上 下
23 / 32

23話

しおりを挟む



「どうした?」

問われたリゼットは逡巡した後、決めた。

「…言うべきか悩んだのですが。テオドール様が薬を飲まされたのは元はといえば私が原因です」

「そんなこと気にしなくていい」

「そう仰ると思ってました。レオン殿下のことはどうする事も出来なかったと諦めてますが…それでも…んぐっ」

尚も言い募るリゼットの鼻をテオドールが摘んだ。突然の行動に戸惑いを隠せない。

「自分が何をされかけたのかはあまり気にしていないのに、俺が媚薬を盛られたことは気にするんだな。普通逆だろう」

自分は何もなかったのだから、テオドールの心配をするのは当然だ、と返したかったが変な声を聞かせたくなくて結局黙ってしまう。

「俺は何回か盛られているから多少は耐性があるし、殿下も量を調整していたから後遺症も何も無い。寧ろリゼットに盛っていた場合、殿下のことを2、3発は殴っていた」

スッと目を細めて語るテオドールの顔は本気だった。いくら仲がいいとはいえ王太子に暴力は駄目だ、テオドールも無事では済まなかっただろう。心の底から何も無くて良かったと安堵していると鼻が解放された。リゼットが鼻を擦る。

「鼻を摘まないでください」

「悪い、つい咄嗟に」

「言葉を遮るにしても、他に方法があるでしょう」

「他に?どんな?」

「どんな…」

聞き返されると逆に答えられない。目を伏せ考えるそぶりを見せていると。

「例えば…こんな方法があるな」

「え…」

テオドールの端正な顔が近づいてくる、そして形のいい唇がリゼットのを塞ぐ。思いもよらないテオドールの行動にリゼットの身体が強張る。テオドールはリゼットの頬に手を添えると、角度を変え啄むだけの軽い口付けを繰り返した。ゆっくりとリゼットの身体から力が抜け、緊張がほぐれていくのが分かり、空いている左手を背中に回すとスス…と背骨をなぞりだす。些細な動きでも、既に一昨日のことを思い出し始めたリゼットの身体が、ビクリと過剰に反応してしまう。嬉しそうに目を細めたテオドールは触れるだけの口付けを徐々に激しくしていった。

押し付けられた唇から伝わるテオドールの熱が顔を、身体を熱くしていき両手がリゼットの身体を弄り始める。右手は服の上から胸に触れ、下から掬うように揉まれた。直接的な刺激でないのがもどかしく感じていると突然乳首をキュッと摘まれ、塞がれた唇から「んんっ…」と喘ぎが漏れる。その隙を逃さずテオドールの舌が入り込み、クチュクチュと濡れた音を立てながら忙しなく口内を動き回った。

キスだけで感じてしまい、頬を赤く染め上げ潤んだ瞳でリゼットはテオドールを見つめた。その間も胸へと愛撫は止まず、弄られた方も放置されていた方も硬く立ち上がりつつあった。下着と擦れて、それだけで甘い声を発しそうになるがテオドールの舌が口内を蹂躙する音に掻き消されて聞こえることはない。

ワンピースの裾から入り込む手の存在に気づき、身体を引こうとするもまた強く胸を揉みしだかれ乳首を押されると抵抗する気も起きずされるがまま。前回と違い焦らすことはせず、導かれるように下着に辿り着いた指が上からゆっくりと秘裂を擦る。そこは既に湿っており、唾液の混ざり合う音と互いの荒い息遣いに紛れクチ、という水音がスカートの下から聞こえた時はカッと全身が熱くなった。


「…良かった、薬がなくても君は感じてくれているんだな」

やっと唇を解放し、感慨深そうに呟くテオドールに息を乱しながら「薬…?」とリゼットは聞き返す。

「昼に執務室を出る前に殿下に媚薬の詳しい効能について聞き出したんだ、自分がどんなものを飲まされたか気になったからな」

今は下着と胸を弄る手の動きは止まっている。安心してリゼットはテオドールの話に耳を傾けていられた。

「女性が飲んだ時の効果は昼に殿下が話していた通り、男は標準量を飲まされると女性を見たら見境なく襲い掛かり、10回は精を吐き出さないと治らないらしい。正に劇薬だ、俺は調整した量を飲まされたからあれだけで済んだ」

あれだけ、というがリゼットが覚えている限り5回は出された。標準量を飲んだ男の相手をさせられる相手…歴代の王妃や王族に嫁いだ女性だろうが果たして生きていられたのか心配になる。

「…それと今私がされていることに何の関係が」

そう、何故リゼットはキスをされてあまつさえ愛撫されているのか。…別に嫌だったわけではない、納得のいく説明が欲しいだけだ。

「あの媚薬、飲まされた人間の唾液を摂取、つまりキスをすると相手に催淫効果をもたらすんだそうだ」

催淫、というと性的に昂り淫らな気持ちになること。そしてリゼットはテオドールとキスしたあたりから身体が火照り出して…。

「一昨日の私が…あんな風になったのは薬のせいであると」

リゼットは胸を撫で下ろした。あの時の自分は少々…いやかなり積極的過ぎた。テオドールはそんなリゼットに嬉しそうに触れてくれたけど、はしたない女はどうなんだ、心の隅に引っかかっていたのだ。だからこそ薬のせいだと知らされて心の底から安堵していたのだ…今の状況も忘れて。

「良かったです…」

「俺としては積極的なリゼットが見れて嬉しかったが」

「またまた…ん?私にキスした理由と結びつかない…あっ!」

油断していたところに胸と下に触れていた手の動きが再開し、大袈裟に反応してしまった。胸の方はやわやわと優しく揉むだけに留まっているが、下の方はさっきより強い力で擦られ、下着の上から主張し始めていた蕾をグリグリと押されて腰を揺らしてしまう。



「んんっ!き、きゅうに、何し…あっ!」

スカートの下からグチュグチュと淫らな音が響き、左胸も形が変わるくらい強い力で揉まれてここが執務室だと理解していても声が抑えられない。1度だけ、けれど濃厚な時間を過ごしたことによりリゼットの身体はテオドールの与える快楽に弱く、そして貪欲になっていた。喘ぎ混じりで文句を言いつつも、声音と蕩けた表情は嫌がっていないことは丸変わり。その様子を涼しい顔で、それでいて滾らんばかりの熱を湛えた蒼い瞳がリゼットを射抜く。潤んだ視界の中でもテオドールが望んでいることを察してしまい、駄目に決まっていると言う自分と、このまま好きなようにされたいと望む自分が静かに葛藤する。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた

狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた 当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。

黒の神官と夜のお世話役

苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

【R18】人気AV嬢だった私は乙ゲーのヒロインに転生したので、攻略キャラを全員美味しくいただくことにしました♪

奏音 美都
恋愛
「レイラちゃん、おつかれさまぁ。今日もよかったよ」 「おつかれさまでーす。シャワー浴びますね」 AV女優の私は、仕事を終えてシャワーを浴びてたんだけど、石鹸に滑って転んで頭を打って失神し……なぜか、乙女ゲームの世界に転生してた。 そこで、可愛くて美味しそうなDKたちに出会うんだけど、この乙ゲーって全対象年齢なのよね。 でも、誘惑に抗えるわけないでしょっ! 全員美味しくいただいちゃいまーす。

私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】

Lynx🐈‍⬛
恋愛
 ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。  それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。  14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。 皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。 この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。 ※Hシーンは終盤しかありません。 ※この話は4部作で予定しています。 【私が欲しいのはこの皇子】 【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】 【放浪の花嫁】 本編は99話迄です。 番外編1話アリ。 ※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。

地味女で喪女でもよく濡れる。~俺様海運王に開発されました~

あこや(亜胡夜カイ)
恋愛
新米学芸員の工藤貴奈(くどうあてな)は、自他ともに認める地味女で喪女だが、素敵な思い出がある。卒業旅行で訪れたギリシャで出会った美麗な男とのワンナイトラブだ。文字通り「ワンナイト」のつもりだったのに、なぜか貴奈に執着した男は日本へやってきた。貴奈が所属する博物館を含むグループ企業を丸ごと買収、CEOとして乗り込んできたのだ。「お前は俺が開発する」と宣言して、貴奈を学芸員兼秘書として側に置くという。彼氏いない歴=年齢、好きな相手は壁画の住人、「だったはず」の貴奈は、昼も夜も彼の執着に翻弄され、やがて体が応えるように……

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

【R18】愛され総受け女王は、20歳の誕生日に夫である美麗な年下国王に甘く淫らにお祝いされる

奏音 美都
恋愛
シャルール公国のプリンセス、アンジェリーナの公務の際に出会い、恋に落ちたソノワール公爵であったルノー。 両親を船の沈没事故で失い、突如女王として戴冠することになった間も、彼女を支え続けた。 それから幾つもの困難を乗り越え、ルノーはアンジェリーナと婚姻を結び、単なる女王の夫、王配ではなく、自らも執政に取り組む国王として戴冠した。 夫婦となって初めて迎えるアンジェリーナの誕生日。ルノーは彼女を喜ばせようと、画策する。

処理中です...