107 / 119
本物の愛、見つけました! 1
しおりを挟む
翌日の10時。
今日も私は慎吾くんの病院に来た。
明日も来るって言っちゃったし、やっぱり事故の後だもん、身体が心配なのもあるの。
「おじゃましま…
…あれ?」
そっと病室のドアを開けて入ると、ベッドの上の慎吾くんは静かに身体を横たえたまま目を閉じていた。
「…寝ちゃってるんだね。
静かにしとこう」
私はバッグを台の上に置かせてもらうと、ベッドの側に置いてあったパイプイスに腰掛けた。
「………………」
特に用事があったわけじゃない。
元気そうな顔が見れたらいいの。
だけど…そう言えば、慎吾くんの寝顔なんて初めて見るなぁ。
今日は包帯も取れ、長い前髪が閉じた目の上を覆ってる。
少しだけ開いた唇からは、スゥスゥと気持ちよさそうな寝息が聞こえてくるの。
…これまで散々私にドキドキさせたクセに、今はこんなにも無防備なんだから笑っちゃう。
「…慎吾くん、私の事を忘れちゃうんだったら、私も慎吾くんの事を忘れたかったよぉ…」
だけど、どんなに忘れようと思っても忘れられない。
これが、現実なんだね。
私はパイプイスから立ち上がると、そっと音を立てないようにしてベッドの側に立った。
「………」
それから目を閉じて眠っている慎吾くんの顔に寄ると、私も目をつむりゆっくりと…唇を重ねた。
(…慎吾くん…!)
やっぱり私は、慎吾くんの事は忘れられない。
今までの事を全て忘れ、母親として接していかなきゃならないなんて、どうしてもできないもの。
だから…もう…
全部、諦める事にしたよ。
「───────…」
そっと唇を離すと、私は台の上に置いていたバッグを持った。
「…さようなら、慎吾くん。
もう会わない方がいいね」
忘れられたという事は、失恋した事と同じ。
慎吾くんへの恋は、記憶と一緒に失ってしまったんだよ。
私は慎吾くんの彼女にもお母さんにもならないから。
だから、盆子原さんとも…
「…ひな子さん?」
「────っ
…盆子原さん!」
突然病室のドアが開いたかと思ったら、そこには盆子原さんが立っていたのだ。
どうして?
仕事があるんなら、こんな時間に来るハズないんだけど…っ。
今日も私は慎吾くんの病院に来た。
明日も来るって言っちゃったし、やっぱり事故の後だもん、身体が心配なのもあるの。
「おじゃましま…
…あれ?」
そっと病室のドアを開けて入ると、ベッドの上の慎吾くんは静かに身体を横たえたまま目を閉じていた。
「…寝ちゃってるんだね。
静かにしとこう」
私はバッグを台の上に置かせてもらうと、ベッドの側に置いてあったパイプイスに腰掛けた。
「………………」
特に用事があったわけじゃない。
元気そうな顔が見れたらいいの。
だけど…そう言えば、慎吾くんの寝顔なんて初めて見るなぁ。
今日は包帯も取れ、長い前髪が閉じた目の上を覆ってる。
少しだけ開いた唇からは、スゥスゥと気持ちよさそうな寝息が聞こえてくるの。
…これまで散々私にドキドキさせたクセに、今はこんなにも無防備なんだから笑っちゃう。
「…慎吾くん、私の事を忘れちゃうんだったら、私も慎吾くんの事を忘れたかったよぉ…」
だけど、どんなに忘れようと思っても忘れられない。
これが、現実なんだね。
私はパイプイスから立ち上がると、そっと音を立てないようにしてベッドの側に立った。
「………」
それから目を閉じて眠っている慎吾くんの顔に寄ると、私も目をつむりゆっくりと…唇を重ねた。
(…慎吾くん…!)
やっぱり私は、慎吾くんの事は忘れられない。
今までの事を全て忘れ、母親として接していかなきゃならないなんて、どうしてもできないもの。
だから…もう…
全部、諦める事にしたよ。
「───────…」
そっと唇を離すと、私は台の上に置いていたバッグを持った。
「…さようなら、慎吾くん。
もう会わない方がいいね」
忘れられたという事は、失恋した事と同じ。
慎吾くんへの恋は、記憶と一緒に失ってしまったんだよ。
私は慎吾くんの彼女にもお母さんにもならないから。
だから、盆子原さんとも…
「…ひな子さん?」
「────っ
…盆子原さん!」
突然病室のドアが開いたかと思ったら、そこには盆子原さんが立っていたのだ。
どうして?
仕事があるんなら、こんな時間に来るハズないんだけど…っ。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
ナイショのお見合いは、甘くて危険な恋の駆け引き!
むらさ樹
恋愛
娘を嫁に出そうと、お見合い写真を送り続けている母
それに対し、心に決めた男性と同棲中の娘
「最後にこのお見合いをしてダメだったら、お母さんもう諦めるから」
「本当!?」
と、いう事情で
恋人には内緒でお見合いに応じた娘
相川 優
ところが、お見合い相手の男性はなんと年商3億の社長さん
「私の事なんて早く捨てちゃって下さい!」
「捨てるだなんて、まさか。
こんなかわいい子猫ちゃん、誰にもあげないよ」
彼の甘く優しい言動と、優への強引な愛に、
なかなか縁を切る事ができず…
ふたりの馴れ初めは、
“3億円の強盗犯と人質の私!?”(と、“その後のふたり♡”)
を、どうぞご覧ください(^^)
虐げられ聖女(男)なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました【本編完結】(異世界恋愛オメガバース)
美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!
私が死ねば楽になれるのでしょう?~愛妻家の後悔~
希猫 ゆうみ
恋愛
伯爵令嬢オリヴィアは伯爵令息ダーフィトと婚約中。
しかし結婚準備中オリヴィアは熱病に罹り冷酷にも婚約破棄されてしまう。
それを知った幼馴染の伯爵令息リカードがオリヴィアへの愛を伝えるが…
【 ⚠ 】
・前半は夫婦の闘病記です。合わない方は自衛のほどお願いいたします。
・架空の猛毒です。作中の症状は抗生物質の発明以前に猛威を奮った複数の症例を参考にしています。尚、R15はこの為です。
【完結】やさしい嘘のその先に
鷹槻れん
恋愛
妊娠初期でつわり真っ只中の永田美千花(ながたみちか・24歳)は、街で偶然夫の律顕(りつあき・28歳)が、会社の元先輩で律顕の同期の女性・西園稀更(にしぞのきさら・28歳)と仲睦まじくデートしている姿を見かけてしまい。
妊娠してから律顕に冷たくあたっていた自覚があった美千花は、自分に優しく接してくれる律顕に真相を問う事ができなくて、一人悶々と悩みを抱えてしまう。
※30,000字程度で完結します。
(執筆期間:2022/05/03〜05/24)
✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼
2022/05/30、エタニティブックスにて一位、本当に有難うございます!
✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼
---------------------
○表紙絵は市瀬雪さまに依頼しました。
(作品シェア以外での無断転載など固くお断りします)
○雪さま
(Twitter)https://twitter.com/yukiyukisnow7?s=21
(pixiv)https://www.pixiv.net/users/2362274
---------------------
王太子殿下の執着が怖いので、とりあえず寝ます。【完結】
霙アルカ。
恋愛
王太子殿下がところ構わず愛を囁いてくるので困ってます。
辞めてと言っても辞めてくれないので、とりあえず寝ます。
王太子アスランは愛しいルディリアナに執着し、彼女を部屋に閉じ込めるが、アスランには他の女がいて、ルディリアナの心は壊れていく。
8月4日
完結しました。
夫の不貞現場を目撃してしまいました
秋月乃衣
恋愛
伯爵夫人ミレーユは、夫との間に子供が授からないまま、閨を共にしなくなって一年。
何故か夫から閨を拒否されてしまっているが、理由が分からない。
そんな時に夜会中の庭園で、夫と未亡人のマデリーンが、情事に耽っている場面を目撃してしまう。
なろう様でも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる