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今までにないマジメな表情で話す高梨さんに、私は視線が離せなかった。
こんなにも美形で、こんなにもお金持ち。
そんな高梨さんだからこそ、そういった悩みがあったんだ。
それは高梨さんのお母さんも同じ思いで、だからこそ普通のお見合いをして結婚させたかったって事なんだろうな。
「だけど、相川さんは違ったよ。一緒に話をしてよくわかる。
何の欲も嫌味もない、純粋無垢な心を持ってる。
何が欲しいって訊いて、他の女性は高ければ高いものを喜んだのに、相川さんだけは本当に気に入ったものを選んだんだ」
純粋無垢だなんて、聞いていて恥ずかしくなってきちゃうよ。
相手の女性をべた褒めするのがホストさんの得意技とは言え、やっぱり間近で言われるとドキンとしちゃうな。
「あは。
そんな大げさな…」
「僕は、本気だよ。
初めて会ったあの時はそこまで思わなかったけど、この度のお見合い、僕は話を進めてもいいと思っている」
「…え…………?」
この度のお見合い、僕は話を進めてもいいと思っている……?
それって…それって…
結婚を前提に、お付き合いって事!?
「あ あの、私もお見合いの席で言いましたけど、私は本当に恋人がいるんですっ
なのにお見合いなんかしちゃったのはお母さんに納得してもらう為であって、結婚するつもりだったわけじゃあ…」
「わかってるよ」
「じゃあ…」
「だけど、その恋人ともまだ結婚したわけじゃないんだろ?
つまり、まだ僕にもチャンスはあるわけだよね」
「や、それは…」
勇さんとは結婚しないわけじゃない。
今はまだその時じゃないから…。
ちゃんとプロポーズしてくれるまで、待ってるだけなんだから…!
「…急に言われても驚くよね。
ごめんね、困らせるつもりはなかったよ。
だけど、これは本当にもらってほしいんだ」
高梨さんは、シートに座る私の膝の上にシュシュの包みを置いた。
「でも…」
「今日は本当に楽しかったんだ。
それだけでも感謝してる。
だから、ほんのお礼のつもりで受け取ってくれたらいいんだよ」
お礼…。
私はお詫びのつもりでお買い物に付き合っただけ。
あと、勇さんへのプレゼント選びにも付き合ってくれたから、お礼なら私もしなきゃならない。
うーん…本当は勇さんへのプレゼントだったんだけど…
「あの、もしよかったら、私もこれを高梨さんに…」
私はショルダーバッグに入れてた、勇さんへのプレゼント、ライターの入った包みを取り出した。
決して高梨さんの為に買ったわけじゃない。
だけど、私が自分で気に入ったシュシュをもらってしまったのだから、私も高梨さんが選んでくれたこのライターをあげるのがちょうどいいかなって思った。
今日一緒に過ごして楽しかったと思えたのは私も同じだし、それに対する感謝なら私も…。
「相川さんは僕にくれなくていいよ。
僕が相川さんにあげたかっただけなんだから」
「そんなわけにはいきませんよ。
いろいろ良くして頂いたのは、むしろ私の方だからっ」
「本当にいいんだ。
ほら、言ったろ?
僕は物なんか欲しくない、気持ちが欲しいんだって」
「そう…ですけど…」
プレゼントに大事なのは、お値段の高さでも質でもない。
相手を想うその気持ち。
だけど…気を悪くするかもしれないけど、私には高梨さんにそれ程の想いはない。
だからこそ、物を贈る事しか出来ないんだと思うの。
「だけど、それじゃあ私ばっかりもらっちゃって申し訳ないです。
わかってたら、私も何かご用意したのに…」
とは言え、高梨さんみたいな人にあげられるちょうどよい物はなかなか思いつかない。
私じゃあ車やマンションは買ってあげられないし、高梨さんはそういうのもらっても嬉しくないみたいだし。
「何も用意する必要はないよ。
僕が欲しいのは、相川さんの…優さんの気持ちだけ」
「…高梨さ__」
__ふわり
甘い香りが鼻をくすぐった。
それは高梨さんが身につけている香水の香りだ。
決してキツすぎない、むしろ優しい香り。
それが急に匂ったのは、私の顔に高梨さんが近付いたから。
予想もしてなかった行動だから一瞬何が起こったのかわからなかったけど、その香りの後に感じた
、唇の刺激でようやくわかったの。
「…ん……っ
やぁ…っ!」
甘い香りと唇の刺激が高梨さんのキスだと気付くと、私は驚いて顔を背けるように離れた。
「た…高梨さん…?」
「お見合いの席では何となく気になって約束を取り付けた。
そして今日一緒に過ごして自分でもわかったよ。
僕は優さんが好きだ」
「あ…あの、私…っ」
「シュシュのお返し、確かに戴いたよ」
お返しって…まさか、このキスの事…!?
「優さんには彼氏がいるのかもしれないけど、でも僕は本気だ。
奪い取るぐらいの気持ちで、いるからね」
「……………っ」
「今日はありがとう。
久しぶりに、良い一日を過ごせたよ」
私は…それ以上何も応えられなかった。
その後車から降りてどうやってアパートまで帰ったか思い出せないくらい、私は呆然としていたんだ…。
こんなにも美形で、こんなにもお金持ち。
そんな高梨さんだからこそ、そういった悩みがあったんだ。
それは高梨さんのお母さんも同じ思いで、だからこそ普通のお見合いをして結婚させたかったって事なんだろうな。
「だけど、相川さんは違ったよ。一緒に話をしてよくわかる。
何の欲も嫌味もない、純粋無垢な心を持ってる。
何が欲しいって訊いて、他の女性は高ければ高いものを喜んだのに、相川さんだけは本当に気に入ったものを選んだんだ」
純粋無垢だなんて、聞いていて恥ずかしくなってきちゃうよ。
相手の女性をべた褒めするのがホストさんの得意技とは言え、やっぱり間近で言われるとドキンとしちゃうな。
「あは。
そんな大げさな…」
「僕は、本気だよ。
初めて会ったあの時はそこまで思わなかったけど、この度のお見合い、僕は話を進めてもいいと思っている」
「…え…………?」
この度のお見合い、僕は話を進めてもいいと思っている……?
それって…それって…
結婚を前提に、お付き合いって事!?
「あ あの、私もお見合いの席で言いましたけど、私は本当に恋人がいるんですっ
なのにお見合いなんかしちゃったのはお母さんに納得してもらう為であって、結婚するつもりだったわけじゃあ…」
「わかってるよ」
「じゃあ…」
「だけど、その恋人ともまだ結婚したわけじゃないんだろ?
つまり、まだ僕にもチャンスはあるわけだよね」
「や、それは…」
勇さんとは結婚しないわけじゃない。
今はまだその時じゃないから…。
ちゃんとプロポーズしてくれるまで、待ってるだけなんだから…!
「…急に言われても驚くよね。
ごめんね、困らせるつもりはなかったよ。
だけど、これは本当にもらってほしいんだ」
高梨さんは、シートに座る私の膝の上にシュシュの包みを置いた。
「でも…」
「今日は本当に楽しかったんだ。
それだけでも感謝してる。
だから、ほんのお礼のつもりで受け取ってくれたらいいんだよ」
お礼…。
私はお詫びのつもりでお買い物に付き合っただけ。
あと、勇さんへのプレゼント選びにも付き合ってくれたから、お礼なら私もしなきゃならない。
うーん…本当は勇さんへのプレゼントだったんだけど…
「あの、もしよかったら、私もこれを高梨さんに…」
私はショルダーバッグに入れてた、勇さんへのプレゼント、ライターの入った包みを取り出した。
決して高梨さんの為に買ったわけじゃない。
だけど、私が自分で気に入ったシュシュをもらってしまったのだから、私も高梨さんが選んでくれたこのライターをあげるのがちょうどいいかなって思った。
今日一緒に過ごして楽しかったと思えたのは私も同じだし、それに対する感謝なら私も…。
「相川さんは僕にくれなくていいよ。
僕が相川さんにあげたかっただけなんだから」
「そんなわけにはいきませんよ。
いろいろ良くして頂いたのは、むしろ私の方だからっ」
「本当にいいんだ。
ほら、言ったろ?
僕は物なんか欲しくない、気持ちが欲しいんだって」
「そう…ですけど…」
プレゼントに大事なのは、お値段の高さでも質でもない。
相手を想うその気持ち。
だけど…気を悪くするかもしれないけど、私には高梨さんにそれ程の想いはない。
だからこそ、物を贈る事しか出来ないんだと思うの。
「だけど、それじゃあ私ばっかりもらっちゃって申し訳ないです。
わかってたら、私も何かご用意したのに…」
とは言え、高梨さんみたいな人にあげられるちょうどよい物はなかなか思いつかない。
私じゃあ車やマンションは買ってあげられないし、高梨さんはそういうのもらっても嬉しくないみたいだし。
「何も用意する必要はないよ。
僕が欲しいのは、相川さんの…優さんの気持ちだけ」
「…高梨さ__」
__ふわり
甘い香りが鼻をくすぐった。
それは高梨さんが身につけている香水の香りだ。
決してキツすぎない、むしろ優しい香り。
それが急に匂ったのは、私の顔に高梨さんが近付いたから。
予想もしてなかった行動だから一瞬何が起こったのかわからなかったけど、その香りの後に感じた
、唇の刺激でようやくわかったの。
「…ん……っ
やぁ…っ!」
甘い香りと唇の刺激が高梨さんのキスだと気付くと、私は驚いて顔を背けるように離れた。
「た…高梨さん…?」
「お見合いの席では何となく気になって約束を取り付けた。
そして今日一緒に過ごして自分でもわかったよ。
僕は優さんが好きだ」
「あ…あの、私…っ」
「シュシュのお返し、確かに戴いたよ」
お返しって…まさか、このキスの事…!?
「優さんには彼氏がいるのかもしれないけど、でも僕は本気だ。
奪い取るぐらいの気持ちで、いるからね」
「……………っ」
「今日はありがとう。
久しぶりに、良い一日を過ごせたよ」
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