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3.波乱の二人
終章 これからも、こちらこそ
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夏が終わろうとしている。
あの合同祭から1カ月くらいが経過した。
来場者投票は最後まで接戦で、どちらが勝ってもおかしくなかった、
最終的に数票差で私たちの学校はこうしてこの場所に残っている。
どうやら周防さんと対峙した舞台上で、蒼司が派手に立ち回ったのが観客にウケたらしい。……そこまで計算していたなら、本当に恐ろしい男だ。
こちらとしては大変な目にあった、と素直に喜び辛いけど。
結果が良ければ……まあ、許そう。
入学希望者も徐々に増えつつある。
周防さんはあれから姿を見ていない。
閉会式が終わった直後に姿を消していた。
私のところにも、蒼司のところにも音沙汰なし。
生きてはいる……と思う。
越前さんもいつの間にか学校から姿を消していた、私は彼女が周防のスパイだったということをあとから知った。
きっと、彼女は飛鳥学園に戻ったのだろう。
越前さんからは一回だけ、LIMEメッセージが送られてきた。
『あんたの旦那、相当変わりものね』
本性を隠す気は全くなさそう。余計なお世話だと思う。
いつも通りの平和な学校。平和な生活。それが戻ってきた。
私の役目はそろそろ終わり。
9月1日。2学期のスタート。
新生徒会長発表のための全校集会が開かれる。
「……和泉さん、大丈夫?」
ステージの袖で私は隣に立つ和泉さんに声をかけた。
生徒投票によって選ばれたのは新生徒会長は和泉さんだった。
「当たり前でしょう。私を誰だと思っているんですか?」
相変わらず自信満々。安心した。
「大丈夫ですよ、リーダー。和泉さんは図太……いえ、頼もしいですから」
「ちょっと神戸?」
また一触即発の雰囲気。私は慌てて間に入った。
「ほらほら、二人とも。これからは一緒に仕事するんだからさ」
神戸くんはレジスタンスの新リーダーになった。
「……まあ、リーダーが言うなら」
私が二人に頼んだのはひとつ。
生徒会とレジスタンス。因縁はあるけれど、力を合わせればなんでもできる。
私と蒼司がそうだったように。
……良い学校にしてほしい。
「おーい、時間っすよー」
機材を操作していた大隅くんが私達に向けて声をかける。
それに手を振ってこたえ、私はステージの上へとのぼった。
新生徒会長の紹介は滞りなく終わり、生徒達は講堂から出ていく。
その流れに逆らって、ステージの方へ歩いてくる人影があった。
生徒達の視線を一身に受けながら迷いない足取りで進む影。
「……何やってんだ、蒼司」
私の口から洩れたのはその言葉。
目立ってる。超目立ってるよ。
「お疲れ様」
「何やってんの」
顔を合わせ、挨拶もせずそう言うと蒼司が複雑そうな表情をした。
「君の任期終了をねぎらいに来ただけだが」
「そりゃどうも。後半は仕事量2倍だったけどね……主にあんたのせいで」
「……それは、すまなかった」
この不思議なやり取りを講堂から出かけた生徒達が足を止めて見守っている。
このままではマズイ。流れが滞っている。
それに。
「……ちょっと。注目集めてるよ。見られてますよ! バレたら……」
「今更だろう。合同祭ではもっと派手にやってしまったから」
「……」
それは確かに。
押し黙った私を見て、彼はくすりと笑った。
少し意地悪な微笑みだ。
よく分からないけど、面白がられている。
「それに、俺は生徒会長じゃないし、君はもうレジスタンスではない。……いいだろう?」
蒼司が私に向かって腕を広げた。
その動作と言葉の意味が繋がり、私の顔は自然と赤くなった。
「……あんたそんなキャラでしたっけ」
「違う。君がそうさせたんだ」
「うわ、濡れ衣だ。……私も、自分がこんなに変わるなんて思ってなかったよ」
できるだけ、平静に。鳴る心臓の音が聞こえないように。
私は彼の前に歩み寄る。
「蒼司が嫌じゃなければ」
「……喜んで。朱莉」
彼の腕の中に飛び込む。その身体をしっかりと抱きしめる力強さ。
……私、今、幸せだ。
心の中が温かくなる。
そんな気持ちを抱き、私は彼と唇を重ねた。
1年以上一緒に過ごしてきた恋人との、初めてのキスだった。
私――大和朱莉と吉野蒼司の関係性をひとことで表すなら「最悪」だった。
私はこれからも彼とわかりあうことはないだろうし、仲良くなることも無いんだろうなって思ってた。
信じられる?
今では。蒼司でないと駄目なんだ。
そう思ってる自分が居るんだから。
始まりは偽物でも、かけがえのないパートナー。
これからもよろしく。
そう伝えたら、クールな彼は少し顔を赤くしながら応えた。
「こちらこそ……よろしく」
終
あの合同祭から1カ月くらいが経過した。
来場者投票は最後まで接戦で、どちらが勝ってもおかしくなかった、
最終的に数票差で私たちの学校はこうしてこの場所に残っている。
どうやら周防さんと対峙した舞台上で、蒼司が派手に立ち回ったのが観客にウケたらしい。……そこまで計算していたなら、本当に恐ろしい男だ。
こちらとしては大変な目にあった、と素直に喜び辛いけど。
結果が良ければ……まあ、許そう。
入学希望者も徐々に増えつつある。
周防さんはあれから姿を見ていない。
閉会式が終わった直後に姿を消していた。
私のところにも、蒼司のところにも音沙汰なし。
生きてはいる……と思う。
越前さんもいつの間にか学校から姿を消していた、私は彼女が周防のスパイだったということをあとから知った。
きっと、彼女は飛鳥学園に戻ったのだろう。
越前さんからは一回だけ、LIMEメッセージが送られてきた。
『あんたの旦那、相当変わりものね』
本性を隠す気は全くなさそう。余計なお世話だと思う。
いつも通りの平和な学校。平和な生活。それが戻ってきた。
私の役目はそろそろ終わり。
9月1日。2学期のスタート。
新生徒会長発表のための全校集会が開かれる。
「……和泉さん、大丈夫?」
ステージの袖で私は隣に立つ和泉さんに声をかけた。
生徒投票によって選ばれたのは新生徒会長は和泉さんだった。
「当たり前でしょう。私を誰だと思っているんですか?」
相変わらず自信満々。安心した。
「大丈夫ですよ、リーダー。和泉さんは図太……いえ、頼もしいですから」
「ちょっと神戸?」
また一触即発の雰囲気。私は慌てて間に入った。
「ほらほら、二人とも。これからは一緒に仕事するんだからさ」
神戸くんはレジスタンスの新リーダーになった。
「……まあ、リーダーが言うなら」
私が二人に頼んだのはひとつ。
生徒会とレジスタンス。因縁はあるけれど、力を合わせればなんでもできる。
私と蒼司がそうだったように。
……良い学校にしてほしい。
「おーい、時間っすよー」
機材を操作していた大隅くんが私達に向けて声をかける。
それに手を振ってこたえ、私はステージの上へとのぼった。
新生徒会長の紹介は滞りなく終わり、生徒達は講堂から出ていく。
その流れに逆らって、ステージの方へ歩いてくる人影があった。
生徒達の視線を一身に受けながら迷いない足取りで進む影。
「……何やってんだ、蒼司」
私の口から洩れたのはその言葉。
目立ってる。超目立ってるよ。
「お疲れ様」
「何やってんの」
顔を合わせ、挨拶もせずそう言うと蒼司が複雑そうな表情をした。
「君の任期終了をねぎらいに来ただけだが」
「そりゃどうも。後半は仕事量2倍だったけどね……主にあんたのせいで」
「……それは、すまなかった」
この不思議なやり取りを講堂から出かけた生徒達が足を止めて見守っている。
このままではマズイ。流れが滞っている。
それに。
「……ちょっと。注目集めてるよ。見られてますよ! バレたら……」
「今更だろう。合同祭ではもっと派手にやってしまったから」
「……」
それは確かに。
押し黙った私を見て、彼はくすりと笑った。
少し意地悪な微笑みだ。
よく分からないけど、面白がられている。
「それに、俺は生徒会長じゃないし、君はもうレジスタンスではない。……いいだろう?」
蒼司が私に向かって腕を広げた。
その動作と言葉の意味が繋がり、私の顔は自然と赤くなった。
「……あんたそんなキャラでしたっけ」
「違う。君がそうさせたんだ」
「うわ、濡れ衣だ。……私も、自分がこんなに変わるなんて思ってなかったよ」
できるだけ、平静に。鳴る心臓の音が聞こえないように。
私は彼の前に歩み寄る。
「蒼司が嫌じゃなければ」
「……喜んで。朱莉」
彼の腕の中に飛び込む。その身体をしっかりと抱きしめる力強さ。
……私、今、幸せだ。
心の中が温かくなる。
そんな気持ちを抱き、私は彼と唇を重ねた。
1年以上一緒に過ごしてきた恋人との、初めてのキスだった。
私――大和朱莉と吉野蒼司の関係性をひとことで表すなら「最悪」だった。
私はこれからも彼とわかりあうことはないだろうし、仲良くなることも無いんだろうなって思ってた。
信じられる?
今では。蒼司でないと駄目なんだ。
そう思ってる自分が居るんだから。
始まりは偽物でも、かけがえのないパートナー。
これからもよろしく。
そう伝えたら、クールな彼は少し顔を赤くしながら応えた。
「こちらこそ……よろしく」
終
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