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切ないよぉ…!①
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アパートに帰った時には、もう夜中の11時を過ぎていた。
仕事が終わってすぐその足で高梨さんと会ったから、晩ご飯だって食べていない。
さすがにお腹も空きすぎて、胃が気持ち悪くなってきた。
帰ってくる勇さんのご飯も作らなきゃならないんだけど、買い物もしてないからまたあるものだけで何か作らなきゃ…。
だけどその前に、私はバスルーム側の洗面台に立ち、着ている服のボタンを外して脱いでみた。
「あ…」
胸元にあった勇さんのキスマークのまわりに、さっき高梨さんに付けられたキスマークが赤く点々と見えた。
明らかに不自然な付けられ方。
こんなのを見られたら、きっと勇さんは私が浮気をしたんだと思うだろうな。
でも、原因を作ったのは間違いなく私だ。
だから…これは誰にも相談する事も出来ないんだ…。
脱いだ服をまた着ると、急いでキッチンに戻り晩ご飯の支度を始めた。
洗濯物だってまだ取り込んでなかった。
いつもやってる事なのに、何で今日だけ出来てないんだって話になったら疑われちゃう!
炊飯器のスイッチを入れると、冷凍保存していたお肉やらお魚やらを解凍し、常備野菜も加えて晩ご飯を作る。
…空きっ腹にお料理のニオイが、何だか気持ち悪い。
ガマンしながらとりあえず完成させると、テーブルに並べて今日も1人だけの遅い晩ご飯を食べた。
…寂しい。
あんな事があった後の、1人きりのご飯。
すぐにでも勇さんに抱きしめてもらいたかった。
できるならばもういっその事、今すぐ勇さんと結婚しちゃいたい!
だけど
今こんな身体にされて、私にはそれすらも言う資格はないんだ…。
食べ終わったお皿を洗い、後から勇さんが食べる分をラップに包んでテーブルに置くと、もう深夜1時だ。
一番大好きで一番側にいたい人とは一緒に暮らしているのに、結局この日は全く言葉を交わす事なく日をまたいだ。
「……ぐすん…」
じんわりと、涙もにじんでくる。
こんなすれ違い生活、もう1年近くやってきてるんだから、今に始まった事じゃない。
だけど、寂しい気持ちっていうのはなかなか慣れないんだね。
いつか結婚して幸せな夫婦になれる事を夢見ていたけど、ホントになれる…よね?
不安に胸が潰されそうになりながら、それを紛らすように私は家事を懸命にこなすんだ…!
「…お風呂、入れなきゃ…」
服の袖で涙を拭うと、私はバスルームに行きお湯を張った。
しばらくしてお風呂のお湯が溜まり、蛇口を捻ってお湯を止めると、玄関の方から物音が聞こえてきた。
「ただいま…ん?
優、今から風呂か?」
「勇さん!」
毎日帰る時間は日をまたぐんだけど、今日は早く終わったみたいで勇さんが仕事から帰ってきたんだ。
「…お帰りなさい!」
まるで何日も会えなかったのが奇跡の再会を果たしたかのように、目の前の彼に私は胸の奥が熱くなってきた。
その衝動から、私は勇さんの身体に思い切りギュウッと抱きついた。
胸に顔をうずめ、身体全体を密着させる。
「…優…」
そんな私に、勇さんは優しく抱き返してくれた。
…あったかい。
それに、この匂い。
やっぱり、大好き。
私には勇さんしかいないもん。
それ以外、考えらんないんだからっ
「優、顔上げろよ」
いつまでも抱きついて離れない私に、勇さんは言った。
「ほら…」
優しく頬に手を添えられると、勇さんはキスをしてくれた。
時間を忘れてしまいそうになるような、そんな優しいキスを。
「優…」
勇さんのキスが唇から頬、耳の後ろへと移動していった。
「なぁ、風呂まだなんだろ?
一緒に入ろうか」
誰にも聞こえないぐらいの声で、そう囁いた。
ん、一緒に…お風呂…?
仕事が終わってすぐその足で高梨さんと会ったから、晩ご飯だって食べていない。
さすがにお腹も空きすぎて、胃が気持ち悪くなってきた。
帰ってくる勇さんのご飯も作らなきゃならないんだけど、買い物もしてないからまたあるものだけで何か作らなきゃ…。
だけどその前に、私はバスルーム側の洗面台に立ち、着ている服のボタンを外して脱いでみた。
「あ…」
胸元にあった勇さんのキスマークのまわりに、さっき高梨さんに付けられたキスマークが赤く点々と見えた。
明らかに不自然な付けられ方。
こんなのを見られたら、きっと勇さんは私が浮気をしたんだと思うだろうな。
でも、原因を作ったのは間違いなく私だ。
だから…これは誰にも相談する事も出来ないんだ…。
脱いだ服をまた着ると、急いでキッチンに戻り晩ご飯の支度を始めた。
洗濯物だってまだ取り込んでなかった。
いつもやってる事なのに、何で今日だけ出来てないんだって話になったら疑われちゃう!
炊飯器のスイッチを入れると、冷凍保存していたお肉やらお魚やらを解凍し、常備野菜も加えて晩ご飯を作る。
…空きっ腹にお料理のニオイが、何だか気持ち悪い。
ガマンしながらとりあえず完成させると、テーブルに並べて今日も1人だけの遅い晩ご飯を食べた。
…寂しい。
あんな事があった後の、1人きりのご飯。
すぐにでも勇さんに抱きしめてもらいたかった。
できるならばもういっその事、今すぐ勇さんと結婚しちゃいたい!
だけど
今こんな身体にされて、私にはそれすらも言う資格はないんだ…。
食べ終わったお皿を洗い、後から勇さんが食べる分をラップに包んでテーブルに置くと、もう深夜1時だ。
一番大好きで一番側にいたい人とは一緒に暮らしているのに、結局この日は全く言葉を交わす事なく日をまたいだ。
「……ぐすん…」
じんわりと、涙もにじんでくる。
こんなすれ違い生活、もう1年近くやってきてるんだから、今に始まった事じゃない。
だけど、寂しい気持ちっていうのはなかなか慣れないんだね。
いつか結婚して幸せな夫婦になれる事を夢見ていたけど、ホントになれる…よね?
不安に胸が潰されそうになりながら、それを紛らすように私は家事を懸命にこなすんだ…!
「…お風呂、入れなきゃ…」
服の袖で涙を拭うと、私はバスルームに行きお湯を張った。
しばらくしてお風呂のお湯が溜まり、蛇口を捻ってお湯を止めると、玄関の方から物音が聞こえてきた。
「ただいま…ん?
優、今から風呂か?」
「勇さん!」
毎日帰る時間は日をまたぐんだけど、今日は早く終わったみたいで勇さんが仕事から帰ってきたんだ。
「…お帰りなさい!」
まるで何日も会えなかったのが奇跡の再会を果たしたかのように、目の前の彼に私は胸の奥が熱くなってきた。
その衝動から、私は勇さんの身体に思い切りギュウッと抱きついた。
胸に顔をうずめ、身体全体を密着させる。
「…優…」
そんな私に、勇さんは優しく抱き返してくれた。
…あったかい。
それに、この匂い。
やっぱり、大好き。
私には勇さんしかいないもん。
それ以外、考えらんないんだからっ
「優、顔上げろよ」
いつまでも抱きついて離れない私に、勇さんは言った。
「ほら…」
優しく頬に手を添えられると、勇さんはキスをしてくれた。
時間を忘れてしまいそうになるような、そんな優しいキスを。
「優…」
勇さんのキスが唇から頬、耳の後ろへと移動していった。
「なぁ、風呂まだなんだろ?
一緒に入ろうか」
誰にも聞こえないぐらいの声で、そう囁いた。
ん、一緒に…お風呂…?
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