普通に実家にいて、すぐに出て来た。少し前にあいつが来たせいかもしれない。
「透馬ちゃんの言う通りだな」
「透馬ちゃん?」
偉く懐かしい呼び方だなと思った。
「透馬ちゃんを捜しに来たのか? 見りゃわかんだろ。もういねえって」
「それもそうだけど、何話したんだよ」
「さあ」
さあって何だ? これ以上話してもなんとなく埒が明かない気がする。
「そんなに必死こいて捜さないといけないわけ? 帰ってくるかもしれないじゃん」
「あいつが帰って来ないとか、信じてないわけじゃないけど」
ただ、なんとなく嫌な感じがして。
「そうだ。伝言があった」
伝言?
「心配しないで、待っててだと」
またそれだ。そんなこと言われても、俺はおとなしく待ってることなどできやしないんだ。
「別に心配とか、それだけじゃねえよ。俺がただ会いたいだけなんだよ」
そう。ただ隣に透馬がいないとどうしようもなく寂しい。
何でわざわざ一人で行く必要があった? 俺がいたら邪魔なのか。
ふざけるなと思う。いくら邪魔って言われたって、無理矢理追いかけて、必ず捕まえる。
「ねえ、俺に透馬ちゃんちょうだい?」
「は?」
急に宮田が言い出したことに思考回路を奪われる。
「なんかいいじゃん」
俺はその時すごい顔をしていたのかもしれない。ふざけるなというような。
「やっぱそんなに大事なんだ」
急に宮田はにやにやし出す。担がれたのかもしれないが、俺にとってはそういう問題じゃない。
「あいつはものなんかじゃない。くれって言われてすぐ渡すようなものじゃないんだよ」
「冗談だろ。怖い顔すんなよ」
「あいつがお前の方がいいって言うなら、俺に何もできやしないけど」
「は? そんなことあるわけないだろ。お前馬鹿」
別にあいつの気持ちを疑っているわけじゃない。ただ、出て行ったのは俺のせいな気がしてしょうがないからだ。
「お前にはわからねえよ」
これ以上宮田に構っている場合じゃないと思った。他にあいつの行きそうな場所はどこだ?
こうなったら心当たりのあるところ全部行ってやる。
「何そんなに思いつめてんだよ」
思いつめてるわけじゃない。ただこれが俺の正常なんだ。
「もう一個伝言があったけど」
「は?」
宮田の口が近付いてくる。一体何をする気だとたじろぐ。
「できるか」
と言って宮田はやめた。びっくりした。それを見て俺は嫌な予感がした。
「まさかあいつ」
宮田は何故か赤くなって、「透馬ちゃんっておかしくないか?」と聞いてくる。
誰彼構わずキスとかするなよと思った。
それで急に透馬ちゃんちょうだいとか言い出したんだろうか。まさか本当に惚れたわけじゃないよなと思う。
「もう。さっさとどっか行け」
何故か急に宮田はきれだす。わけわからない。
「俺のものだなんて言えないけど、絶対に渡さない」
宮田は呆れた顔をしていた。きっと宮田はそんなつもりなかったんだろうけど、俺はそう言って宮田の家を後にした。
まさか実家に来てはいないよなと思いながらも、一度母ちゃんのところに顔を出そうと思った。そういえば実家で腐っていた後のことを母ちゃんには何も説明してなかった。
実家に一度寄ったら、案の定透馬が来たと母ちゃんは言う。
「何しに? あいつはなんて?」
「何やってんだい。戻ってきたと思ったらまた出てって」
「そんなことはいいから。あいつ何言ってた?」
「宮田君の家聞かれたよ」
「宮田?」
一体何でそんな奴が出てくるのかわからない。前に家出した時一度泊めてもらっただけで、特に親しいわけでもないのに。透馬は何がしたいのかと思った。
「それよりも説明することがあるんじゃないかい?」
「説明?」
「藤越君と付き合ってるって」
あいつは母ちゃんにまで余計なことを。
「付き合ってるっていうか、あいつがただ好きって言ってくれただけで」
付き合うも何もずっと一緒に住んでいたのだから、今までと何が変わるというのか。
そう思ったけど、やっぱり違うのかもしれない。愛良ちゃんも出て行ったし、結局同じではいられない。
俺は何もわかってなかったことに気付く。だからあいつは出て行ったのか。
「この前帰ってきた時は死にそうな顔してたくせに。全く」
そういえばそうだった。母ちゃんにはちゃんと報告するべきだったと思う。
「ごめんって。色々ばたばたしてたんだよ」
「あんたが元気ならいいけど」
これ以上母ちゃんに心配かけるのはよくない。俺はちゃんと大丈夫だと説明してから宮田の家に向かった。
宮田は普通に実家にいて、すぐに出て来た。少し前にあいつが来たせいかもしれない。
「透馬ちゃんの言う通りだな」
「透馬ちゃん?」
偉く懐かしい呼び方だなと思った。
「透馬ちゃんを捜しに来たのか? 見りゃわかんだろ。もういねえって」
「それもそうだけど、何話したんだよ」
「さあ」
さあって何だ? これ以上話してもなんとなく埒が明かない気がする。
「そんなに必死こいて捜さないといけないわけ? 帰ってくるかもしれないじゃん」
「あいつが帰って来ないとか、信じてないわけじゃないけど」
ただ、なんとなく嫌な感じがして。
「そうだ。伝言があった」
伝言?
「心配しないで、待っててだと」
またそれだ。そんなこと言われても、俺はおとなしく待ってることなどできやしないんだ。
「別に心配とか、それだけじゃねえよ。俺がただ会いたいだけなんだよ」
そう。ただ隣に透馬がいないとどうしようもなく寂しい。
何でわざわざ一人で行く必要があった? 俺がいたら邪魔なのか。
ふざけるなと思う。いくら邪魔って言われたって、無理矢理追いかけて、必ず捕まえる。
「ねえ、俺に透馬ちゃんちょうだい?」
「は?」
急に宮田が言い出したことに思考回路を奪われる。
「なんかいいじゃん」
俺はその時すごい顔をしていたのかもしれない。ふざけるなというような。
「やっぱそんなに大事なんだ」
急に宮田はにやにやし出す。担がれたのかもしれないが、俺にとってはそういう問題じゃない。
「あいつはものなんかじゃない。くれって言われてすぐ渡すようなものじゃないんだよ」
「冗談だろ。怖い顔すんなよ」
「あいつがお前の方がいいって言うなら、俺に何もできやしないけど」
「は? そんなことあるわけないだろ。お前馬鹿」
別にあいつの気持ちを疑っているわけじゃない。ただ、出て行ったのは俺のせいな気がしてしょうがないからだ。
「お前にはわからねえよ」
これ以上宮田に構っている場合じゃないと思った。他にあいつの行きそうな場所はどこだ?
こうなったら心当たりのあるところ全部行ってやる。
「何そんなに思いつめてんだよ」
思いつめてるわけじゃない。ただこれが俺の正常なんだ。
「もう一個伝言があったけど」
「は?」
宮田の口が近付いてくる。一体何をする気だとたじろぐ。
「できるか」
と言って宮田はやめた。びっくりした。それを見て俺は嫌な予感がした。
「まさかあいつ」
宮田は何故か赤くなって、「透馬ちゃんっておかしくないか?」と聞いてくる。
誰彼構わずキスとかするなよと思った。
それで急に透馬ちゃんちょうだいとか言い出したんだろうか。まさか本当に惚れたわけじゃないよなと思う。
「もう。さっさとどっか行け」
何故か急に宮田はきれだす。わけわからない。
「俺のものだなんて言えないけど、絶対に渡さない」
宮田は呆れた顔をしていた。きっと宮田はそんなつもりなかったんだろうけど、俺はそう言って宮田の家を後にした。
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