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小学校編
結婚六カ年計画 28
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2017年10月13日 金曜日。 15時00分。
明日は運動会。
今日は総練習が行われ、校庭には既にテントが建てられている。
そして今は放課後。
5年2組のクラスの皆は皆燃えており、本番に備えて下校時間まで練習で残るコトにした。
相田先生も心配らしくジャージに着替えて見守っている。
因みに校庭は既に白線が引かれている為に使用出来ない。
私は校庭を一周走る徒競走とリレーに出る。これでもクラスで一番足が速く、孤児院時代から負けたコトが無い。
勿論どちらもトップを狙っているし、左右さんの目の前で一着になりたいので速く走れる走法も調べて練習した。
可能ならばただ勝つのではなく、ブッチギリの一等賞を目指している。
残念ながらクラウチングスタートは駄目らしいので今はスタンディングスタートの構えを練習中だ。
後ろから「先生、梨杏ちゃんのやる気が凄いです」と聞こえてくる。
「梨杏、競争するー?」
男子の徒競走に出場する悠翔君が声を掛けてきた。
「なにいってるの! 梨杏ちゃんが悠翔君に勝てる訳無いでしょう!」
迷っていると夕花ちゃんが参加して悠翔君と言い合いになり私が間に入った。
でも、練習の成果を試してみたい。
「良いよ。あの砂場まで競争しようか?」
悠翔君なら良い練習相手になるだろう。男子だし多分勝てないとは思うけど、自分の足の速さを確認するには最適だ。
この位置から砂場は70m程か。
「よーし、夕花合図してくれー!」
「もぉ、分かったよー」
夕花ちゃんが足で土に線を引き、私は悠翔君に並んで、彼より前傾姿勢に構えた。
成程、前に体重が乗りスタート時の推進力が上がりそうだ。
いつの間にか周りで練習していたクラスメイト達の注目の的になっており、相田先生も観ていた。
「よーい……ドン!」
夕花ちゃんの声と同時に、坂道を駆け抜ける様に走り出す。スタートダッシュは私が有利で先に抜けた。
丁度砂場まで半分の地点でも前に悠翔君が居ない。横を向いて確認できる状況ではないけど私の方が先行している様だ。
(このままいけるかな?)
が、砂場まで後もう少しと言う所で視界の片隅に悠翔君の手が見える。
そしてゴールの砂場に入る直前、悠翔君が力強く腕を振りながら先行し砂場を駆け抜けた。
初めて、負けてしまった。
「はあ、はぁ……梨杏めっちゃ速かったな! 負けると思ったよ!」
私はそのまま砂場にへたり込む。
そうだ。ゴールのタイミングに殆ど差は無くあと少しだった。
「うぅ……」
それだけに悔しい。感情が昂ると頬から涙がこぼれ始めた。
「え、ええっ?! な、泣いてるのか?」
「うっ、うっ、うわぁぁぁぁ……」
涙を流すと感情を落ち着かせるとおばあちゃんが言っていた。
でも一方で女の涙は同量のサソリの毒よりも高価であり、滅多に見せるものではないとも教わっている。
屈辱である。
左右さん以外に泣いている姿を見せたくなかったのにと思うと、涙はとめどなく溢れてくる。
「悠翔君! 泣かせたわね!」
「ええっ?! あ、えっと……」
「梨杏ちゃんを泣かせた、いけないんだ!」
側では夕花ちゃんをはじめ、クラスメイト達が悠翔君を囲み詰め寄っている。
ただ全力で走っただけの悠翔君は当然私を泣かせるつもりが無く、逆に困惑して泣きそうになっていた。
ああ、このままじゃ拙いと思い泣いて少し落ち着いてきた私は立ち上がり、皆に言う。
「わ、私は大丈夫! 悠翔君は悪くないよ。ちょっと悔しくて込み上げちゃっただけだから……」
「梨杏……」
皆が静まる。
一部始終を目撃していた相田先生も何も言わず、にこりと微笑んでいた。でも……。
「うるさいっ、どんな理由でも梨杏ちゃんを泣かせたコトがダメなのよ!」
「ばーか! 悠翔のばーか!」
再び皆が騒ぎ出す。私は大丈夫だよ言うのだが、それでも皆悠翔君に怒っている。
「うぅ……、うあぁぁぁ……」
ついに悠翔君が泣き出してしまい、慌てて先生がストップをかけた。
「や、やりすぎだよー! 私さっきから大丈夫だって言ってるのに!」
困惑しながら私が皆に言うと、夕花ちゃんが微笑む。
「だって、梨杏ちゃんは私達のアイドルだから護らないとねっ」
「ねーっ」
皆の気遣いはとても嬉しい一方、悠翔君が気の毒だとも思った。
☆新規計画達成項目
・2017年10月13日 クラスメイトと仲良くなった。
明日は運動会。
今日は総練習が行われ、校庭には既にテントが建てられている。
そして今は放課後。
5年2組のクラスの皆は皆燃えており、本番に備えて下校時間まで練習で残るコトにした。
相田先生も心配らしくジャージに着替えて見守っている。
因みに校庭は既に白線が引かれている為に使用出来ない。
私は校庭を一周走る徒競走とリレーに出る。これでもクラスで一番足が速く、孤児院時代から負けたコトが無い。
勿論どちらもトップを狙っているし、左右さんの目の前で一着になりたいので速く走れる走法も調べて練習した。
可能ならばただ勝つのではなく、ブッチギリの一等賞を目指している。
残念ながらクラウチングスタートは駄目らしいので今はスタンディングスタートの構えを練習中だ。
後ろから「先生、梨杏ちゃんのやる気が凄いです」と聞こえてくる。
「梨杏、競争するー?」
男子の徒競走に出場する悠翔君が声を掛けてきた。
「なにいってるの! 梨杏ちゃんが悠翔君に勝てる訳無いでしょう!」
迷っていると夕花ちゃんが参加して悠翔君と言い合いになり私が間に入った。
でも、練習の成果を試してみたい。
「良いよ。あの砂場まで競争しようか?」
悠翔君なら良い練習相手になるだろう。男子だし多分勝てないとは思うけど、自分の足の速さを確認するには最適だ。
この位置から砂場は70m程か。
「よーし、夕花合図してくれー!」
「もぉ、分かったよー」
夕花ちゃんが足で土に線を引き、私は悠翔君に並んで、彼より前傾姿勢に構えた。
成程、前に体重が乗りスタート時の推進力が上がりそうだ。
いつの間にか周りで練習していたクラスメイト達の注目の的になっており、相田先生も観ていた。
「よーい……ドン!」
夕花ちゃんの声と同時に、坂道を駆け抜ける様に走り出す。スタートダッシュは私が有利で先に抜けた。
丁度砂場まで半分の地点でも前に悠翔君が居ない。横を向いて確認できる状況ではないけど私の方が先行している様だ。
(このままいけるかな?)
が、砂場まで後もう少しと言う所で視界の片隅に悠翔君の手が見える。
そしてゴールの砂場に入る直前、悠翔君が力強く腕を振りながら先行し砂場を駆け抜けた。
初めて、負けてしまった。
「はあ、はぁ……梨杏めっちゃ速かったな! 負けると思ったよ!」
私はそのまま砂場にへたり込む。
そうだ。ゴールのタイミングに殆ど差は無くあと少しだった。
「うぅ……」
それだけに悔しい。感情が昂ると頬から涙がこぼれ始めた。
「え、ええっ?! な、泣いてるのか?」
「うっ、うっ、うわぁぁぁぁ……」
涙を流すと感情を落ち着かせるとおばあちゃんが言っていた。
でも一方で女の涙は同量のサソリの毒よりも高価であり、滅多に見せるものではないとも教わっている。
屈辱である。
左右さん以外に泣いている姿を見せたくなかったのにと思うと、涙はとめどなく溢れてくる。
「悠翔君! 泣かせたわね!」
「ええっ?! あ、えっと……」
「梨杏ちゃんを泣かせた、いけないんだ!」
側では夕花ちゃんをはじめ、クラスメイト達が悠翔君を囲み詰め寄っている。
ただ全力で走っただけの悠翔君は当然私を泣かせるつもりが無く、逆に困惑して泣きそうになっていた。
ああ、このままじゃ拙いと思い泣いて少し落ち着いてきた私は立ち上がり、皆に言う。
「わ、私は大丈夫! 悠翔君は悪くないよ。ちょっと悔しくて込み上げちゃっただけだから……」
「梨杏……」
皆が静まる。
一部始終を目撃していた相田先生も何も言わず、にこりと微笑んでいた。でも……。
「うるさいっ、どんな理由でも梨杏ちゃんを泣かせたコトがダメなのよ!」
「ばーか! 悠翔のばーか!」
再び皆が騒ぎ出す。私は大丈夫だよ言うのだが、それでも皆悠翔君に怒っている。
「うぅ……、うあぁぁぁ……」
ついに悠翔君が泣き出してしまい、慌てて先生がストップをかけた。
「や、やりすぎだよー! 私さっきから大丈夫だって言ってるのに!」
困惑しながら私が皆に言うと、夕花ちゃんが微笑む。
「だって、梨杏ちゃんは私達のアイドルだから護らないとねっ」
「ねーっ」
皆の気遣いはとても嬉しい一方、悠翔君が気の毒だとも思った。
☆新規計画達成項目
・2017年10月13日 クラスメイトと仲良くなった。
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