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「相川さんには、どなたか既に良い相手の方がいるのではないですか?」
「ええっ、どうしてそれを!?」
お見合いなんだからある程度は相手の情報は得たかもしれないが、恋人がいるなんて事は普通あり得ないし、ましてやそんな情報が先方に行くわけがない。
なのにそんな事をさらっと訊いてきた高梨さんに、私は動揺してしまった。
まさか、相手の心が読める超能力を持ってるなんて事は…!
「相川さんの指輪。
右手だからわかりませんが、もしかしたら…と思ったのです」
「あ…」
お見合いの席に、勇さんからの指輪をつけっぱなしで来ちゃったなんて!
私ってばドンダケ図々しいのよ!
これじゃあいくらなんでも高梨さんをバカにしすぎじゃない!
どうせお断りするんだから…と軽く思っていたこのお見合い。
だけど私のこの軽率な行為が、きっと高梨さんをヒドく傷つけてしまったかもしれない…。
「すみません…
ホント、すみませんでした…」
どう謝っていいかわからず、私はとにかく頭を低く下げて謝った。
すると急に密室になっていた個室の襖が開き、お店の人が何かを運んできた。
「お待たせしました。
食後のデザートです」
小さなお盆に乗せられたのはグラスに入ったオシャレなシャーベット。
それを私と高梨さんの前に置くと、お店の人はまた静かに出て行った。
「さぁ、もう顔を上げて。
デザート、いただきましょう」
それでも怒りもせずに、高梨さんは私に明るく声をかけた。
あぁ…優しい人でよかった。
だけど…どうしてこんなに優しくて美形な人がお見合いなんてしてんのかな。
なんて不思議に思いながら、高梨さんにすすめられデザートのシャーベットを口に運ぶ。
ひんやりシャクシャク冷たい食感が口の中に広がっていく。
「うん、美味しい。
どう?相川さん」
「お、美味しい…です…」
「ふふっ、相川さん。
そんなに落ち込まないでいいから。
…実は僕もね、好きな人がいるんだ」
「えっ」
意外な言葉が返ってきたので、私は顔を上げて高梨さんの方を見た。
少しバツが悪そうな表情が、ほんの少し私の罪悪感を軽くした。
「だから、そんなに気負わないで」
「あ…」
本来なら結婚を前提とした会合がお見合いなのに。
私もこの高梨さんも、お互い想い人がいながら親の言いつけでお見合いに応じたんだ。
…こんな偶然があるなんて。
昨日までの私には予想すら出来なかったなぁ。
「なんか…変な感じですね。
お互いが同じ状況でこの席にいるなんて」
だという事は、高梨さんも結婚しようと思ってこのお見合いをしたわけじゃないんだ。
結果いろいろ失礼な事をしちゃったのは私の方なんだけど、高梨さんも最終的にお断りを入れるつもりだったんだと思うと、心は軽くなった。
「本当だ。
ある意味、運命感じるよ」
「あはっ」
そうとわかった途端、私は気が楽になったのもあり、半分溶けかかっている残りのシャーベットを一気に平らげた。
「美味しかったぁ。
ごちそうさま」
「うん。流石良い料理だったね。
じゃあ、そろそろ出ようか」
「はい」
お互い座りっぱなしの腰を上げて席を立つ。
「…ぁ…足痺れちゃ…っ」
急に立ち上がろうとした私は痺れた足でバランスを崩し、身体がヨロヨロした。
「ほら、大丈夫?」
「あ…」
高梨さんは食べ終わったお料理の並ぶ台をぐるりとまわり、ヨロケている私の手を持ち腰を支えてくれた。
足に力が入らなくて思うように動けない。
だからどうしても握られた手を力強く握り返してしまい、身体もまるで高梨さんに抱かれるようにくっついてしまった。
「ご ごめんなさいっ
あのっ、すぐに離れますからっ、あ…っ」
「いいよ、落ち着くまでこうしてて。
無理して転んで怪我でもしたら大変だ」
「…すみません…//」
その間、ビリビリと痺れてる足がだんだんと治っていく。
そんなに長い時間というわけではないけど、でもその間ずっと抱かれるように高梨さんに支えられ、私は何だかドキドキしてしまった。
だって、こんな美形に優しくされるなんて、まるで少女漫画のワンシーンみたいだもん…。
「ええっ、どうしてそれを!?」
お見合いなんだからある程度は相手の情報は得たかもしれないが、恋人がいるなんて事は普通あり得ないし、ましてやそんな情報が先方に行くわけがない。
なのにそんな事をさらっと訊いてきた高梨さんに、私は動揺してしまった。
まさか、相手の心が読める超能力を持ってるなんて事は…!
「相川さんの指輪。
右手だからわかりませんが、もしかしたら…と思ったのです」
「あ…」
お見合いの席に、勇さんからの指輪をつけっぱなしで来ちゃったなんて!
私ってばドンダケ図々しいのよ!
これじゃあいくらなんでも高梨さんをバカにしすぎじゃない!
どうせお断りするんだから…と軽く思っていたこのお見合い。
だけど私のこの軽率な行為が、きっと高梨さんをヒドく傷つけてしまったかもしれない…。
「すみません…
ホント、すみませんでした…」
どう謝っていいかわからず、私はとにかく頭を低く下げて謝った。
すると急に密室になっていた個室の襖が開き、お店の人が何かを運んできた。
「お待たせしました。
食後のデザートです」
小さなお盆に乗せられたのはグラスに入ったオシャレなシャーベット。
それを私と高梨さんの前に置くと、お店の人はまた静かに出て行った。
「さぁ、もう顔を上げて。
デザート、いただきましょう」
それでも怒りもせずに、高梨さんは私に明るく声をかけた。
あぁ…優しい人でよかった。
だけど…どうしてこんなに優しくて美形な人がお見合いなんてしてんのかな。
なんて不思議に思いながら、高梨さんにすすめられデザートのシャーベットを口に運ぶ。
ひんやりシャクシャク冷たい食感が口の中に広がっていく。
「うん、美味しい。
どう?相川さん」
「お、美味しい…です…」
「ふふっ、相川さん。
そんなに落ち込まないでいいから。
…実は僕もね、好きな人がいるんだ」
「えっ」
意外な言葉が返ってきたので、私は顔を上げて高梨さんの方を見た。
少しバツが悪そうな表情が、ほんの少し私の罪悪感を軽くした。
「だから、そんなに気負わないで」
「あ…」
本来なら結婚を前提とした会合がお見合いなのに。
私もこの高梨さんも、お互い想い人がいながら親の言いつけでお見合いに応じたんだ。
…こんな偶然があるなんて。
昨日までの私には予想すら出来なかったなぁ。
「なんか…変な感じですね。
お互いが同じ状況でこの席にいるなんて」
だという事は、高梨さんも結婚しようと思ってこのお見合いをしたわけじゃないんだ。
結果いろいろ失礼な事をしちゃったのは私の方なんだけど、高梨さんも最終的にお断りを入れるつもりだったんだと思うと、心は軽くなった。
「本当だ。
ある意味、運命感じるよ」
「あはっ」
そうとわかった途端、私は気が楽になったのもあり、半分溶けかかっている残りのシャーベットを一気に平らげた。
「美味しかったぁ。
ごちそうさま」
「うん。流石良い料理だったね。
じゃあ、そろそろ出ようか」
「はい」
お互い座りっぱなしの腰を上げて席を立つ。
「…ぁ…足痺れちゃ…っ」
急に立ち上がろうとした私は痺れた足でバランスを崩し、身体がヨロヨロした。
「ほら、大丈夫?」
「あ…」
高梨さんは食べ終わったお料理の並ぶ台をぐるりとまわり、ヨロケている私の手を持ち腰を支えてくれた。
足に力が入らなくて思うように動けない。
だからどうしても握られた手を力強く握り返してしまい、身体もまるで高梨さんに抱かれるようにくっついてしまった。
「ご ごめんなさいっ
あのっ、すぐに離れますからっ、あ…っ」
「いいよ、落ち着くまでこうしてて。
無理して転んで怪我でもしたら大変だ」
「…すみません…//」
その間、ビリビリと痺れてる足がだんだんと治っていく。
そんなに長い時間というわけではないけど、でもその間ずっと抱かれるように高梨さんに支えられ、私は何だかドキドキしてしまった。
だって、こんな美形に優しくされるなんて、まるで少女漫画のワンシーンみたいだもん…。
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