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②
しおりを挟むものの数分だったろうか、ずいぶん長い時間に感じてしまったけれど、診察室から由香が戻ってきた。
結局、どっちだったんだ!?
早く結果を聞きたかったんだけど、さすがにこんな所でがめつくわけにもいかないのでガマンだ。
由香はゆっくり歩いてもといたオレの隣に座ると、黙ったままチラリとオレの顔を見た。
黙ったままじゃわからねぇじゃん!と思って由香の表情をうかがったけど、診察室に入る前の不安げな面持ちとかはなくなっている気がした。
もしかして…デキてなかったとか?
「有富さん」
「はい」
次に受付に呼ばれた由香は、診察代を支払った。
…あ、オレが出すんだったな!
慌てて腰を上げて由香の側に駆け寄ると、領収書を受け取った由香が「終わったから。行こう」と言って待合室から出た。
「ま、待てよ、由香」
結果は?
結果はどうだったんだよ!
一緒に病院を出て、駐輪場まで歩いた。
そこでようやくガマンもしきれなくなったオレは、とうとう由香の腕を掴んで訊いたんだ。
「なぁ、どうだったんだよ。
やっぱり、デキてた?
それとも…」
「陸は、どっちがよかった?」
どっちがよかったって!
今訊いてるのはオレの方だろ?
それに、そんなの言うまでもないだろうに。
「だって今、学生のオレたちに子供ができても…」
「じゃあ結婚したら、いいって事?」
「それなら別に、問題は…」
なんだ?
由香は何を期待してそんな事を言ってくるんだ?
結婚だなんて、どうせまだ当分先の話なのに…
「___赤ちゃん、できてたって。あたしと陸の赤ちゃん。
今3ヵ月に入ったとこみたい」
「っ!!」
わかっていた事ではあったんだけれど。
でも、もうどうしようもなく間違いないという現実を突きつけられたオレは、一瞬で頭の中が真っ白になったんだ。
クラクラと、めまいすら起こっていた。
ギュッと目をつむり、これほどまでに自分を恨んだ事はないくらい自分を責めた。
「でね、あたしたちって未婚な上に、まだ学生だから、先生にどうするのか2人でよく考えなさいって言われたの」
「だろうな…」
さすが専門医だけあって、冷静で且つ的確な指示だ。
きっとオレたちみたいなカップルが同じような事をして駆け込んだりとか、過去に何度もあったんだろう。
そしてその度に、一番最悪なパターンの結果が待ってるんだよ。
「あたし…まだ結婚とか考えてなかったし、ましてやお母さんになるなんてありえないって思ってた。
だってまだ働いてもない学生だもん」
それはオレだって全く同じ考えだよ。
まだ19なのに、結婚とか考えるわけがない。
というか、オレが結婚とかイメージすらなかったさ。
「だから…かわいそうだけど、仕方ないって思ってた。
あたしは彼氏に見捨てられたからおろすってわけじゃないけど、でも結果としては同じ事になるんだって、そう思ったの」
エッチが子作りの過程なのはオレだって知ってたけどさ。
でもだからって、普通にカップルならみんなしてんの当たり前じゃん?
好きな女の子と気持ちイイ事するのって、これ最高の愛情表現でもあると思うんだよね。
だから、エッチ自体は罪の意識なんてこれっぽっちもなかったさ。
「…でもね、さっき診察室であたしもエコー見てきたの。
すっごくちっちゃいんだけどね、確かにいたの。生きてたの」
そりゃあデキたんなら、いて当然なんだけどな。
「…スゴく、かわいかった。
まだ全然人の形にもなってないのに、スゴくかわいかったよ」
…よせよ。
そんな事言ったら、情が移るだろ?
余計におろしにくくなるじゃないか!
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