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『また帰らないつもりなの!?
普段うちには帰らないんだから、春休みくらい一度は帰って来なさいよ!
あんた、自分が相川家の長男だっていう自覚ないの!?』
予定はどうかって訊いてきたから答えただけなのに、この言われよう。
だいたい母さんは二言目には、やれ“相川家の長男”だとか“跡取り”だとか口癖のように言ってくる。
今時跡取りとか、国を取る殿様じゃないっての!
「わかったわかった!
はいはい、オレは長男ですよ!
でもこっちも生活かかってるから、バイトしなきゃ生きていけねーの!」
中絶費用に保険証使えないだろうから、多めに用意しとかなきゃな。
払えなきゃオレの方が困るわけだし。
それと、これに関しては…「よそ様の女の子を妊娠させたなんて!」って母さんに言われるのがオチだし、まぁわざわざ言う必要もないだろ。
「ま、とにかく春休みはバイトの予定だから。
また機会があったら帰るよ」
と母さんに適当に言うと、オレはほぼ無理やり電話を切った。
まだ何か言いたそうな母さんだったけど、いちいち付き合ってたら陽が暮れるっての。
「……………………」
…相川家の長男ねぇ。
いつか由香も、あんな母さんの嫁になるのかと思ったらかわいそうな気もしてくるな…。
「って!
まだ結婚なんてするわけないんだって!」
ピッと閉じたケータイをテーブルに置くと、「はぁ…」とため息をつきながら、布団の上に仰向けに倒れた。
まさかオレがこんな事になってるなんて、母さんも思ってないだろうなぁ。
由香は、親に言ったりしたのかな。
オレ、絶対に由香のおばさんに怒られるよな…。
「はぁぁぁぁ…」
もう一度盛大なため息をつくと、オレは午前中のバイトが始まるまでしばらく布団の上にいた。
「はよーございまーす」
__朝の8時
最初のバイト、近くのコンビニに入った。
夜間勤務のバイトの兄ちゃんと交代すると、オレは午前中までを担当する。
それが終わると次は弁当屋で夕方までを。
更にそこが終わると、今度は夕飯のピークから夜の21時までがいつものファミレスでのバイトとなる。
「いらっしゃいませー。
お客様何名様ですか?」
必然的に客商売ばかりなバイトなんだけど。
普段気にも留めなかった事なんだが、こうして接客していると、案外乳児連れの夫婦とかいたりするんだよな。
「3名様ー。
おタバコは…あぁ禁煙席ですね?」
ベビーカーに乗せた小さな乳児はスヤスヤ眠っている…
かと思いきや。
何かのスイッチでも入ったかのように、急にベビーカーの上で泣き喚きだした乳児。
それを母親だろう女の人が抱え上げ、泣く乳児をあやす。
「…では禁煙席、こちらドゾー」
なかなか泣き止まない乳児を抱えた母親と、そのダンナ?を奥の席へと案内した。
てゆーか、…そんな状態で飯食うってのか?
やれやれ、大変なこったぞ。
…なんて横目に見ながら、思ってた。
普段うちには帰らないんだから、春休みくらい一度は帰って来なさいよ!
あんた、自分が相川家の長男だっていう自覚ないの!?』
予定はどうかって訊いてきたから答えただけなのに、この言われよう。
だいたい母さんは二言目には、やれ“相川家の長男”だとか“跡取り”だとか口癖のように言ってくる。
今時跡取りとか、国を取る殿様じゃないっての!
「わかったわかった!
はいはい、オレは長男ですよ!
でもこっちも生活かかってるから、バイトしなきゃ生きていけねーの!」
中絶費用に保険証使えないだろうから、多めに用意しとかなきゃな。
払えなきゃオレの方が困るわけだし。
それと、これに関しては…「よそ様の女の子を妊娠させたなんて!」って母さんに言われるのがオチだし、まぁわざわざ言う必要もないだろ。
「ま、とにかく春休みはバイトの予定だから。
また機会があったら帰るよ」
と母さんに適当に言うと、オレはほぼ無理やり電話を切った。
まだ何か言いたそうな母さんだったけど、いちいち付き合ってたら陽が暮れるっての。
「……………………」
…相川家の長男ねぇ。
いつか由香も、あんな母さんの嫁になるのかと思ったらかわいそうな気もしてくるな…。
「って!
まだ結婚なんてするわけないんだって!」
ピッと閉じたケータイをテーブルに置くと、「はぁ…」とため息をつきながら、布団の上に仰向けに倒れた。
まさかオレがこんな事になってるなんて、母さんも思ってないだろうなぁ。
由香は、親に言ったりしたのかな。
オレ、絶対に由香のおばさんに怒られるよな…。
「はぁぁぁぁ…」
もう一度盛大なため息をつくと、オレは午前中のバイトが始まるまでしばらく布団の上にいた。
「はよーございまーす」
__朝の8時
最初のバイト、近くのコンビニに入った。
夜間勤務のバイトの兄ちゃんと交代すると、オレは午前中までを担当する。
それが終わると次は弁当屋で夕方までを。
更にそこが終わると、今度は夕飯のピークから夜の21時までがいつものファミレスでのバイトとなる。
「いらっしゃいませー。
お客様何名様ですか?」
必然的に客商売ばかりなバイトなんだけど。
普段気にも留めなかった事なんだが、こうして接客していると、案外乳児連れの夫婦とかいたりするんだよな。
「3名様ー。
おタバコは…あぁ禁煙席ですね?」
ベビーカーに乗せた小さな乳児はスヤスヤ眠っている…
かと思いきや。
何かのスイッチでも入ったかのように、急にベビーカーの上で泣き喚きだした乳児。
それを母親だろう女の人が抱え上げ、泣く乳児をあやす。
「…では禁煙席、こちらドゾー」
なかなか泣き止まない乳児を抱えた母親と、そのダンナ?を奥の席へと案内した。
てゆーか、…そんな状態で飯食うってのか?
やれやれ、大変なこったぞ。
…なんて横目に見ながら、思ってた。
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