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怖いって思った。でも心の本音は…①

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「…………………」




__朝


アラームが鳴る前から目が覚めてしまった。

…むしろ、あんまりよく眠れなかっただけかな。


ベッドの中で、隣でまだ寝てる勇さんを見た。


…今は夢の中にいるだろう、いつもと変わらない寝顔。



昨夜は私の方が先にベッドに入って休んだ。

それから深夜、仕事を終えた勇さんが帰ってきて、ベッドに入ってきた時はキスをしてくれたけど…

気付いていたのに、寝た振りをしちゃった。


だってあんな事があったばかりだったから、私も頭が真っ白だったから…。



高梨さんは、私が妊娠してた事は誰にも言わないし手術も面倒みてあげるって言ってたけど__



「…勇さん…」


私の声なんて届かずに、まだスヤスヤと眠っている。


これまでずっと秘密にしてたけど、この事も内緒にしなきゃいけないの…?


ベッドからのそのそと下りると、トイレで用を足した。


…そうだ。
私が本当に妊娠してるかどうかなんて、まだわかんないじゃない。

確か、自分でチェック出来る検査薬がドラッグストアに行けば買えるハズ。


今日の仕事帰りには、ちょっと足を伸ばして買いに行こう。



お母さんとは結納金を取り上げて実家を出て行ったきりだし、高梨さんにはプロポーズされるし。

まだ勇さんとの仲を認めてもらわなきゃならないのに、もう頭がごちゃごちゃだよぉ…っ







私は気持ちを切り替えて、洗濯や朝ご飯の支度をはりきって始めた。


「……」


あの時は空腹だったから、高梨さんの香水の匂いが気持ち悪かっただけなんだよ。

だって勇さんとの関係は、もう1年ぐらいになるんだもん。

今更急に妊娠だなんて、ね…。


…だけど…あれ?
前の生理って、いつだったっけ?








「あ、おはようございます、店長さん」


職場の本屋さん。

8時半からの私の出勤に対して、パートの和泉さんが入るのは10時。

だけど今日はお休みみたいで、和泉さんの代わりに店長さんが来た。



「おはよう、相川さん」


ここの店長さんは、もう初老と言ってもいいお年の男性で、性格もおっとりしている。


5年前
就職の面接に来て志望動機を訊かれた時に「本が好きだからです!」なんて子どもみたいな答え方をしたんだけど、その時に店長さんはニッコリ優しい笑顔を見せてくれたの。


絵に描いたようなおじいちゃんみたいで、一緒にいて和むんだよね。


「相川さん、明日から新しい人が入るんだよ。
早く仕事覚えてほしいんだけど、相川さんに指導してもらっていいかな?」


「え、私ですか?」


「相川さんは仕事も丁寧だし接客も上手だからね。
ぜひお願いするよ」


んもぉ。
店長さんまで私をおだてて。
みんな買いかぶりすぎなんだから。




__17時


定刻通りに仕事をあがると、私は職場を後にした。



いつもなら、まずは行きつけのスーパーに寄るところ。

だけど今日は、もう少し先にあるドラッグストアへ向かった。




基本的にあんまり病気にもならないから薬を買う事もない。

ティッシュや生理用品程度だったらスーパーで十分買えるしね。



そんなわけで、あまり縁のなかったドラッグストアへにとたどり着いた。


「えっと…」


さて、妊娠検査薬なんてどこにあるんだろう。


痛み止め薬みたいな飲み薬の棚じゃないし、日用品とも違う。

だったら生理用品の近く……?


「…あ、これだな」


一見どんな感じの外装かはわからなかったけど、はっきりと 妊娠検査薬 の文字が書いてあったので間違いないと思う。



「…………………っ」



まさか自分がこんなものを買う日が来るなんて思わなかったな…。


まだ試験していないのに、既に私はドキドキしながら妊娠検査薬を手に取って、会計した。
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