49 / 76
もう初めから、答えは決まってたんだ①
しおりを挟む
_________
____________
_________…
――『もぉ、お母さん!
今日のお弁当のおかず、から揚げに冷凍コロッケにきんぴらとウインナーって何なのよ!』
――『何なのとは何なのよ!』
――『全部茶色系ばっかりだったじゃない!
お昼休みにみんなの前でお弁当広げるの恥ずかしかったんだからね!』
――『何が恥ずかしいよ、食べるのは同じでしょ!』
――『同じじゃないわよ!
見た目だって重要な要素なんだからぁ。
もっと彩りよく、かわいいお弁当にしてよね!』
――『何偉そうに文句言ってんのよ。
だったら優、あんたが自分で作ればいいでしょ。
お弁当ぐらい自分で作れなきゃ、嫁の貰い手がいなくなるわよ』
――『何よそれぇ!
その時になったらお弁当でも何でも自分でやるわよ!』
自分でご飯だって作るし、お母さんの世話にはならないんだからぁ…!
嫁の貰い手だなんて…
もぉ、お母さんったらぁ……
…………………
…………………
朝
開店の前に今日発売の雑誌を陳列する。
通常の開店準備もしながら立ち読み防止用のビニール梱包作業もしていると、平日の暇な時でもあっという間に時間は経っていく。
「おはようございまーす」
10時になる少し前を知らせるように、パートの和泉さんがお店にやってきた。
「あ、和泉さん!」
続いて一緒に新人の常盤さんも入ってきた。
「おはようございます。
えっと、今日は何からしたらいいですか?」
ちょうど良かった。
私はビニール梱包作業をザッと常盤さんに教えると、代わりにやってもらった。
そして手が空いたのを良い事に、レジまわりのチェックをしている和泉さんのもとまで駆けった。
「和泉さん、相談があるの」
「相談?
あ、まさか例のイケメン社長の事?」
ようやく和泉さんに生の声を聞く事が出来る。
結婚前に赤ちゃんが出来てしまった為に、授かり婚をしたっていう和泉さんの生の体験談を。
「えっ、妊娠?」
和泉さんは私の人生の目標であり大先輩って感じ。
こんな主婦になれたらいいなぁと思っていたし、偶然にも結婚前に赤ちゃんが出来た事は同じだ。
前に聞いた時は、ご両親にはヒドく反対されたって言っていたけど、結局は今現在そのままその子を生んで育てているし結婚だってしている。
そこに行き着くまでずいぶん悩んだと思うし、何より相手の男性…つまり今の旦那さんの反応とかがスゴく気になる。
勇さんやうちのお母さんも、和泉さんとこと同じようになるってわけじゃないのはわかってるんだけど、やっぱり参考として聞きたいもんね。
まずは自分の妊娠について、相手の男性はどう思うものなのか。
それに対して、自分はどう考えたか。
おろす手段だって、和泉さんも一度は考えたんだろうなぁ…。
「…そうなんだ。
あのイケメン社長、そんな事を言ってきたんだ」
「うん、だから私…どうしたらいいかわからなくて…」
ようやく勇さんの口から結婚という言葉は出てくれたんだけど、だからってすぐに結婚したってわけじゃない。
どちらにしてもお母さんには勇さんと一緒にあいさつに行くし、それよりも先に赤ちゃんの事は話さないといけないかな。
「わからないって…相川さん、どうして悩んでるの?」
「えっ」
あまりに意外な返答だったので、逆に私も意味がわからなかった。
私の説明の仕方が悪かったのかな。
それとも、和泉さんじゃなくて勇さんに直線相談しろって意味なのかも。
「だって私…まさか自分が妊娠しちゃうなんて思わなくてっ
こんな時どうしたらいいかわからなかったから…っ」
「そうじゃなくて、相川さんはどうしたいの?」
「どう…したい?」
相談を持ちかけているのに、私は逆に和泉さんに質問されてしまった。
私は、どうしたいか…?
「びっくりしたってのもあるだろうけど、相川さんは自分の妊娠をどう感じた?」
「え、私は…」
これまで私は、勇さんとの結婚の事は何となく意識しちゃってた所があったけど、赤ちゃんの事までは考えもしなかった。
できちゃった結婚なんてテレビの中の人だけの話であって、自分とは縁もないって。
だけど実際に起こってしまい、他人事ではなくなってしまった。
だからこそ、どうしようどうしようと悩んでばかりいたのよ。
だけど…いざ自分のお腹に赤ちゃんがいるって事がわかったあの日、驚いてあたふたする前に………ほんの一瞬、感じた。
…嬉しい って。
____________
_________…
――『もぉ、お母さん!
今日のお弁当のおかず、から揚げに冷凍コロッケにきんぴらとウインナーって何なのよ!』
――『何なのとは何なのよ!』
――『全部茶色系ばっかりだったじゃない!
お昼休みにみんなの前でお弁当広げるの恥ずかしかったんだからね!』
――『何が恥ずかしいよ、食べるのは同じでしょ!』
――『同じじゃないわよ!
見た目だって重要な要素なんだからぁ。
もっと彩りよく、かわいいお弁当にしてよね!』
――『何偉そうに文句言ってんのよ。
だったら優、あんたが自分で作ればいいでしょ。
お弁当ぐらい自分で作れなきゃ、嫁の貰い手がいなくなるわよ』
――『何よそれぇ!
その時になったらお弁当でも何でも自分でやるわよ!』
自分でご飯だって作るし、お母さんの世話にはならないんだからぁ…!
嫁の貰い手だなんて…
もぉ、お母さんったらぁ……
…………………
…………………
朝
開店の前に今日発売の雑誌を陳列する。
通常の開店準備もしながら立ち読み防止用のビニール梱包作業もしていると、平日の暇な時でもあっという間に時間は経っていく。
「おはようございまーす」
10時になる少し前を知らせるように、パートの和泉さんがお店にやってきた。
「あ、和泉さん!」
続いて一緒に新人の常盤さんも入ってきた。
「おはようございます。
えっと、今日は何からしたらいいですか?」
ちょうど良かった。
私はビニール梱包作業をザッと常盤さんに教えると、代わりにやってもらった。
そして手が空いたのを良い事に、レジまわりのチェックをしている和泉さんのもとまで駆けった。
「和泉さん、相談があるの」
「相談?
あ、まさか例のイケメン社長の事?」
ようやく和泉さんに生の声を聞く事が出来る。
結婚前に赤ちゃんが出来てしまった為に、授かり婚をしたっていう和泉さんの生の体験談を。
「えっ、妊娠?」
和泉さんは私の人生の目標であり大先輩って感じ。
こんな主婦になれたらいいなぁと思っていたし、偶然にも結婚前に赤ちゃんが出来た事は同じだ。
前に聞いた時は、ご両親にはヒドく反対されたって言っていたけど、結局は今現在そのままその子を生んで育てているし結婚だってしている。
そこに行き着くまでずいぶん悩んだと思うし、何より相手の男性…つまり今の旦那さんの反応とかがスゴく気になる。
勇さんやうちのお母さんも、和泉さんとこと同じようになるってわけじゃないのはわかってるんだけど、やっぱり参考として聞きたいもんね。
まずは自分の妊娠について、相手の男性はどう思うものなのか。
それに対して、自分はどう考えたか。
おろす手段だって、和泉さんも一度は考えたんだろうなぁ…。
「…そうなんだ。
あのイケメン社長、そんな事を言ってきたんだ」
「うん、だから私…どうしたらいいかわからなくて…」
ようやく勇さんの口から結婚という言葉は出てくれたんだけど、だからってすぐに結婚したってわけじゃない。
どちらにしてもお母さんには勇さんと一緒にあいさつに行くし、それよりも先に赤ちゃんの事は話さないといけないかな。
「わからないって…相川さん、どうして悩んでるの?」
「えっ」
あまりに意外な返答だったので、逆に私も意味がわからなかった。
私の説明の仕方が悪かったのかな。
それとも、和泉さんじゃなくて勇さんに直線相談しろって意味なのかも。
「だって私…まさか自分が妊娠しちゃうなんて思わなくてっ
こんな時どうしたらいいかわからなかったから…っ」
「そうじゃなくて、相川さんはどうしたいの?」
「どう…したい?」
相談を持ちかけているのに、私は逆に和泉さんに質問されてしまった。
私は、どうしたいか…?
「びっくりしたってのもあるだろうけど、相川さんは自分の妊娠をどう感じた?」
「え、私は…」
これまで私は、勇さんとの結婚の事は何となく意識しちゃってた所があったけど、赤ちゃんの事までは考えもしなかった。
できちゃった結婚なんてテレビの中の人だけの話であって、自分とは縁もないって。
だけど実際に起こってしまい、他人事ではなくなってしまった。
だからこそ、どうしようどうしようと悩んでばかりいたのよ。
だけど…いざ自分のお腹に赤ちゃんがいるって事がわかったあの日、驚いてあたふたする前に………ほんの一瞬、感じた。
…嬉しい って。
0
お気に入りに追加
70
あなたにおすすめの小説
捨てる旦那あれば拾うホテル王あり~身籠もったら幸せが待っていました~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「僕は絶対に、君をものにしてみせる」
挙式と新婚旅行を兼ねて訪れたハワイ。
まさか、その地に降り立った途端、
「オレ、この人と結婚するから!」
と心変わりした旦那から捨てられるとは思わない。
ホテルも追い出されビーチで途方に暮れていたら、
親切な日本人男性が声をかけてくれた。
彼は私の事情を聞き、
私のハワイでの思い出を最高のものに変えてくれた。
最後の夜。
別れた彼との思い出はここに置いていきたくて彼に抱いてもらった。
日本に帰って心機一転、やっていくんだと思ったんだけど……。
ハワイの彼の子を身籠もりました。
初見李依(27)
寝具メーカー事務
頑張り屋の努力家
人に頼らず自分だけでなんとかしようとする癖がある
自分より人の幸せを願うような人
×
和家悠将(36)
ハイシェラントホテルグループ オーナー
押しが強くて俺様というより帝王
しかし気遣い上手で相手のことをよく考える
狙った獲物は逃がさない、ヤンデレ気味
身籠もったから愛されるのは、ありですか……?
愛のない政略結婚で離婚したはずですが、子供ができた途端溺愛モードで元旦那が迫ってくるんですがなんででしょう?
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「お腹の子も君も僕のものだ。
2度目の離婚はないと思え」
宣利と結婚したのは一年前。
彼の曾祖父が財閥家と姻戚関係になりたいと強引に押したからだった。
父親の経営する会社の建て直しを条件に、結婚を承知した。
かたや元財閥家とはいえ今は経営難で倒産寸前の会社の娘。
かたや世界有数の自動車企業の御曹司。
立場の違いは大きく、宣利は冷たくて結婚を後悔した。
けれどそのうち、厳しいものの誠実な人だと知り、惹かれていく。
しかし曾祖父が死ねば離婚だと言われていたので、感情を隠す。
結婚から一年後。
とうとう曾祖父が亡くなる。
当然、宣利から離婚を切り出された。
未練はあったが困らせるのは嫌で、承知する。
最後に抱きたいと言われ、最初で最後、宣利に身体を預ける。
離婚後、妊娠に気づいた。
それを宣利に知られ、復縁を求められるまではまあいい。
でも、離婚前が嘘みたいに、溺愛してくるのはなんでですか!?
羽島花琳 はじま かりん
26歳
外食産業チェーン『エールダンジュ』グループご令嬢
自身は普通に会社員をしている
明るく朗らか
あまり物事には執着しない
若干(?)天然
×
倉森宣利 くらもり たかとし
32歳
世界有数の自動車企業『TAIGA』グループ御曹司
自身は核企業『TAIGA自動車』専務
冷酷で厳しそうに見られがちだが、誠実な人
心を開いた人間にはとことん甘い顔を見せる
なんで私、子供ができた途端に復縁を迫られてるんですかね……?
【完結】俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜
雪井しい
恋愛
「こはる、俺の妻になれ」その日、大女優を母に持つ2世女優の花宮こはるは自分の所属していた劇団の解散に絶望していた。そんなこはるに救いの手を差し伸べたのは年上の幼馴染で大企業の御曹司、月ノ島玲二だった。けれど代わりに妻になることを強要してきて──。花嫁となったこはるに対し、俺様な玲二は独占欲を露わにし始める。
【幼馴染の俺様御曹司×大物女優を母に持つ2世女優】
☆☆☆ベリーズカフェで日間4位いただきました☆☆☆
※ベリーズカフェでも掲載中
※推敲、校正前のものです。ご注意下さい
冷血弁護士と契約結婚したら、極上の溺愛を注がれています
朱音ゆうひ
恋愛
恋人に浮気された果絵は、弁護士・颯斗に契約結婚を持ちかけられる。
颯斗は美男子で超ハイスペックだが、冷血弁護士と呼ばれている。
結婚してみると超一方的な溺愛が始まり……
「俺は君のことを愛すが、愛されなくても構わない」
冷血サイコパス弁護士x健気ワーキング大人女子が契約結婚を元に両片想いになり、最終的に両想いになるストーリーです。
別サイトにも投稿しています(https://www.berrys-cafe.jp/book/n1726839)
結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「結婚したらこっちのもんだ。
絶対に離婚届に判なんて押さないからな」
既婚マウントにキレて勢いで同期の紘希と結婚した純華。
まあ、悪い人ではないし、などと脳天気にかまえていたが。
紘希が我が社の御曹司だと知って、事態は一転!
純華の誰にも言えない事情で、紘希は絶対に結婚してはいけない相手だった。
離婚を申し出るが、紘希は取り合ってくれない。
それどころか紘希に溺愛され、惹かれていく。
このままでは紘希の弱点になる。
わかっているけれど……。
瑞木純華
みずきすみか
28
イベントデザイン部係長
姉御肌で面倒見がいいのが、長所であり弱点
おかげで、いつも多数の仕事を抱えがち
後輩女子からは慕われるが、男性とは縁がない
恋に関しては夢見がち
×
矢崎紘希
やざきひろき
28
営業部課長
一般社員に擬態してるが、会長は母方の祖父で次期社長
サバサバした爽やかくん
実体は押しが強くて粘着質
秘密を抱えたまま、あなたを好きになっていいですか……?
ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~
菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。
だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。
車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。
あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。
のんびり新妻は旦那様に好かれたいようです
nionea
恋愛
のんびりした性格で家族からも疎まれているミスティは、やけに忙しいエットと結婚した。
お見合いからずっとすれ違っているような二人の新婚生活は、当然まともにはいかない。
心強い付き人のエリィネと共にやってきた新しい家。
優しく迎えてくれた侍女頭のドナや使用人女性達。
だけど、旦那様だけは、何だか様子がおかしいようで…
恋心は後からやってきた系夫婦の問題解決まで。
※異世界ファンタジー、だけど、魔法はない
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる