デ キ ちゃ っ た !?

デキたって…ナニがデキたんだ！？①

「デキたって…な ナニが…っ！？」


１年も早く就職先がデキた？

春休みの課題がデキた？

まさか、好きな人でもデキた？

え、ええとっ、
由香に他にデキる事って、何が…………


「あたしと陸の赤ちゃん…。
あたし、妊娠しちゃったかもしれないの…」

「……………っ！！？」


由香の放った言葉があまりにも衝撃的すぎて、オレは口をパクパクとしたまま何も返せなかった。


由香が、妊娠？

由香が、オレと由香の子供を妊………



＿＿グラリ

一瞬めまいがしたかと思ったら、知らない間にオレは尻餅をついていた。


「ちょ ちょっと待て、由香。
落ち着いて、話そう！」

なんて言っていても、一番落ち着いてないのはオレの方だった。

まずは、オレの方が落ち着かないと…っ！



床に座り込んだオレに合わせて、由香もオレの向かいに座った。


由香がオレのアパートに来る事は何度もあったけど、かつてこれほどまでに微妙な空気になった事があっただろうか。


いつも見る由香の顔さえも、まるで違う人を見てるような違和感すらも感じてしまった。


「え…と…その、由香？」

「うん」

まるでオレの次の言葉を待つように、由香はジッとオレの顔を見て返事をした。


「えー、あのー…。
由香が妊娠？したってのは…確実なわけ？」


そうだよ。まずそこだ。
動揺する前に、まずそこをちゃんとしておかないとな。

何を以て妊娠って言ってるのか。
或いは、オレの反応を見る為に言ってるだけかもしれないだろ？


そうだそうだ。
うん、オレもだんだんと冷静になってきたぞ。


「…あのね？
生理が…ずっと来なくてね？」


あー、女の子ってのはアレだ。
体調不良起こしたり、ちょっとダイエットなんかをすると生理不順とかなるんだよ。

きっと由香もそんな風に…


「２週間も遅れてて…それで気になってね？
ドラッグストアでアレ買って、あたし…調べてみたの」


２週間？
それがどのくらいの数字なのかはオレにはわからない。

ダイエットによる生理不順って…どのくらいの遅れを言うんだ？

それにドラッグストアでアレって…コンドーム以外にアレって呼ぶもの何があったっけ…



「……………で？」

いつの間にかバクバクと鳴っていた心臓に、タラリと流れた冷や汗。

口の中がカラカラになりながらも、オレは由香の次の言葉を待った。


いや、待ったと言いながら、ずっと言わないでほしいと思っていたのだが。


「妊娠の陽性反応が…出たの」


この瞬間…まるで全身の血液が引いたように、オレの顔はきっと真っ青になっていただろう。