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➂
しおりを挟むチュンチュンとスズメの鳴く声と、遮光性のないカーテンから差し込む陽の光で朝に気付いた。
「……………………」
布団の中、オレは寝不足の目を擦りながら隣に寝る由香の方に向かって寝返った。
昨夜の衝撃的な由香の告白に、結局オレはロクに寝る事が出来なかった。
浅い睡眠と覚醒の繰り返しで、起きてる記憶もなければ寝てる感覚もないっていう奴だ。
人生初の危機に、とてもじゃないがゆっくりグッスリなんて眠れるハズもない。
なのに…
「…すぅ…すぅ……」
まるで昨夜の事なんて何もなかったかのように、穏やかな表情で眠る由香の寝顔。
なんで由香は焦ったりしないんだ?
これからどうするとか、周りになんて言われるとか。
そんな事、何も思ってないのか?
…もしかして、妊娠の話は由香のデタラメなんじゃないのだろうか。
昨夜は自分の事を好きかって訊いてきた。
オレが普段由香に好きとか言わないのもあって、まともなデートもしてやってないから、それでオレを試したんじゃないか?
でないと、普通こんな時ってさ、男よりは女の方が焦ったりするだろ?
オレは自分の身体に何の異変もないけど、由香はお腹ん中に…いるわけなんだから。
「……ん…」
覗き込む由香の顔が歪み、ゆっくりと目を開けた。
「あ…陸…」
「…おはよ、由香」
寝ぼけ眼の由香に、オレは一応あいさつした。
すると由香はなぜかオレの首に腕を回し、ギュッと抱きついた。
「よかったぁ。
陸がいる…」
「何だよ。当たり前だろ」
オレは由香の身体を抱きしめ返してやった。
布団の中でお互いをギュッと抱きしめ合った後、ゆっくりと腕を解いて顔を合わせた。
「……陸…キス、しよ」
「あ、うん」
珍しく由香の方から手を伸ばし、オレの頬を持つと引き寄せるようにオレたちは唇を重ねた。
「ん………」
あ、やべ。
起きてすぐのキスに相変わらずその気になったオレは、唇を合わせたまま由香の服をまくり上げた。
ブラも付けていない由香の身体は簡単に素肌を晒し、オレは手で胸を揉みながら、だんだんと身体をうずかせる。
「ぁ……んんつ」
すっかりソノ気モードになったオレは、既に寝不足の原因も忘れてしまい、由香に夢中になってきた。
そういや昨夜はシてないんだった。
側に由香がいるのにしないなんて、ガマンだってできなくなってくるわけだ。
「…陸………っ」
すっかりオレのアレもギンギンになり、いざ由香の中に入れようとした時だ。
由香の顔が、クシャッと歪んだ。
「…由香…?」
上になるオレの身体を、由香は両腕でギュッと抱きしめた。
「陸……っ
どこにも、行かないでねっ?
ずっと、あたしと一緒にいてね…っ!」
「わかってるよ。
何で今更…」
「不安で、たまらないの」
――――――っ!!
目尻ににじんできた涙と一緒に、由香の弱音が口から出た。
「こんな事初めてで、まさか今あたしが妊娠するなんて思わなくて…っ」
それは、昨日のオレが思った事だ。
もちろん、原因があるから結果があるわけで。
だけど、由香との関係は今に始まったわけじゃない。
「陸…あたしの事嫌いになって、あたしの側からいなくなっちゃうんじゃないかと思って不安だったの。
あたしの友達…妊娠がキッカケで彼氏に捨てられたって聞いたから…っ」
「…………………っ」
ドキリと、した。
この胸の音が由香に聞こえやしなかったかと、ヒヤリとさえしたのだから。
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