1 / 14
1話
しおりを挟む卒業式が終わり、クラスメートや友人と思い思いに言葉を交わした後私は1人、教室を出てある場所に向かっていた。
その場所にいるであろう彼はうちのクラスの副担任にも関わらず、適当に別れの言葉を皆に話した後さっさと雲隠れしてしまったのだ。彼に憧れる女子生徒の落胆ぶりといったら、凄まじいものだった。
女子達を差し置いて会いに行こうというのだから、バレたら面倒なことになるのは目に見えているがどうせ今日で卒業だ。気にする必要もない。
私はとある場所…社会科準備室の前に立ちドアをノックする。何の反応もないが、どうせゲームでもしているのだろう。気にせずドアをガラッと開けた。
窓側の机に座りスマホを両手で持っていた彼…日本史教師の高瀬修吾はこちらを見た。
「あれ、佐上じゃん。何、どうした」
「それはこっちのセリフです。皆先生のこと探してるのに、こんなところでゲームですか」
「いやね、他のゲームに気を取られてたらこっちのイベント碌に走ってなくて。3時のメンテまでに石集めないとアレなの」
相変わらず、この人の最優先事項はゲームなのだ。だからといって生徒に冷たいなんてことは絶対にない。多少デリカシーに欠けるところはあるが、フレンドリーで若く誰に対しても優しい。おまけに長身痩躯で鼻筋の通った、モデルでも通用する顔立ちだ。特に女子の間で絶大な人気を誇っている。妬まれることなく男子にも好かれているのだから、彼の人徳なのだろう。
「俺は良いの、それより佐上。お前は良いのこんなところにいて。友達と話したいことないの?…あ、友達いない」
「本当失礼ですね。県外に進学する子殆どいないから、別れを惜しむ必要がないだけです。いつでも会えますし」
ジロリと睨むと「悪い悪い」とアッサリ謝ってくれた。
「で?結局何しに来たんだ」
「今までのお礼を伝えに来たんです。頻繁にここで話聞いてもらいましたから」
私は少々問題のある家庭環境とそれに随するストレスで一時期かなり追い詰められていた。そんな時偶然高瀬先生に悩みを打ち明けることになってしまい、それ以来「大したこと言えないけど」と時々ここ、社会科準備室で悩みを聞いてくれることになったのだ。彼はカウンセラーではないので、本当に話を聞くだけで気の利いたアドバイスなんて殆どしてくれない。
それでもずっと、長年溜め込んでいた私はそれだけで心が軽くなったのだ。
「お礼言われることしてないぞ、本当に聞いてただけだし」
「そんなことないですよ。それに…先生が本当はここに篭ってゲームしまくる不真面目教師だって知れたのもラッキーでした」
「ここ埃くさくて他の社会科の先生殆ど近寄らないから穴場なんだよ。まあ佐上は無闇矢鱈に言いふらさないだろうなって思ったから話したんだけど」
「あはは、ありがとうございます。それで先生…私ただ単にお礼言いに来たわけじゃないんですよ。話があって」
すると先生が少しばかり真剣な眼差しでこっちを見据えた。
「話?大学で友達作る方法?そんなんオリエンテーションや最初の授業で一人のやつに兎に角話しかければ」
この教師はどれだけ私が友達を欲しがっていると思ってるんだ。確かに普段話す人は多いけれど、心から信用出来る人は居ないに等しい。
「違いますよ。…今日で最後なんで告白しに来ました。私高瀬先生のこと好きです」
先生が目を見張った。が、直ぐに元の飄々とした表情に戻る。恐らく慣れっこなのだろう。他の子達は遊び半分だ。本気で教師に告白する子は居ない。たとえ卒業式であろうと。
けど、私は遊びじゃない。それを分からせるために口を開いた。
「安心してください、付き合って欲しいなんて望みません。ただ思い出にしたいので、私とセックスしてくれませんか」
先生がスマホを机の上に落とした。
11
お気に入りに追加
55
あなたにおすすめの小説
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
森でオッサンに拾って貰いました。
来栖もよもよ&来栖もよりーぬ
恋愛
アパートの火事から逃げ出そうとして気がついたらパジャマで森にいた26歳のOLと、拾ってくれた40近く見える髭面のマッチョなオッサン(実は31歳)がラブラブするお話。ちと長めですが前後編で終わります。
ムーンライト、エブリスタにも掲載しております。
不埒な一級建築士と一夜を過ごしたら、溺愛が待っていました
入海月子
恋愛
有本瑞希
仕事に燃える設計士 27歳
×
黒瀬諒
飄々として軽い一級建築士 35歳
女たらしと嫌厭していた黒瀬と一緒に働くことになった瑞希。
彼の言動は軽いけど、腕は確かで、真摯な仕事ぶりに惹かれていく。
ある日、同僚のミスが発覚して――。
ブラック企業を退職したら、極上マッサージに蕩ける日々が待ってました。
イセヤ レキ
恋愛
ブラック企業に勤める赤羽(あかばね)陽葵(ひまり)は、ある夜、退職を決意する。
きっかけは、雑居ビルのとあるマッサージ店。
そのマッサージ店の恰幅が良く朗らかな女性オーナーに新たな職場を紹介されるが、そこには無口で無表情な男の店長がいて……?
※ストーリー構成上、導入部だけシリアスです。
※他サイトにも掲載しています。
雨音。―私を避けていた義弟が突然、部屋にやってきました―
入海月子
恋愛
雨で引きこもっていた瑞希の部屋に、突然、義弟の伶がやってきた。
伶のことが好きだった瑞希だが、高校のときから彼に避けられるようになって、それがつらくて家を出たのに、今になって、なぜ?
魚人族のバーに行ってワンナイトラブしたら番いにされて種付けされました
ノルジャン
恋愛
人族のスーシャは人魚のルシュールカを助けたことで仲良くなり、魚人の集うバーへ連れて行ってもらう。そこでルシュールカの幼馴染で鮫魚人のアグーラと出会い、一夜を共にすることになって…。ちょっとオラついたサメ魚人に激しく求められちゃうお話。ムーンライトノベルズにも投稿中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる