デ キ ちゃ っ た !?

むらさ樹

文字の大きさ
上 下
16 / 58

しおりを挟む




ものの数分だったろうか、ずいぶん長い時間に感じてしまったけれど、診察室から由香が戻ってきた。

結局、どっちだったんだ!?

早く結果を聞きたかったんだけど、さすがにこんな所でがめつくわけにもいかないのでガマンだ。


由香はゆっくり歩いてもといたオレの隣に座ると、黙ったままチラリとオレの顔を見た。


黙ったままじゃわからねぇじゃん!と思って由香の表情をうかがったけど、診察室に入る前の不安げな面持ちとかはなくなっている気がした。


もしかして…デキてなかったとか?



「有富さん」

「はい」

次に受付に呼ばれた由香は、診察代を支払った。
…あ、オレが出すんだったな!


慌てて腰を上げて由香の側に駆け寄ると、領収書を受け取った由香が「終わったから。行こう」と言って待合室から出た。


「ま、待てよ、由香」


結果は?
結果はどうだったんだよ!




一緒に病院を出て、駐輪場まで歩いた。

そこでようやくガマンもしきれなくなったオレは、とうとう由香の腕を掴んで訊いたんだ。


「なぁ、どうだったんだよ。
やっぱり、デキてた?
それとも…」

「陸は、どっちがよかった?」


どっちがよかったって!
今訊いてるのはオレの方だろ?

それに、そんなの言うまでもないだろうに。


「だって今、学生のオレたちに子供ができても…」

「じゃあ結婚したら、いいって事?」

「それなら別に、問題は…」


なんだ?
由香は何を期待してそんな事を言ってくるんだ?

結婚だなんて、どうせまだ当分先の話なのに…



「___赤ちゃん、できてたって。あたしと陸の赤ちゃん。
今3ヵ月に入ったとこみたい」

「っ!!」


わかっていた事ではあったんだけれど。

でも、もうどうしようもなく間違いないという現実を突きつけられたオレは、一瞬で頭の中が真っ白になったんだ。

クラクラと、めまいすら起こっていた。

ギュッと目をつむり、これほどまでに自分を恨んだ事はないくらい自分を責めた。



「でね、あたしたちって未婚な上に、まだ学生だから、先生にどうするのか2人でよく考えなさいって言われたの」

「だろうな…」

さすが専門医だけあって、冷静で且つ的確な指示だ。

きっとオレたちみたいなカップルが同じような事をして駆け込んだりとか、過去に何度もあったんだろう。


そしてその度に、一番最悪なパターンの結果が待ってるんだよ。


「あたし…まだ結婚とか考えてなかったし、ましてやお母さんになるなんてありえないって思ってた。
だってまだ働いてもない学生だもん」


それはオレだって全く同じ考えだよ。
まだ19なのに、結婚とか考えるわけがない。

というか、オレが結婚とかイメージすらなかったさ。



「だから…かわいそうだけど、仕方ないって思ってた。
あたしは彼氏に見捨てられたからおろすってわけじゃないけど、でも結果としては同じ事になるんだって、そう思ったの」


エッチが子作りの過程なのはオレだって知ってたけどさ。
でもだからって、普通にカップルならみんなしてんの当たり前じゃん?

好きな女の子と気持ちイイ事するのって、これ最高の愛情表現でもあると思うんだよね。


だから、エッチ自体は罪の意識なんてこれっぽっちもなかったさ。



「…でもね、さっき診察室であたしもエコー見てきたの。
すっごくちっちゃいんだけどね、確かにいたの。生きてたの」


そりゃあデキたんなら、いて当然なんだけどな。


「…スゴく、かわいかった。
まだ全然人の形にもなってないのに、スゴくかわいかったよ」



…よせよ。
そんな事言ったら、情が移るだろ?
余計におろしにくくなるじゃないか!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妻がエロくて死にそうです

菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。 美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。 こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。 それは…… 限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常

お父様の相手をしなさいよ・・・亡き夫の姉の指示を受け入れる私が学ぶしきたりとは・・・

マッキーの世界
大衆娯楽
「あなた、この家にいたいなら、お父様の相手をしてみなさいよ」 義姉にそう言われてしまい、困っている。 「義父と寝るだなんて、そんなことは

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

連れ子が中学生に成長して胸が膨らむ・・・1人での快感にも目覚て恥ずかしそうにベッドの上で寝る

マッキーの世界
大衆娯楽
連れ子が成長し、中学生になった。 思春期ということもあり、反抗的な態度をとられる。 だが、そんな反抗的な表情も妙に俺の心を捉えて離さない。 「ああ、抱きたい・・・」

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

そんなふうに見つめないで…デッサンのモデルになると義父はハイエナのように吸い付く。全身が熱くなる嫁の私。

マッキーの世界
大衆娯楽
義父の趣味は絵を描くこと。 自然を描いたり、人物像を描くことが好き。 「舞さん。一つ頼みがあるんだがね」と嫁の私に声をかけてきた。 「はい、なんでしょうか?」 「デッサンをしたいんだが、モデルになってくれないか?」 「え?私がですか?」 「ああ、

修行のため、女装して高校に通っています

らいち
青春
沢村由紀也の家は大衆演劇を営んでいて、由紀也はそこの看板女形だ。 人気もそこそこあるし、由紀也自身も自分の女形の出来にはある程度自信を持っていたのだが……。 団長である父親は、由紀也の女形の出来がどうしても気に入らなかったらしく、とんでもない要求を由紀也によこす。 それは修行のために、女装して高校に通えという事だった。 女装した美少年が美少女に変身したために起こる、楽しくてちょっぴり迷惑な物語♪(ちゃんと修行もしています) ※以前他サイトに投稿していた作品です。現在は下げており、タイトルも変えています。

思春期ではすまない変化

こしょ
青春
TS女体化現代青春です。恋愛要素はありません。 自分の身体が一気に別人、モデルかというような美女になってしまった中学生男子が、どうやれば元のような中学男子的生活を送り自分を守ることができるのだろうかっていう話です。 落ちがあっさりすぎるとかお褒めの言葉とかあったら教えて下さい嬉しいのですっごく 初めて挑戦してみます。pixivやカクヨムなどにも投稿しています。

処理中です...