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…♪♪♪ ♪♪♪…


「!」


リビングのテーブルに置いておいたケータイが鳴った。


あれから
毎日高梨さんからの着信があるんだけど、だいたい仕事中の時間だったから出られないで後から気付く事が多い。

だけど…かけ直す気にはならなくて、そのままにしている。


今日はまだかかってきてないから、きっとこの電話は高梨さんからの…



そう思いながらケータイを開いて画面を確認すると、そこには“お母さん”の文字が。


なんだ、良かった…。

ホッと胸をなで下ろしたのも束の間。

前に電話があって、ユウさんとあいさつに行くって話をしたまま何の連絡も入れていない。


きっと、『何で連絡してこないの!』とか、『次の休みはいつなの!?』なんて言われるんだわ。


はぁ…。
まだまだ問題は山積みだなぁと思いながら、私は電話に出た。


「…もしもし?」


お母さんの罵声を覚悟し、ケータイを少し耳から離して電話に出た。


『あ、優?
今、大丈夫?』


意外と大人しめな声色で応答したお母さんに、何だか拍子抜けしてしまった。

随分機嫌が良いような雰囲気だけど、何かあったのかしら?



「大丈夫だよ。
どうしたの?お母さん」


『優、あんたいつが休みなの?
その日には一度家に帰ってきなさいね』


ほらね。休みなら今日だったよ。
なんて、敢えて言わないけど。


「次の休みは…、来週の月曜日だよ」


『そう。
じゃあその時に話しましょうね。
仏前式が良いのか神前式が良いのか、よく考えておきなさいね』


仏前式?
神前式?

それって何の形式の話だっけ?


「お母さん、それって…」

『式の費用も披露宴も、みんな高梨さんがお世話して下さるって仰るのよ?
結納金まで用意してくれて!
これでいつでも、あんたを安心して嫁に出せるわぁ』


式?
披露宴!?
結納金って!


「お母さん!
まさか縁談の話、勝手に進めたんじゃあ!!」


『まぁ、勝手だなんて。
だから次の休みの日にうちに帰って、一緒に考えましょうって言ってるでしょ?』


「そうじゃないわよ!
まだ高梨さんと結婚するって私は言ってないわ!
その前にユウさんと一緒にあいさつしに行くって言ったじゃない!」


『えぇ、だからあいさつにいらしたわよ。
あんたが忙しいみたいで電話に出ないから、高梨さん1人で来てくれたんだからね』



電話に出ないから…
高梨さん1人でお母さんの所にあいさつに…?


え え えぇーーーーっ!?

これまで毎日のように電話をしてきた高梨さん。
もしかして結婚の話をする為の電話だったの!?

私がなかなか電話に出ないから、だからしびれを切らしてお母さんの所に言って話を進めちゃったって事なの?


お母さんの事だ、たとえ高梨さんが結婚の話を始めたわけじゃなくても、お母さんの方から進めた可能性だってあるわ。


何にしても!

早く何とかしないと、本当に高梨さんと結婚しなきゃならない事になっちゃうじゃない!!



「お母さん!
私、今からそっちに帰るから!!」


『あら、優もすっかりその気なのね?
いいわよぉ、こういうのは早ければ早いほど良いものね』



もう、まともに返事をする気になれなかった。

とりあえず、まずはこの話にストップをかけなくちゃだ!


それと…

この際だもの、勇さんの事、ちゃんとお母さんに話そう…!
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