結婚六カ年計画

魂祭 朱夏

文字の大きさ
上 下
11 / 58
小学校編

結婚六カ年計画 7-2

しおりを挟む
 2017年5月3日 水曜日。午前11時過ぎ。


「ただいま。おぉ左右、久しぶりだな」
 左右さんの実家の居間で皆で寛いでいると、大人と子供の男の人が買い物袋を持って入ってきた。
「おかえり、兄さん。景も久し振り」
「左右おじさん久しぶりー! あれ、その子は?」
 左右さんのお義兄さんとその子。
 どこか左右さんの面影がある。
 私はふたりを見て軽くお辞儀をした。

「初めまして、梨杏です。ふたりとも、宜しくお願いします」
「ほう、礼儀正しい子だなぁ。この子が左右の娘になった子か。
 景、お前も挨拶しなさい」
「……………」
 景君は私を見ると、俯いて黙ってしまった。
 どうしたのかな。

「景、梨杏ちゃんに挨拶をしなさい!」
 今度はお母さんである唯さんから声が飛んできた。
 彼は渋々、顔を上げて第一声とは違いか細い声をあげる。
「は、はじめまして。景だよ、よろしく……」
 景君の顔は真っ赤である。
「景君、仲良くして下さいねっ」
「う、うん……」
 彼はまた俯いてしまい、お義兄さんと叔母さんが大笑いする。

「あっはっはっは、こいつ、照れやがって!」
「しょうがないわよ。梨杏ちゃん、凄く可愛いし。昔のあなたと一緒だわ」
 思わぬ反撃に今度はお義兄さんが鳩が豆鉄砲に当たった様な表情を浮かべる。
 親子だなぁと思い、私はつい可笑しくなった。

 次男のお義兄様は居ないけど、これで左右さんの殆どのご家族と会うコトが出来た。
 賑やかで、気兼ねを感じないこの雰囲気に「ああ、これが家族なのか」と感慨深く思う。


 ∞∞∞∞∞
 
 
 ながめているだけで
 ほほえましく、
 うらやましく、
 そしてほんのすこしねたましい。

 その暖かさに当てられて私は、自分の心の醜悪さを改めて思い知り胸を痛めた。


 ∞∞∞∞∞ 

 
「…………」
「梨杏ちゃん、どうしたの?」
 私の様子に気付いたのか、左右さんが心配そうな表情を浮かべる。
「えっ? あっ、いえ……人が沢山居て緊張してしまって」
「そっかぁ。でも皆怖くないから大丈夫だよ。
 父さんと上兄さんは顔が怖いけど……」
「お前は母さん似だから良いよなぁ」
 お義兄さんがそう言うと皆、大笑いした。

「ふふっ……ええ。皆さん優しそうだと思います」
 いつか私も、この疎外感を取り払い、この輪の中に入れたのなら。

 
 ☆新規計画達成項目
 ・2017年5月3日 お義兄さんとその息子の景君と仲良くなった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ダンシングマニア

藤和
ファンタジー
平穏な日常を過ごす村で、村人たちが楽しげに踊る。 はじめは賑やかな日常だと思ったその踊りは、村中に感染する。 これは病か、それとも呪いか。 錬金術師はその謎に迫る。

考えて。見て。聴いて。

ゆきちゃん
ミステリー
日常のふとした瞬間でも、たまらなく愛おしくなって、せつなくなる。 それが、人間。 私達はそれでも、生きている。 日常をテーマにした短編集です。

狐火の花

鵜海喨
ファンタジー
なんとなく、異世界系のゆっくりした話を書きます。 一日で書ける量のみです。

封神の湖 ~凡人と仙人の絆~

トンカツうどん
ファンタジー
紹介文: 『封神の湖 ~凡人と仙人の絆~』は、釣り好きな普通の高校生、信楽焼ユウトが、ひょんなことから仙人たちの世界に巻き込まれ、彼自身が成長していく物語です。ユウトは、釣りの達人だと勘違いして声をかけた仙人、太公望に弟子入りすることになります。しかし、彼が求めていたのはただの釣りの技術だけではなく、気功や武術、さらには仙術の基礎を学ぶという予想外の展開に。さらに、太公望の知り合いである風を操る仙人・金霄子も現れ、ユウトの平凡な日常は一変。次々と巻き起こる事件や修行の中で、ユウトは彼の真の潜在力に目覚めていきます。この作品では、太公望が持つ中国神話の要素を取り入れ、封神の物語と共に凡人と仙人の繋がりが描かれます。厳しい修行や戦いの中でも、ユウトは仲間たちとの絆を深め、次第に自分の運命に向き合っていくことに…。笑いあり、感動ありの異世界ファンタジーで、ユウトと仙人たちの冒険が織り成す絆と成長をお楽しみください。読者は、ユウトの視点を通して、彼が釣りから始まる壮大な冒険にどのように向き合い、困難を乗り越えるのかを体験することができるでしょう。

プロローグでケリをつけた乙女ゲームに、悪役令嬢は必要ない(と思いたい)

犬野きらり
恋愛
私、ミルフィーナ・ダルンは侯爵令嬢で二年前にこの世界が乙女ゲームと気づき本当にヒロインがいるか確認して、私は覚悟を決めた。 『ヒロインをゲーム本編に出さない。プロローグでケリをつける』 ヒロインは、お父様の再婚相手の連れ子な義妹、特に何もされていないが、今後が大変そうだからひとまず、ごめんなさい。プロローグは肩慣らし程度の攻略対象者の義兄。わかっていれば対応はできます。 まず乙女ゲームって一人の女の子が何人も男性を攻略出来ること自体、あり得ないのよ。ヒロインは天然だから気づかない、嘘、嘘。わかってて敢えてやってるからね、男落とし、それで成り上がってますから。 みんなに現実見せて、納得してもらう。揚げ足、ご都合に変換発言なんて上等!ヒロインと一緒の生活は、少しの発言でも悪役令嬢発言多々ありらしく、私も危ない。ごめんね、ヒロインさん、そんな理由で強制退去です。 でもこのゲーム退屈で途中でやめたから、その続き知りません。

【完結160万pt】王太子妃に決定している公爵令嬢の婚約者はまだ決まっておりません。王位継承権放棄を狙う王子はついでに側近を叩き直したい

宇水涼麻
恋愛
 ピンク髪ピンク瞳の少女が王城の食堂で叫んだ。 「エーティル様っ! ラオルド様の自由にしてあげてくださいっ!」  呼び止められたエーティルは未来の王太子妃に決定している公爵令嬢である。  王太子と王太子妃となる令嬢の婚約は簡単に解消できるとは思えないが、エーティルはラオルドと婚姻しないことを軽く了承する。  その意味することとは?  慌てて現れたラオルド第一王子との関係は?  なぜこのような状況になったのだろうか?  ご指摘いただき一部変更いたしました。  みなさまのご指摘、誤字脱字修正で読みやすい小説になっていっております。 今後ともよろしくお願いします。 たくさんのお気に入り嬉しいです! 大変励みになります。 ありがとうございます。 おかげさまで160万pt達成! ↓これよりネタバレあらすじ 第一王子の婚約解消を高らかに願い出たピンクさんはムーガの部下であった。 親類から王太子になることを強要され辟易しているが非情になれないラオルドにエーティルとムーガが手を差し伸べて王太子権放棄をするために仕組んだのだ。 ただの作戦だと思っていたムーガであったがいつの間にかラオルドとピンクさんは心を通わせていた。

短編集・異世界恋愛

鳴宮野々花
恋愛
短編を集めました。新作を書いた時はこちらに随時更新していきます。 ①王太子殿下の心変わり ②彼は分かっていなかった ③「君を愛することはない」 ④妹は生まれた時から全てを持っていた。 ⑤前世の記憶

タイトル[数百年ぶりに外界に出た魔女は終わった世界に祝福を]

絶望を超越するもの
SF
数百年ぶりに外界に出た魔女は終わった世界に祝福を 本作は小説家になろうとカクヨムとアルファポリスと ノベルアップ+で投稿しています

処理中です...