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小学校編
結婚六カ年計画 30-6 from 2016.07
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2016年7月7日 水曜日。 10時03分。
「あ、あぁぁぁ……」
倒れた金髪の男のうめき声。
こんなに弱いのかと思いながらも骨が2・3本折れただけだろうと自分に言い聞かせる。
「正当防衛、ですよね?」
一瞬何があったのかと驚いている5人を前に僕は腕を鳴らす。
見た所全員、体格は良いし現場仕事で体格も大きいが、喧嘩の経験はあっても武道は経験無さそうである。
「社長を、お呼び下さい」
僕はもう一度彼等に伝えた。
「やりやがったな!」
もう一人の坊主頭の若い男が拳を大きく振り被ってくる。
が、モーションが大きすぎる為その拳を放つ前に顎を撃ち抜き、彼はその場で崩れる様に倒れた。
「まだ、呼ぶつもりはありませんか?」
「お前、なんなんだ?!」
僕と同じ位の年齢の、不精髭で白髪交じりの短髪の男が先程まで座っていたパイプ椅子を取り出し、両手で掲げ僕に振り下ろしてくる。
当然隙だらけの万歳状態の男の顎を拳で打ち、またも男は意識を失い椅子を握りながら派手に倒れた。
只事じゃないと思ったのか、残った中年男性3人が互いに顔を見つめる。
「今すぐ、子供を返すんだ」
僕は怒りを抑えながら初めて本当の要件を3人に伝えた。
「子供? ああ、さっきの――」
「馬鹿、言うなッ!」
1人が話そうとするともう一人が殴りかかる。
あの子は確実に此処に居る事が分かった。
それを隠そうとするこいつ等に反吐が出る。
「さっさと社長を出せ。あんた達じゃ話にならない」
もう営業モードを辞め、素で話す事にした。
「なめやがって! おい、全員でやるぞ!」
3人の内ひとりがカウンターの下から木刀の様なものを取り出す。
もう一人はバラフライナイフを取り出す。この状況なら怪我じゃ済まないだろうな。
僕はずっと離さず持っていたビジネスバッグを右手に持ち替えた。
でも、武器に対する戦い方の対策を僕は知っていた。
ぶっ殺してやる! と一人吠えながらナイフを前に構え突いてくる。
ナイフは振りかざしてくる場合も突き出してくる場合も肘を思い切り蹴る。
思わず男は痛みにナイフを落とす。顔ががら空きなので思い切り顎を下からアッパーで撃ち抜いた。
そのまま木刀の男に向かう。
当然男は木刀を振り回そうと上段に上げ、振り下ろそうとする。僕は構わず踏み込んだ。
結果、木刀が振り下ろされる前に男の懐に潜り、腹部に思い切り正拳を放つ。
その男は悶絶しその場で屈んだので、首に手を廻して締め落した。
残りは、素手のあとひとり。
かと思いきや気付いたらその男は二階への階段へ向け懸命に逃げ出していた。
*******
「おぉ、いらっしゃい梨杏ちゃん。よく来てくれたねぇ~っ」
小太りで白髪交じりの男性。この人が金城と言う男だ。
院長先生を脅迫し私達を離した酷い人。
隣にいつもの大柄の人も一緒に居る。
「美味しいお菓子も人形もテレビゲームもなんだってあるよ。ゆっくり寛いでね」
にっこりと脂ぎった笑顔を浮かべる金城さん。
生理的な嫌悪感が芽生える。
「どうして……どうして、私を連れて来たのですか? 孤児院に帰りたいです」
無駄だと分かっていても私は懸命に訴える。
金城さんはすこし困惑した表情を浮かべた。
「ごめんね? 友達やあのセクシーな先生が居なくて寂しいんだねぇ。
でもこれからは私が梨杏ちゃんの保護者になってあげるから何の心配も要らないよ」
嫌だっ。
私は院長先生と一緒に居るんだ。
それにあの人……二度と会えないと思っていた左右さんとまた会えたのに。
おばあちゃんが言っていた「幸せ」が何かを分かりかけて来たのに。
私は俯く。
すると院長先生よりもずっと年齢が上で変な匂いがする目の前の男に、後ろから抱き着かれる。
気持ち悪い、鳥肌が立つ。冷や汗が出る。
そして彼は、それ以上に身の毛をよだつまるで呪いの様な言葉を吐いた。
「今はまだ早いけど、もう少ししたら君は僕のお嫁さんだ。
沢山家族を増やそうねっ」
あまりの悍ましさに寒気がする。震えが止まらなくなる。
心を落ち着かせる為に涙を……でもこんな人の前で泣きたくない。
お願い、誰か助けて――。
――助けに来たよ、梨杏ちゃん!
悪臭漂う大嫌いな男に触れられて冷え切った体。
不意に聞こえた暖かい言葉により、その震えは止まった。
「あ、あぁぁぁ……」
倒れた金髪の男のうめき声。
こんなに弱いのかと思いながらも骨が2・3本折れただけだろうと自分に言い聞かせる。
「正当防衛、ですよね?」
一瞬何があったのかと驚いている5人を前に僕は腕を鳴らす。
見た所全員、体格は良いし現場仕事で体格も大きいが、喧嘩の経験はあっても武道は経験無さそうである。
「社長を、お呼び下さい」
僕はもう一度彼等に伝えた。
「やりやがったな!」
もう一人の坊主頭の若い男が拳を大きく振り被ってくる。
が、モーションが大きすぎる為その拳を放つ前に顎を撃ち抜き、彼はその場で崩れる様に倒れた。
「まだ、呼ぶつもりはありませんか?」
「お前、なんなんだ?!」
僕と同じ位の年齢の、不精髭で白髪交じりの短髪の男が先程まで座っていたパイプ椅子を取り出し、両手で掲げ僕に振り下ろしてくる。
当然隙だらけの万歳状態の男の顎を拳で打ち、またも男は意識を失い椅子を握りながら派手に倒れた。
只事じゃないと思ったのか、残った中年男性3人が互いに顔を見つめる。
「今すぐ、子供を返すんだ」
僕は怒りを抑えながら初めて本当の要件を3人に伝えた。
「子供? ああ、さっきの――」
「馬鹿、言うなッ!」
1人が話そうとするともう一人が殴りかかる。
あの子は確実に此処に居る事が分かった。
それを隠そうとするこいつ等に反吐が出る。
「さっさと社長を出せ。あんた達じゃ話にならない」
もう営業モードを辞め、素で話す事にした。
「なめやがって! おい、全員でやるぞ!」
3人の内ひとりがカウンターの下から木刀の様なものを取り出す。
もう一人はバラフライナイフを取り出す。この状況なら怪我じゃ済まないだろうな。
僕はずっと離さず持っていたビジネスバッグを右手に持ち替えた。
でも、武器に対する戦い方の対策を僕は知っていた。
ぶっ殺してやる! と一人吠えながらナイフを前に構え突いてくる。
ナイフは振りかざしてくる場合も突き出してくる場合も肘を思い切り蹴る。
思わず男は痛みにナイフを落とす。顔ががら空きなので思い切り顎を下からアッパーで撃ち抜いた。
そのまま木刀の男に向かう。
当然男は木刀を振り回そうと上段に上げ、振り下ろそうとする。僕は構わず踏み込んだ。
結果、木刀が振り下ろされる前に男の懐に潜り、腹部に思い切り正拳を放つ。
その男は悶絶しその場で屈んだので、首に手を廻して締め落した。
残りは、素手のあとひとり。
かと思いきや気付いたらその男は二階への階段へ向け懸命に逃げ出していた。
*******
「おぉ、いらっしゃい梨杏ちゃん。よく来てくれたねぇ~っ」
小太りで白髪交じりの男性。この人が金城と言う男だ。
院長先生を脅迫し私達を離した酷い人。
隣にいつもの大柄の人も一緒に居る。
「美味しいお菓子も人形もテレビゲームもなんだってあるよ。ゆっくり寛いでね」
にっこりと脂ぎった笑顔を浮かべる金城さん。
生理的な嫌悪感が芽生える。
「どうして……どうして、私を連れて来たのですか? 孤児院に帰りたいです」
無駄だと分かっていても私は懸命に訴える。
金城さんはすこし困惑した表情を浮かべた。
「ごめんね? 友達やあのセクシーな先生が居なくて寂しいんだねぇ。
でもこれからは私が梨杏ちゃんの保護者になってあげるから何の心配も要らないよ」
嫌だっ。
私は院長先生と一緒に居るんだ。
それにあの人……二度と会えないと思っていた左右さんとまた会えたのに。
おばあちゃんが言っていた「幸せ」が何かを分かりかけて来たのに。
私は俯く。
すると院長先生よりもずっと年齢が上で変な匂いがする目の前の男に、後ろから抱き着かれる。
気持ち悪い、鳥肌が立つ。冷や汗が出る。
そして彼は、それ以上に身の毛をよだつまるで呪いの様な言葉を吐いた。
「今はまだ早いけど、もう少ししたら君は僕のお嫁さんだ。
沢山家族を増やそうねっ」
あまりの悍ましさに寒気がする。震えが止まらなくなる。
心を落ち着かせる為に涙を……でもこんな人の前で泣きたくない。
お願い、誰か助けて――。
――助けに来たよ、梨杏ちゃん!
悪臭漂う大嫌いな男に触れられて冷え切った体。
不意に聞こえた暖かい言葉により、その震えは止まった。
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