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第一部
第5話 侯爵護衛依頼(1)
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「嬉しそうね、サラ」
「はい、フィーユさん」
つい表情に出ていたのか、届いた手紙を眺める私にフィーユさんは面白がって言った。
父マラブル侯からの指名依頼。
西にある首都ナユタで貴族会議が開催されるから、その間護衛として付き添って欲しいとのコトだ。代表補佐として姉のセリスも同席するらしい。母と妹のクレアとは桜花通りの別荘で日常的に会うが、二人とは久し振りだ。
昔はあんなに避けていた家族なのに、再会がこんなに恋焦がれるなんて不思議である。
こころが強まった気がした。
「マラブル侯爵からどんな依頼だったの? お父さんは知ってるけど私聞いてなくて」
「1週間程の護衛依頼です。正直言うと警備も万全な場所ですし、姉も同行している様なので正直私は不要かと思われますが」
「決まってるでしょ。久し振りに会いたいのよ、サラに」
「だとしたら私、とても嬉しいです」
5年前、冒険者になろうと決めてココに来た時からずっと相談相手になってくれたフィーユさん、通称娘さん。
こころが乾いていた時期も居てくれたし、多分私のあのコトも知っている筈なのにこうしていつも仕事の合間に私の隣で話を聞いてくれている。
冒険者になって得たものは知識や経験の他に、友達や沢山の繋がりもある。
「早速今日出発します、フィーユさん」
「行ってらっしゃい、サラ」
私は身支度を整えてナユタ行の馬車に乗った。
首都ナユタ。フィルドからは馬車で四時間位の距離。
300年程前の動乱期に今の形になり、初代国王の名前がそのまま国と首都の名前に落ち着いたこの国。
元々は遙か東にある日ノ本の国から流れた剣士ユウ=ナユタが街に流れ、冒険者ギルドを建てその後いろいろあって先帝を倒し、新たに建国した。
ファン皇子と2代でほぼ現在のユラス大陸西部一帯を掌握し、大陸最大の領土に拡げたとされる所謂成り上がり国家で、マラブル家もなのだが初代国王の冒険者時代に所縁のある子孫がこの国の貴族であるのが大半だ。
因みにマラブル侯爵家が任されている領土は、西にあるフェルメール湾の向こう岸一帯で魔術都市クレプスクルムに本家があり、他にも領内には港町ポルトゥス等がある。
城下町に到着した。
条例で煉瓦屋根と白塗りの壁で統一されてた建物にアクセントを加える様に並ぶ緑の街路樹。落ち着いた雰囲気が心地良い。
今回は宿泊先の王国ホテルで依頼人である父と姉の二人と滞在する予定で、ロビーで待ち合わせする手筈になっている。どうやら私の方が早く到着したらしいので待つ事にした。
「あっ、サラ!」
私を呼ぶ声がする。でも声は姉の者でも父の者でもなく、聞き覚えのあるものだった。まさか、と思い私は振り向く。
「エトワールさんっ、どうしてココに?」
私と同じ銀鷲の玉枝亭の冒険者であるエトワールさんだ。
初めは依頼人として冒険者ギルドに依頼をしたが、ある同僚が彼女の依頼を達成してからずっと居るそうだ。
私より1年前に冒険者として活動しており、現在は24歳で剣士としても踊り手としても一流で、超を付けても良い程の美人である。
顔の造形は別として、金髪碧眼と私と容貌も近くお洒落についても知識が豊富なのでとても仲良くさせて頂いていた。
両親は既に他界しており、騎士家系として有名なマルシェ侯爵家当主の孫娘でもあって、彼女はあまり望んでないのだが最近は後継者として迎えられそうになってるとか。
「多分、キミと同じ理由かも? 貴族の護衛依頼でしょ?」
「はい、父と姉の二人の護衛ですけど……エトワールさんもですか?」
「そんな所。おじいちゃんから護衛をして欲しいって言われてるの」
「では、私と一緒ですね」
私達は互いの顔を見て笑顔を浮かべた。
程なくしてマルシェ侯爵が現れる。
私は侯爵に挨拶と軽い世間話をした後に、二人はそのまま部屋に向かった。
因みに銀鷲の玉枝亭は貴族や豪商出身の冒険者が多く、あの忌々しい男も今や伯爵として自分の領地へ戻り暮らしている。ある意味では私がレントさん以上に嫌悪している男……。
もしかして今回貴族会議に参加しているのではないかと正直心配である。
「サラ、元気そうね」
待ちわびていた声が聞こえた。
「お姉様、お久し振りです」
セリスお姉様は私が振り向くと優しく抱擁してくれた。後ろで父であるマラブル侯爵も控え目に微笑んでくれている。姉妹故に、一族の特徴である『慎ましい胸部』を除けば私と容姿が良く似ているが、非常に淑女らしい雰囲気を醸し出している。
彼女が次期マラブル侯爵家の『女当主』であり、恐らく今回はお父様がその表明を行う為に姉も連れて来たのだろう。
私の家系は少し特殊である。
理由あって子供は女しか生まれず、現当主である父は偶々同様であるが、直系は必ず金髪碧眼。
今後その機会があるかは分からないが、例えば私が赤髪黒眼や青髪金眼の人と結婚て子供を産んだりしても、生まれるのは私と同じ金髪碧眼の女の子になる。
とは言っても私は特殊なので、必ずしもその通りになるとは思わないが今の所身篭る予定は無い。
やや話が脱線したが、マラブル家ではナユタ建国前から続く家系ではあるがずっと女しか生まれない為に取り敢えずは長女を『女当主(一族内では裏当主とも呼ぶ)』と呼び、結婚したら婿養子として迎え、その男性を当主として任命するのが古来からの伝統なのだ。
「また、胸が大きくなりましたか?」
背中を包む姉の手に力がやや入り、身体がより密接する。いつもの事である。
「は、はい。毎日欠かさず鍛錬と牛乳を飲んでいるからか、前回お会いした時よりも2センチ程……」
「素晴らしいですわ。ああ、羨ましい。私の大切なサラ、とても誇らしいです」
少し姉の顔がだらしなくなっている気もするが彼女なりの愛情表現である。
後ろで父の顔も少し綻び始めているのは気になるけど。
姉も妹のクレアも母も父も、皆変わらず私に接してくれている。
5年前、その愛情にようやく気付くコトが出来た。
「お父様もご息災そうで何よりです」
お姉様を優しく引き剥がし、父に一礼する。
「ああ、サラも元気そうで何よりだ」
すると父も両手を広げ、私に抱擁しようとする。
瞬間、姉が間に入り再び私に抱き着いた。
「お父様は、いけません。お母様に言いつけますよ?」
「えっ、わ、私はただ久し振りに会えたサラと――」
姉の目が三角に尖る。
「先程、いやらしい目で娘を見ていましたよね。見逃しませんよ? 去年同じコトをしでかして以来、お母様はフィルドの別荘にずっと留まっていると言うのにまだ凝りないのですか!」
侯爵である筈の父は慌て、姉の前でおどおどしている。普段大人しい人程怒ると怖く、姉はまさにそのものだった。この迫力の前では黙るしかない。
「うぅ、そんなコトないのに。でもゴメン、サラ。ただ、私は決してやましい考えを持ってないのだけは信じて欲しい」
「お、お姉様もその辺に……」
もしかすると男嫌いはお姉様の影響なのかも知れないと私は思った。
家族が揃いチェックインを済ませ、部屋に移動する。
当たり前なのだが父と姉が居ればホテル側の待遇も破格で、通路の角を曲がれば必ず何人かの従業員が配備されている。
私もそうされる立場ではあるものの、元々は彼等も怖かったので一人の時はついフードで顔を隠してしまう。
少し部屋で落ち着いた後に私は二人に尋ねた。
「その、お父様やお姉様の実力を考えると護衛が不要だと思いますが……今回は、何故私に依頼して下さったのですか?」
「通常の会合であれば不要なのですが、今回は貴族会議ですからね。皇子も参加しますし、他の貴族も一堂に会するのでもしかしたら私達が想像しない方法で一斉に襲われてしまえば、対応に難しい状況が起きるかも知れません」
「確かにそうですね」
「私やセリスの魔術で十分対処が可能だと思いもしたが、お前が言う通り想定外の事態になるかも知れないから、サラにお願いしたんだ。それに……」
「それに?」
その他の理由が思い浮かばない為に私はオウム返しをする。
するとお姉様が微笑んだ。
「サラに会いたかったんです。最後、会ったのは去年ですし……忙しいのは分かりますが、もっと沢山会いに来てくださいっ。スクルドの塔を尋ねても良いのですからっ」
何となくそんな気はしていたものの、お姉様から直接聞くと少し照れる。
でも、嬉しい。
「申し訳ございません。お姉様が現在大切な時期であると思っていた為にお会いするのを控えていた部分があります。でも、お姉様がそう仰るなら遠慮は致しません」
「(お父様以外との)家族の時間以上に大切なコトなどどこに御座いましょうか。サラ。私はこれからマラブル家の裏当主になりますがその前に貴女とクレアの姉なんです。この会合が終わったらそのまま別荘へ行きますのでその際は三人で遊びましょう」
「言葉が省略されてた気がしたけど……って、ええっ、別荘に行くのか?」
お父様が驚いている。事前に知らされてなかったらしい。
「当然でしょう。もう一年も別居していることですしお母様にも帰って来て頂かなければいけません。だからお父様、お母様に土下座して謝って下さい」
「わ、私は悪くないのに。ああ、分かった、怖い顔をしないでくれ。土下座でも何でもするよ」
仮にも侯爵である父が姉に怯えている姿を見て私は、既に屋敷の中では当主の交代をしているのだなと強く感じた。
「……その場に私も立ち会わなければならいのでしょうか」
これから始まる護衛の事より、その先どう立ち回れば良いかで私の頭の中は既に一杯だ。
「はい、フィーユさん」
つい表情に出ていたのか、届いた手紙を眺める私にフィーユさんは面白がって言った。
父マラブル侯からの指名依頼。
西にある首都ナユタで貴族会議が開催されるから、その間護衛として付き添って欲しいとのコトだ。代表補佐として姉のセリスも同席するらしい。母と妹のクレアとは桜花通りの別荘で日常的に会うが、二人とは久し振りだ。
昔はあんなに避けていた家族なのに、再会がこんなに恋焦がれるなんて不思議である。
こころが強まった気がした。
「マラブル侯爵からどんな依頼だったの? お父さんは知ってるけど私聞いてなくて」
「1週間程の護衛依頼です。正直言うと警備も万全な場所ですし、姉も同行している様なので正直私は不要かと思われますが」
「決まってるでしょ。久し振りに会いたいのよ、サラに」
「だとしたら私、とても嬉しいです」
5年前、冒険者になろうと決めてココに来た時からずっと相談相手になってくれたフィーユさん、通称娘さん。
こころが乾いていた時期も居てくれたし、多分私のあのコトも知っている筈なのにこうしていつも仕事の合間に私の隣で話を聞いてくれている。
冒険者になって得たものは知識や経験の他に、友達や沢山の繋がりもある。
「早速今日出発します、フィーユさん」
「行ってらっしゃい、サラ」
私は身支度を整えてナユタ行の馬車に乗った。
首都ナユタ。フィルドからは馬車で四時間位の距離。
300年程前の動乱期に今の形になり、初代国王の名前がそのまま国と首都の名前に落ち着いたこの国。
元々は遙か東にある日ノ本の国から流れた剣士ユウ=ナユタが街に流れ、冒険者ギルドを建てその後いろいろあって先帝を倒し、新たに建国した。
ファン皇子と2代でほぼ現在のユラス大陸西部一帯を掌握し、大陸最大の領土に拡げたとされる所謂成り上がり国家で、マラブル家もなのだが初代国王の冒険者時代に所縁のある子孫がこの国の貴族であるのが大半だ。
因みにマラブル侯爵家が任されている領土は、西にあるフェルメール湾の向こう岸一帯で魔術都市クレプスクルムに本家があり、他にも領内には港町ポルトゥス等がある。
城下町に到着した。
条例で煉瓦屋根と白塗りの壁で統一されてた建物にアクセントを加える様に並ぶ緑の街路樹。落ち着いた雰囲気が心地良い。
今回は宿泊先の王国ホテルで依頼人である父と姉の二人と滞在する予定で、ロビーで待ち合わせする手筈になっている。どうやら私の方が早く到着したらしいので待つ事にした。
「あっ、サラ!」
私を呼ぶ声がする。でも声は姉の者でも父の者でもなく、聞き覚えのあるものだった。まさか、と思い私は振り向く。
「エトワールさんっ、どうしてココに?」
私と同じ銀鷲の玉枝亭の冒険者であるエトワールさんだ。
初めは依頼人として冒険者ギルドに依頼をしたが、ある同僚が彼女の依頼を達成してからずっと居るそうだ。
私より1年前に冒険者として活動しており、現在は24歳で剣士としても踊り手としても一流で、超を付けても良い程の美人である。
顔の造形は別として、金髪碧眼と私と容貌も近くお洒落についても知識が豊富なのでとても仲良くさせて頂いていた。
両親は既に他界しており、騎士家系として有名なマルシェ侯爵家当主の孫娘でもあって、彼女はあまり望んでないのだが最近は後継者として迎えられそうになってるとか。
「多分、キミと同じ理由かも? 貴族の護衛依頼でしょ?」
「はい、父と姉の二人の護衛ですけど……エトワールさんもですか?」
「そんな所。おじいちゃんから護衛をして欲しいって言われてるの」
「では、私と一緒ですね」
私達は互いの顔を見て笑顔を浮かべた。
程なくしてマルシェ侯爵が現れる。
私は侯爵に挨拶と軽い世間話をした後に、二人はそのまま部屋に向かった。
因みに銀鷲の玉枝亭は貴族や豪商出身の冒険者が多く、あの忌々しい男も今や伯爵として自分の領地へ戻り暮らしている。ある意味では私がレントさん以上に嫌悪している男……。
もしかして今回貴族会議に参加しているのではないかと正直心配である。
「サラ、元気そうね」
待ちわびていた声が聞こえた。
「お姉様、お久し振りです」
セリスお姉様は私が振り向くと優しく抱擁してくれた。後ろで父であるマラブル侯爵も控え目に微笑んでくれている。姉妹故に、一族の特徴である『慎ましい胸部』を除けば私と容姿が良く似ているが、非常に淑女らしい雰囲気を醸し出している。
彼女が次期マラブル侯爵家の『女当主』であり、恐らく今回はお父様がその表明を行う為に姉も連れて来たのだろう。
私の家系は少し特殊である。
理由あって子供は女しか生まれず、現当主である父は偶々同様であるが、直系は必ず金髪碧眼。
今後その機会があるかは分からないが、例えば私が赤髪黒眼や青髪金眼の人と結婚て子供を産んだりしても、生まれるのは私と同じ金髪碧眼の女の子になる。
とは言っても私は特殊なので、必ずしもその通りになるとは思わないが今の所身篭る予定は無い。
やや話が脱線したが、マラブル家ではナユタ建国前から続く家系ではあるがずっと女しか生まれない為に取り敢えずは長女を『女当主(一族内では裏当主とも呼ぶ)』と呼び、結婚したら婿養子として迎え、その男性を当主として任命するのが古来からの伝統なのだ。
「また、胸が大きくなりましたか?」
背中を包む姉の手に力がやや入り、身体がより密接する。いつもの事である。
「は、はい。毎日欠かさず鍛錬と牛乳を飲んでいるからか、前回お会いした時よりも2センチ程……」
「素晴らしいですわ。ああ、羨ましい。私の大切なサラ、とても誇らしいです」
少し姉の顔がだらしなくなっている気もするが彼女なりの愛情表現である。
後ろで父の顔も少し綻び始めているのは気になるけど。
姉も妹のクレアも母も父も、皆変わらず私に接してくれている。
5年前、その愛情にようやく気付くコトが出来た。
「お父様もご息災そうで何よりです」
お姉様を優しく引き剥がし、父に一礼する。
「ああ、サラも元気そうで何よりだ」
すると父も両手を広げ、私に抱擁しようとする。
瞬間、姉が間に入り再び私に抱き着いた。
「お父様は、いけません。お母様に言いつけますよ?」
「えっ、わ、私はただ久し振りに会えたサラと――」
姉の目が三角に尖る。
「先程、いやらしい目で娘を見ていましたよね。見逃しませんよ? 去年同じコトをしでかして以来、お母様はフィルドの別荘にずっと留まっていると言うのにまだ凝りないのですか!」
侯爵である筈の父は慌て、姉の前でおどおどしている。普段大人しい人程怒ると怖く、姉はまさにそのものだった。この迫力の前では黙るしかない。
「うぅ、そんなコトないのに。でもゴメン、サラ。ただ、私は決してやましい考えを持ってないのだけは信じて欲しい」
「お、お姉様もその辺に……」
もしかすると男嫌いはお姉様の影響なのかも知れないと私は思った。
家族が揃いチェックインを済ませ、部屋に移動する。
当たり前なのだが父と姉が居ればホテル側の待遇も破格で、通路の角を曲がれば必ず何人かの従業員が配備されている。
私もそうされる立場ではあるものの、元々は彼等も怖かったので一人の時はついフードで顔を隠してしまう。
少し部屋で落ち着いた後に私は二人に尋ねた。
「その、お父様やお姉様の実力を考えると護衛が不要だと思いますが……今回は、何故私に依頼して下さったのですか?」
「通常の会合であれば不要なのですが、今回は貴族会議ですからね。皇子も参加しますし、他の貴族も一堂に会するのでもしかしたら私達が想像しない方法で一斉に襲われてしまえば、対応に難しい状況が起きるかも知れません」
「確かにそうですね」
「私やセリスの魔術で十分対処が可能だと思いもしたが、お前が言う通り想定外の事態になるかも知れないから、サラにお願いしたんだ。それに……」
「それに?」
その他の理由が思い浮かばない為に私はオウム返しをする。
するとお姉様が微笑んだ。
「サラに会いたかったんです。最後、会ったのは去年ですし……忙しいのは分かりますが、もっと沢山会いに来てくださいっ。スクルドの塔を尋ねても良いのですからっ」
何となくそんな気はしていたものの、お姉様から直接聞くと少し照れる。
でも、嬉しい。
「申し訳ございません。お姉様が現在大切な時期であると思っていた為にお会いするのを控えていた部分があります。でも、お姉様がそう仰るなら遠慮は致しません」
「(お父様以外との)家族の時間以上に大切なコトなどどこに御座いましょうか。サラ。私はこれからマラブル家の裏当主になりますがその前に貴女とクレアの姉なんです。この会合が終わったらそのまま別荘へ行きますのでその際は三人で遊びましょう」
「言葉が省略されてた気がしたけど……って、ええっ、別荘に行くのか?」
お父様が驚いている。事前に知らされてなかったらしい。
「当然でしょう。もう一年も別居していることですしお母様にも帰って来て頂かなければいけません。だからお父様、お母様に土下座して謝って下さい」
「わ、私は悪くないのに。ああ、分かった、怖い顔をしないでくれ。土下座でも何でもするよ」
仮にも侯爵である父が姉に怯えている姿を見て私は、既に屋敷の中では当主の交代をしているのだなと強く感じた。
「……その場に私も立ち会わなければならいのでしょうか」
これから始まる護衛の事より、その先どう立ち回れば良いかで私の頭の中は既に一杯だ。
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