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「すいません、お願いします」
「あっ、はぁい!」
久保店長と小山さんのやりとりに気を取られてお客さんが来ていた事に気付かなかった私は、慌ててレジに着いた。
「すみませんでしたっ、いらっしゃいませ。
…あ、こんばんはっ//」
「こんばんは」
惣菜のパックをいくつか持ってレジに来ていたお客さんは、いつも来てくれる常連さんだった。
いや、毎日来ている常連さんは他にもいるんだけどね。
ただ惣菜を買っていく人もいれば、中にはつい一言二言お話をしてしまうお客さんもいるわけだ。
「お疲れ様です。
お仕事、今日も遅くまであったんですね」
カウンターに置かれた惣菜パックのバーコードを、話しながら1つ1つリーダーに通す。
「えぇ、毎日残業三昧ですよ。
だから仕事も終えて晩飯をゆっくり選ぶこの時間が、一番ホッとします」
そう返したこのお客さんは、中年の名に片足突っ込みかけたスーツ姿の会社員風の男性。
毎日仕事を終えては、こうやってうちで惣菜を買って帰るのが日課みたいだけど。
いい年して毎日おかずを買うって事は、奥さんもいない独り身なのかな。
…なんて、心の中で勝手な事を思っちゃったりして。
「はい、お会計1940円です」
「じゃあ、悪いけど1万円から」
「大丈夫ですよ、お預かり致します。
1万円入りまーす」
会社員風の男性から1万円札を受け取ると、レジを操作して今度はお釣りを返す。
「ありがとうございます。
お気を付けてお帰り下さいね」
「ありがとう。
それじゃあね」
笑顔でペコリとお辞儀をしながら5つの惣菜の入ったレジ袋を渡すと、会社員風の男性はニコリと私に笑顔を返しながら帰って行った。
1人で食べるなら2、3つくらいでお腹いっぱいになりそうな気もするんだけど、5つも買うって事はやっぱり奥さんがいるのかなぁ。
或いは、食いしん坊のお客さんだったりして?
…なんて、お客さんの買って行ったものを見てはあれこれ余計な詮索してしまうのは、この仕事をしている私たちの悲しい性。
名前も素性も知らない人なのに、「あれはきっと孫に持って行くものね」だとか、他のおばちゃんスタッフもよく影で言ってるものなのだ。
「またあのお客さんね。
早く結婚して嫁さんもらえばいいのに」
今のお客さんが帰った後、早速そんな事を言っては私の所に来たのは小山さんだ。
おばちゃんってのは本当に他人の事に首を突っ込むのが好きな種族で、特にこの小山さんを筆頭にみんなそういう話で盛り上がっているのが常。
「でも、いつもたくさん買って行ってくれるんですよね。
誰か一緒に食べる人とかいるんじゃないでしょうか」
だけどそんな私も、その話には乗って一緒に話してしまう。
いくら見た目が未成年でも、やっぱり年は確実に取ってるなぁと自覚する。
「だとしたら、あの年なんだからきっと、台所に立てないような年の親と同居してるんでしょ」
「あぁ、なるほどー」
と、つい相づちを打ってしまう私。
当のお客さんからすれば、全く余計なお世話なんだけどね。
だけどこれが、案外楽しかったりもするものなのだ。
「こら!小山にヒナ坊!
いつまでちゃべくっとるんか!客引いたら中に入れ!!」
「ひゃあっ」
いつまでも話し込んでいる私たちに痺れを切らしたらしく、久保店長の怒鳴り声に私と小山さんは慌てて厨房の方にと戻った。
だって女は、おしゃべりが好きなんだもんねー!
……だけどさっきのお客さん。
人も良さそうだし、ホントに早く奥さん出来たらいいのにね。
…って!
また余計なお世話か。
「あっ、はぁい!」
久保店長と小山さんのやりとりに気を取られてお客さんが来ていた事に気付かなかった私は、慌ててレジに着いた。
「すみませんでしたっ、いらっしゃいませ。
…あ、こんばんはっ//」
「こんばんは」
惣菜のパックをいくつか持ってレジに来ていたお客さんは、いつも来てくれる常連さんだった。
いや、毎日来ている常連さんは他にもいるんだけどね。
ただ惣菜を買っていく人もいれば、中にはつい一言二言お話をしてしまうお客さんもいるわけだ。
「お疲れ様です。
お仕事、今日も遅くまであったんですね」
カウンターに置かれた惣菜パックのバーコードを、話しながら1つ1つリーダーに通す。
「えぇ、毎日残業三昧ですよ。
だから仕事も終えて晩飯をゆっくり選ぶこの時間が、一番ホッとします」
そう返したこのお客さんは、中年の名に片足突っ込みかけたスーツ姿の会社員風の男性。
毎日仕事を終えては、こうやってうちで惣菜を買って帰るのが日課みたいだけど。
いい年して毎日おかずを買うって事は、奥さんもいない独り身なのかな。
…なんて、心の中で勝手な事を思っちゃったりして。
「はい、お会計1940円です」
「じゃあ、悪いけど1万円から」
「大丈夫ですよ、お預かり致します。
1万円入りまーす」
会社員風の男性から1万円札を受け取ると、レジを操作して今度はお釣りを返す。
「ありがとうございます。
お気を付けてお帰り下さいね」
「ありがとう。
それじゃあね」
笑顔でペコリとお辞儀をしながら5つの惣菜の入ったレジ袋を渡すと、会社員風の男性はニコリと私に笑顔を返しながら帰って行った。
1人で食べるなら2、3つくらいでお腹いっぱいになりそうな気もするんだけど、5つも買うって事はやっぱり奥さんがいるのかなぁ。
或いは、食いしん坊のお客さんだったりして?
…なんて、お客さんの買って行ったものを見てはあれこれ余計な詮索してしまうのは、この仕事をしている私たちの悲しい性。
名前も素性も知らない人なのに、「あれはきっと孫に持って行くものね」だとか、他のおばちゃんスタッフもよく影で言ってるものなのだ。
「またあのお客さんね。
早く結婚して嫁さんもらえばいいのに」
今のお客さんが帰った後、早速そんな事を言っては私の所に来たのは小山さんだ。
おばちゃんってのは本当に他人の事に首を突っ込むのが好きな種族で、特にこの小山さんを筆頭にみんなそういう話で盛り上がっているのが常。
「でも、いつもたくさん買って行ってくれるんですよね。
誰か一緒に食べる人とかいるんじゃないでしょうか」
だけどそんな私も、その話には乗って一緒に話してしまう。
いくら見た目が未成年でも、やっぱり年は確実に取ってるなぁと自覚する。
「だとしたら、あの年なんだからきっと、台所に立てないような年の親と同居してるんでしょ」
「あぁ、なるほどー」
と、つい相づちを打ってしまう私。
当のお客さんからすれば、全く余計なお世話なんだけどね。
だけどこれが、案外楽しかったりもするものなのだ。
「こら!小山にヒナ坊!
いつまでちゃべくっとるんか!客引いたら中に入れ!!」
「ひゃあっ」
いつまでも話し込んでいる私たちに痺れを切らしたらしく、久保店長の怒鳴り声に私と小山さんは慌てて厨房の方にと戻った。
だって女は、おしゃべりが好きなんだもんねー!
……だけどさっきのお客さん。
人も良さそうだし、ホントに早く奥さん出来たらいいのにね。
…って!
また余計なお世話か。
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