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小学校編
結婚六カ年計画 30 from 2016.07
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2016年7月4日 月曜日。 10時15分。
「成程、だいぶ大切に使われている机や椅子ですね」
「はい。この建物を買い取った際一緒に頂戴した事務用品ですので……」
僕よりも年上とは思えない程若くて美しいリース院長先生。
外国人って皆年齢よりも若い容姿なのかなと思いながらも、このパトス孤児院で使われている事務用品を確認した。
この孤児院は凡そ80年前に建てられた地主の屋敷であり、先生が買い取り孤児院として利用しているらしい。
当時の木材の家具や事務用品は既にがたが来ており(いや、十分持った方だと思うが)大幅な入れ替えを行いたいらしくて当社わたぬき商事に依頼が届いたのだ。
******
美田園市の西部にある斯波地区。
地方政令都市であり、陸宮地方一の都市の中にあるにはとても田舎……いや、静かな場所で故郷の井筒を思い出す。
土地と家が大きいコトが取り柄で最近はバスすら走らなくなったド田舎。
次男の僕は大学進学を機会に田舎を出て程よい都会具合の美田園市に単身引っ越したのだった。
結婚もせず、淡々と仕事に打ち込んでいたら最年少記録の課長職と引き換えに早11年が経過していた。
******
「では、3日後の7日に見積もりを持参します」
「承知しました。宜しくお願いします」
院長先生は軽く頭をぺこりと下げ、此方も対応する。
それにしても先程から、打ち合わせ室の外から子供達の賑やかな声が聞こえ、また故郷を思い出す。
僕もよく友達と田園風景の中走り回っていた。
「元気な子供達の声が聞こえてきますね」
「ふふっ、そうでしょう? 宜しければご覧になられますか?」
今日の予定はこの打ち合わせだけなので時間に余裕がある。
気分転換に良いかも知れない。
「はい、お願いします」
先生に案内され、共に庭へ出た。
庭を囲む背の高い針葉樹林は夏の日差しを軽減し、その下で子供達は元気に小さな庭を駆け回っている。
少し服装は変わったが、田園風景を除けば僕が子供の頃に経験した景色と一緒である。懐かしい。時折混ざりたくなる衝動に駆られるが、今はもう大人になり過ぎた。
子供達が各々遊んでいる中で一人、木漏れ日が射す木製の古いベンチに座り、麦わら帽子を被りながらこれまた年季の入ってそうな分厚い本を太腿の上で開き、俯いている子が居た。
熱中症じゃないよな、と思い念の為僕はその子に声をかける。日焼け止めを塗ってるのか、その子……多分少女が着ているワンピースよりも白く、人形の様にきめ細やかな肌だ。
「君、大丈夫?」
麦わらの少女が気付き、見上げる。
熱中症ではなさそうなので一安心し表情を見ると、信じられない程顔が整った女の子で驚いた。
薄く青い大きな瞳と、初めて見るアッシュ系の色の長い髪のお下げを手前に結っている。外国人ぽい顔立ちでハーフかな?
幼い子に対する偏った趣味を僕は持ち合わせていないが、大きくなったら間違いなく美人に育つだろうなとつい思ってしまった。
でも、それだけだ。
だけど何故か、少女は僕の顔を見るととても驚いた様な表情を浮かべ、固まってしまった。
「成程、だいぶ大切に使われている机や椅子ですね」
「はい。この建物を買い取った際一緒に頂戴した事務用品ですので……」
僕よりも年上とは思えない程若くて美しいリース院長先生。
外国人って皆年齢よりも若い容姿なのかなと思いながらも、このパトス孤児院で使われている事務用品を確認した。
この孤児院は凡そ80年前に建てられた地主の屋敷であり、先生が買い取り孤児院として利用しているらしい。
当時の木材の家具や事務用品は既にがたが来ており(いや、十分持った方だと思うが)大幅な入れ替えを行いたいらしくて当社わたぬき商事に依頼が届いたのだ。
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美田園市の西部にある斯波地区。
地方政令都市であり、陸宮地方一の都市の中にあるにはとても田舎……いや、静かな場所で故郷の井筒を思い出す。
土地と家が大きいコトが取り柄で最近はバスすら走らなくなったド田舎。
次男の僕は大学進学を機会に田舎を出て程よい都会具合の美田園市に単身引っ越したのだった。
結婚もせず、淡々と仕事に打ち込んでいたら最年少記録の課長職と引き換えに早11年が経過していた。
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「では、3日後の7日に見積もりを持参します」
「承知しました。宜しくお願いします」
院長先生は軽く頭をぺこりと下げ、此方も対応する。
それにしても先程から、打ち合わせ室の外から子供達の賑やかな声が聞こえ、また故郷を思い出す。
僕もよく友達と田園風景の中走り回っていた。
「元気な子供達の声が聞こえてきますね」
「ふふっ、そうでしょう? 宜しければご覧になられますか?」
今日の予定はこの打ち合わせだけなので時間に余裕がある。
気分転換に良いかも知れない。
「はい、お願いします」
先生に案内され、共に庭へ出た。
庭を囲む背の高い針葉樹林は夏の日差しを軽減し、その下で子供達は元気に小さな庭を駆け回っている。
少し服装は変わったが、田園風景を除けば僕が子供の頃に経験した景色と一緒である。懐かしい。時折混ざりたくなる衝動に駆られるが、今はもう大人になり過ぎた。
子供達が各々遊んでいる中で一人、木漏れ日が射す木製の古いベンチに座り、麦わら帽子を被りながらこれまた年季の入ってそうな分厚い本を太腿の上で開き、俯いている子が居た。
熱中症じゃないよな、と思い念の為僕はその子に声をかける。日焼け止めを塗ってるのか、その子……多分少女が着ているワンピースよりも白く、人形の様にきめ細やかな肌だ。
「君、大丈夫?」
麦わらの少女が気付き、見上げる。
熱中症ではなさそうなので一安心し表情を見ると、信じられない程顔が整った女の子で驚いた。
薄く青い大きな瞳と、初めて見るアッシュ系の色の長い髪のお下げを手前に結っている。外国人ぽい顔立ちでハーフかな?
幼い子に対する偏った趣味を僕は持ち合わせていないが、大きくなったら間違いなく美人に育つだろうなとつい思ってしまった。
でも、それだけだ。
だけど何故か、少女は僕の顔を見るととても驚いた様な表情を浮かべ、固まってしまった。
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