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小学校編
結婚六カ年計画 22
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2017年8月6日 日曜日。15時30分。
わんわんと泣き出す私を見て動揺し、手を握る左右さん。
どうしたの?
どうして泣いてるの?
僕が、何かしてしまったの?
違う、違うのだ。
涙を流すのは私が余りにも不甲斐なく、私が余りにも幼いからだ。
一年前のあの時も私は左右さんの前で泣いており、これで彼に涙を見せるのは『三度目』である。
一度感情が爆発すると私は自制する事が出来ない様で、左右さんが懸命に慰めてくれながらも落ち着いたのは空が黄昏に染まり始めた頃だった。
*******
18時40分。
いつの間にか私は左右さんにしがみついたまま少し眠っていた様で、目が覚めたら優しい表情を浮かべ私の頭を撫でた。
「ごめんね、梨杏ちゃん。僕が君を不安にさせたんだね」
「…………。違うんです」
目が赤く腫れて正直顔を見られたくないが、これ以上彼を困らせたくない。
「私が、パパの重荷になってしまっているのではないのかと思ってしまって……」
「そんなコトないよ。重荷どころか色々助けて貰ってるよ。正直、梨杏ちゃんが来るまで家事なんて殆どしてなかったんだ」
「でも、リアンが居る所為でパパが誰かを好きになったり出来ないのかなって――――」
出来て欲しくない。誰にも渡したくない。
そう思うとまた涙がこみ上げてきて、左右さんもそれを悟ったらしく私を抱きしめて背中をさする。
彼の胸元に顔が密着し、心臓がより高鳴った。
左右さんは再び優しい声で私に語り掛ける。
「――誰にも言ったコトが無かったけど、今まで真剣に誰かを好きになったりした事が無かったんだ。
恋愛に興味が無いと言うよりは、然程他人自体に興味が持てなくて」
意外、と聞いて思ったが改めて考えてみると左右さんは人付き合いが上手過ぎるかも知れない。
「自信過剰に聞こえるかも知れないけど、なんとなく女の人から好意を持たれてるのかなって思ったり、
そして実際に告白されて取り敢えず付き合ってみたけど、やっぱり友達以上の特別な感情は持てなかったんだ」
この人は誰にでも優しいので女なら自分が特別扱いされてると勘違いしてしまうだろう。私もそうだ。
「会社でも上手くやってると思う。でも、それは僕が仕事をする上で同僚や上司と仲良くしているし尊敬だってしているけど、それ以上の感情は持てないかな」
やはり左右さんは完璧な類の人である。でも、あれだけ会社の人と仲良くしているのに存外に強い繋がりではないらしい。
「もう一度言うけど僕は基本的に、他人に対しての興味が薄いんだ。でも……」
でも?
「誤解を承知で言うと、一年前に会った時からずっと梨杏ちゃんの事で頭が一杯で……正直、誰かにこんなに夢中になるコトが本当に初めてなんだ。
護りたい。ずっと護っていたいっていつも強く思っていて、本当に何でもしてあげたいって考えてる。
自分でも驚く位、こんなに誰かに尽くしたく思うなんて不思議だよ」
私を護りたい。その言葉に少し照れながらも私は左右さんの胸に顔をうずめて静かに聞いている。
恋ではないのかも知れないけど、やはり愛が伝わってくる。
「だから、僕は本当に恋愛をするつもりが無くて、今は梨杏ちゃんと二人で楽しく暮らしたい。
あの時に僕達は出会って、それからずっと君を幸せにしたいって思ってるから」
恥ずかしくて顔が真っ赤になる。
まるでプロポーズの様な言葉を聞いて既に幸せになっているからだ。
恐る恐る私は、左右さんの胸から顔を離し見上げる。
相変わらず優しい表情。
彼の茶色く大きな瞳は私の視線を受け止め、先程の言葉は本音であり決意でもあると思わせた。
だから、私も……今伝えらえる範囲で精一杯伝えるコトにした。
恋愛感情を持っているコトを言うにはまだ頃合いではない。
「パパを誰にも取られたくないんです。我儘なのは分かっているのですけど」
軽蔑されるかな、迷惑かな。
「嬉しいな。それだけ僕が必要とされているって事だから」
「……ずっと、左右さんと一緒に居たいです」
左右さんが驚く表情を浮かべたと思ったら頬を緩ませる。
照れてくれたのかな。
次の瞬間、再び私を抱きしめた。
「一緒に居るよ。ああ、でも梨杏ちゃんが大きくなって彼氏を連れて来たら僕、泣きそうだなぁ」
その心配はありません。
今はまだ本気に思わないのならばと思い私は、娘から父へとしては最大限の温めていた言葉を今伝えるコトにした。
「私、大きくなったらパパと結婚したいです」
私を抱擁する左右さんの身体が大きく反応した。
今度は左右さんの顔が真っ赤に染まる。
左右さんは動揺を隠し切れず言葉が詰まっていた。
普段はかっこよく、頼りになる左右さんがこんなに焦っている事に私の方が驚いているが、なんだか可愛い。
いつの間にか私は笑顔を浮かべていた。
「ぼ、僕なんかおじさんよりも良い人がその内出来るよ。でも凄く嬉しくて吃驚した。
パパも梨杏ちゃんの良い父親になれる様、これからもずっと頑張るね」
「はいっ、私も良い娘になれる様に努力を続けます」
安心したらなんだかお腹が空いてくる。
左右さんも同じで、夕食を食べに二人で外出することにした。
☆新規計画達成項目
・2017年8月6日 左右さんに『あの台詞』を伝えるコトが出来
わんわんと泣き出す私を見て動揺し、手を握る左右さん。
どうしたの?
どうして泣いてるの?
僕が、何かしてしまったの?
違う、違うのだ。
涙を流すのは私が余りにも不甲斐なく、私が余りにも幼いからだ。
一年前のあの時も私は左右さんの前で泣いており、これで彼に涙を見せるのは『三度目』である。
一度感情が爆発すると私は自制する事が出来ない様で、左右さんが懸命に慰めてくれながらも落ち着いたのは空が黄昏に染まり始めた頃だった。
*******
18時40分。
いつの間にか私は左右さんにしがみついたまま少し眠っていた様で、目が覚めたら優しい表情を浮かべ私の頭を撫でた。
「ごめんね、梨杏ちゃん。僕が君を不安にさせたんだね」
「…………。違うんです」
目が赤く腫れて正直顔を見られたくないが、これ以上彼を困らせたくない。
「私が、パパの重荷になってしまっているのではないのかと思ってしまって……」
「そんなコトないよ。重荷どころか色々助けて貰ってるよ。正直、梨杏ちゃんが来るまで家事なんて殆どしてなかったんだ」
「でも、リアンが居る所為でパパが誰かを好きになったり出来ないのかなって――――」
出来て欲しくない。誰にも渡したくない。
そう思うとまた涙がこみ上げてきて、左右さんもそれを悟ったらしく私を抱きしめて背中をさする。
彼の胸元に顔が密着し、心臓がより高鳴った。
左右さんは再び優しい声で私に語り掛ける。
「――誰にも言ったコトが無かったけど、今まで真剣に誰かを好きになったりした事が無かったんだ。
恋愛に興味が無いと言うよりは、然程他人自体に興味が持てなくて」
意外、と聞いて思ったが改めて考えてみると左右さんは人付き合いが上手過ぎるかも知れない。
「自信過剰に聞こえるかも知れないけど、なんとなく女の人から好意を持たれてるのかなって思ったり、
そして実際に告白されて取り敢えず付き合ってみたけど、やっぱり友達以上の特別な感情は持てなかったんだ」
この人は誰にでも優しいので女なら自分が特別扱いされてると勘違いしてしまうだろう。私もそうだ。
「会社でも上手くやってると思う。でも、それは僕が仕事をする上で同僚や上司と仲良くしているし尊敬だってしているけど、それ以上の感情は持てないかな」
やはり左右さんは完璧な類の人である。でも、あれだけ会社の人と仲良くしているのに存外に強い繋がりではないらしい。
「もう一度言うけど僕は基本的に、他人に対しての興味が薄いんだ。でも……」
でも?
「誤解を承知で言うと、一年前に会った時からずっと梨杏ちゃんの事で頭が一杯で……正直、誰かにこんなに夢中になるコトが本当に初めてなんだ。
護りたい。ずっと護っていたいっていつも強く思っていて、本当に何でもしてあげたいって考えてる。
自分でも驚く位、こんなに誰かに尽くしたく思うなんて不思議だよ」
私を護りたい。その言葉に少し照れながらも私は左右さんの胸に顔をうずめて静かに聞いている。
恋ではないのかも知れないけど、やはり愛が伝わってくる。
「だから、僕は本当に恋愛をするつもりが無くて、今は梨杏ちゃんと二人で楽しく暮らしたい。
あの時に僕達は出会って、それからずっと君を幸せにしたいって思ってるから」
恥ずかしくて顔が真っ赤になる。
まるでプロポーズの様な言葉を聞いて既に幸せになっているからだ。
恐る恐る私は、左右さんの胸から顔を離し見上げる。
相変わらず優しい表情。
彼の茶色く大きな瞳は私の視線を受け止め、先程の言葉は本音であり決意でもあると思わせた。
だから、私も……今伝えらえる範囲で精一杯伝えるコトにした。
恋愛感情を持っているコトを言うにはまだ頃合いではない。
「パパを誰にも取られたくないんです。我儘なのは分かっているのですけど」
軽蔑されるかな、迷惑かな。
「嬉しいな。それだけ僕が必要とされているって事だから」
「……ずっと、左右さんと一緒に居たいです」
左右さんが驚く表情を浮かべたと思ったら頬を緩ませる。
照れてくれたのかな。
次の瞬間、再び私を抱きしめた。
「一緒に居るよ。ああ、でも梨杏ちゃんが大きくなって彼氏を連れて来たら僕、泣きそうだなぁ」
その心配はありません。
今はまだ本気に思わないのならばと思い私は、娘から父へとしては最大限の温めていた言葉を今伝えるコトにした。
「私、大きくなったらパパと結婚したいです」
私を抱擁する左右さんの身体が大きく反応した。
今度は左右さんの顔が真っ赤に染まる。
左右さんは動揺を隠し切れず言葉が詰まっていた。
普段はかっこよく、頼りになる左右さんがこんなに焦っている事に私の方が驚いているが、なんだか可愛い。
いつの間にか私は笑顔を浮かべていた。
「ぼ、僕なんかおじさんよりも良い人がその内出来るよ。でも凄く嬉しくて吃驚した。
パパも梨杏ちゃんの良い父親になれる様、これからもずっと頑張るね」
「はいっ、私も良い娘になれる様に努力を続けます」
安心したらなんだかお腹が空いてくる。
左右さんも同じで、夕食を食べに二人で外出することにした。
☆新規計画達成項目
・2017年8月6日 左右さんに『あの台詞』を伝えるコトが出来
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