デ キ ちゃ っ た !?

むらさ樹

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普通にカップルで来る客もいれば、ファミレスってだけあってファミリーで来る客もいる。

もちろんお一人様もいたりするんだが、意外と多かったのが乳児から幼児くらいのちっこい子ども。


さっきの乳児みたいに泣き喚いちゃあ、食事中の親のジャマしたり。
靴のままイスに立ち上がっては、テーブルにまで上がろうとしたり。
手で食べる ジュースはこぼす。

しまいにはキレて怒鳴りだす親もいたり。


…ちっこい子どものクセに、あの手のかかりよう。
な なんて大変なんだ!



「陸」

「えっ
あ…なんだ、木原か」

ちょっと手が空いてる間に、ついそんな客たちを見ていたから木原の気配に気が付かなかった。


夜も20時になると、客は席にいても注文はそんなに激しく来ないので、ちょっとヒマになるのだ。


「かわいいお客さん、来てるぞ。
出てやるんだろ?」

「え? …あぁ」


木原が指差す方向には、キョロキョロと店内を見渡す由香の姿があった。


店に入ってすぐ目の前にあるレジの所にいれば、店員が駆けつけて店内に案内するのが普通。
由香は、オレが出迎えるのを待ってるようだった。

…最近ずっと、バイト先に顔出すよな。



「いらっしゃい、由香」

「…あ、陸っ」


オレを探す由香の前まで行くと、クルリと振り返った由香はニパッと明るい笑みを見せた。


「陸、今日お母さんまた夜勤なの!
お泊まり道具、持って来ちゃった」

「あ…そうなんだ。
でもオレ、仕事あがるの後1時間あるぞ?」

「うん、大丈夫。
ドリンクバーで時間潰すから。
家で待ってるより、ここで陸の仕事姿見て待ってる方がいいんだもん」


やけに生き生きした顔になってるな、由香の奴。

ま、いっか。
久しぶりの由香の泊まりだし。

てゆーか、これからゆっくり説得していかなきゃだもんな。






やがて時間は21時になり、オレはタイムカードをついて仕事をあがった。

テキパキっと支度をすると店内に回り込み、由香の待つ席へと行った。


「お待たせ、由香」

「うん」

席を立った由香は会計を済ませると、一緒に店を出た。


その際、レジで気持ち悪いくらいの笑みを見せながら手を振る木原が見えた。

どーせエロい想像してんだろ。







「…寒っ
外はやっぱ冷えるな」

「うん。
だから防寒具はバッチリだよ!」


駐輪場で荷物からマフラーやらフェザージャケットを取り出して着始めた由香。

いくら夜でも、もう真冬も過ぎた3月だってのに、どこの雪国だよ!


「早く行こ。
あったかいお風呂、入りたい!」

「…あぁ」


暖を取りたいって意味だろうけど、由香のお風呂って言葉にドキンとした。


…こんな時でも、男の本能が出そうになるから不思議だな。

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