デ キ ちゃ っ た !?

むらさ樹

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学校が終わると、オレは毎日のようにバイトがあるから、アパートには戻らずにバイト先まで直行する。

特に今日は…



「!」

教室を出ようとする時、由香がジッとオレの方を見ていたのに気付いた。


「どうしたんだ?」

「えっ、あ…ううん」


やっぱりいつもと様子が違う由香に、違和感を感じる。

隠し事?
まさか、別れたい…とかじゃないよな。



「何だよ。
何か言いたい事があるんじゃないのか?」

「ん…あの ね…」

「あっ、ゴメン!
今日のバイト1時間早く行かなきゃなんだよ!
話、また聞くからっ」


バイト先のおばちゃんが、今日は1時間早くあがりたいからって事で、オレが1時間早く入るようになったんだった。


飲食店ってのは仕込みが案外忙しいから、アイドルタイムも楽じゃないんだよなぁ。



「9時にはあがるから、それでよかったら店来て待っててよ。
じゃな、由香」

「あっ、陸っ」


オレはカバンを抱えると、急いで教室を出た。





今日も昨日と同じファミレスでのバイト。

学校が休みの日や、もうすぐ始まる春休みみたいなロングバケーションになると、更にコンビニや弁当屋のバイトなんかも入れている。


料理系ばっかのバイトなら、まかないも出たりするので食費も浮くからラッキーこの上ないよな。

オレってば頭イイ!



「どもっ、お疲れでーす」

「あぁ、相川君!
無理言ってごめんねぇ」


バイト先に着くと、すぐにパートのおばちゃんがオレを出迎えた。


「娘が赤ちゃん産んだからねぇ、なるべく早く帰りたかったのよぉ。
他に代わってくれる人もいなかったから、相川君には無理させちゃったわねぇ」


「オレなら大丈夫ですよ。
どーぞあがって下さい」

「ありがとう、相川君!」


そうして控え室で着替えると、オレはパートのおばちゃんと入れ替わるように仕事に入った。


冬のような日暮れも早い時期は、夕方も17時を過ぎると来客数が増えて忙しくなる。




「禁煙席ですか?
じゃあこちらへドゾーっ」


人でごった返すピークは案外20時半くらいまでで、仕事があがる21時頃にはウソみたいに客足が引く。



テーブル席もポツリポツリ人がいるくらいで、ヒマになってきた。

由香が来るとしたら、そろそろだろうな。



「いらっしゃいませー」


丁度ドアを開けて入ってきた客に、他のバイトが対応した。



「お煙草吸われますか?」

「はい」

「ではこちらが喫煙席になります。
お好きな席へどうぞ」


…てっきり由香かと思ったのだけど、そうじゃなかったな。


今日、話があるみたいな感じだったから来るかと思ったんだけどな。


チラリと店内の時計を見ると、21時ピッタリを示していた。

さぁって、じゃあオレは仕事あがるかな。

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