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⑦
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それと何より…
またこうして強盗さんと会えて、ほんとによかったぁ…。
離すどころか、背中にまわした手で強盗さんの上着をギュウって掴む。
「わかったわかった。もう大丈夫だから。
いい加減落ち着けよ」
いつまでも離さない私の頭をポンポンと叩く。
その後、おっきな強盗さんの手で頭を撫でられると急に安心してしまい、ようやくしがみつく強盗さんの身体からゆっくり離れた。
「…お前、ヒドい顔だな」
私はいつの間にか泣いていたみたいで、顔は涙でぐしょぐしょに汚れていた。
それを強盗さんは手の甲で、優しく拭ってくれた。
「強盗さん…」
「ほら、もう泣くなって。
俺も困るだろうが!」
「うん………」
そんな事言われたって、溢れてくる涙はどうしようもないよぉ。
「…よし。
じゃあ、ここでな」
「え……………?」
強盗さんは1人立ち上がった。
私はまだ地面に座り込んだまま。
強盗さんは私に背を向けて、また山道を歩いて行こうとした。
「ま 待ってよ!!」
私も急いで起き上がって、去っていく強盗さんを追い掛けて走った。
ギュッと上着の袖口を掴み、歩いて行く強盗さんを引き止める。
「何だ。
まだ何か忘れ物でもあったか?」
「そうじゃなくて…。
じゃあここでって…、強盗さんどこ行っちゃうの…?
私は…どうしたらいいの?」
こんな山の中で急に私を置いて行っちゃうなんて、そりゃ私だって混乱しちゃうよねぇ?
「どうしたらって、家に帰るなり何なりすりゃいいだろ?
別に追い掛けて捕まえたりなんかしねぇよ」
帰るなりって…
それは…その通りかもしれない。
でも…!
「だって私こんな所に1人残されたって、帰る事なんか…」
ケータイのGPS機能の事はわかってたけど、敢えて知らない振り。
ただ、今ここで強盗さんと離れないで済む方法として言っただけかもしれない。
「そこまで俺が世話しなきゃいけねぇのかよ」
「強盗さんはすぐに急いで行かなきゃいけない所があるの?」
「そういうわけじゃねぇけどよ。
…どうせこの先、ずっと逃亡生活だろうからな」
南とケンカしちゃって、意地張ってお金も得ないまま1人になっちゃった強盗さん。
これからもずっと普通の生活には戻れず、逃げ回ってばかりになっちゃうんだろうな…。
…グズっ。
目の前の強盗さんの顔が涙で歪んだ。
「そんな目で俺を見るな!
…わかったから、ある程度近くまで送ってやるよ!」
涙目で下から見上げた私を見て、強盗さんは根負けしたようだった。
よかったぁ。
「あ、待って」
「今度は何だっ!?」
「…トイレ、もうずっと我慢してて…」
「お前は小便ばっかりだな!」
ばっかりじゃないよぉ!
昨日からずっとしてないんだってば!!
木の影でこっそり用を足すと、私は強盗さんについて歩いた。
しばらく一緒に山道を行くと、青い軽の車が駐車してあるのが見えた。
そこから先は、多少道らしい道がある。
多分、車で来れるギリギリの場所がここだったんだ。
その青い車まで来ると、強盗さんはポケットからカギを取り出して車のドアを開けた。
強盗さんはもちろん運転席に乗り込み、私はグルッと半周して助手席のドアを開けて乗った。
「…うひゃ~」
車の中は食べ物のクズやら雑誌やら新聞、脱ぎ捨てられた服などがあちこち散らばっていた。
「…俺の車じゃないからな。
文句なら南に言えよ」
「あ、これアイツの車なんだ」
そう言えば南は、強盗したお金をこの車に乗せてあの小屋まで行くみたいな計画を話していたかな。
「お前が送れって言うから、ちょっと借りるだけだからな」
「うん」
…今頃南はどうしてるかしら。
身体の自由を奪われたまま大金と小屋の中で、どうするのかな…。
またこうして強盗さんと会えて、ほんとによかったぁ…。
離すどころか、背中にまわした手で強盗さんの上着をギュウって掴む。
「わかったわかった。もう大丈夫だから。
いい加減落ち着けよ」
いつまでも離さない私の頭をポンポンと叩く。
その後、おっきな強盗さんの手で頭を撫でられると急に安心してしまい、ようやくしがみつく強盗さんの身体からゆっくり離れた。
「…お前、ヒドい顔だな」
私はいつの間にか泣いていたみたいで、顔は涙でぐしょぐしょに汚れていた。
それを強盗さんは手の甲で、優しく拭ってくれた。
「強盗さん…」
「ほら、もう泣くなって。
俺も困るだろうが!」
「うん………」
そんな事言われたって、溢れてくる涙はどうしようもないよぉ。
「…よし。
じゃあ、ここでな」
「え……………?」
強盗さんは1人立ち上がった。
私はまだ地面に座り込んだまま。
強盗さんは私に背を向けて、また山道を歩いて行こうとした。
「ま 待ってよ!!」
私も急いで起き上がって、去っていく強盗さんを追い掛けて走った。
ギュッと上着の袖口を掴み、歩いて行く強盗さんを引き止める。
「何だ。
まだ何か忘れ物でもあったか?」
「そうじゃなくて…。
じゃあここでって…、強盗さんどこ行っちゃうの…?
私は…どうしたらいいの?」
こんな山の中で急に私を置いて行っちゃうなんて、そりゃ私だって混乱しちゃうよねぇ?
「どうしたらって、家に帰るなり何なりすりゃいいだろ?
別に追い掛けて捕まえたりなんかしねぇよ」
帰るなりって…
それは…その通りかもしれない。
でも…!
「だって私こんな所に1人残されたって、帰る事なんか…」
ケータイのGPS機能の事はわかってたけど、敢えて知らない振り。
ただ、今ここで強盗さんと離れないで済む方法として言っただけかもしれない。
「そこまで俺が世話しなきゃいけねぇのかよ」
「強盗さんはすぐに急いで行かなきゃいけない所があるの?」
「そういうわけじゃねぇけどよ。
…どうせこの先、ずっと逃亡生活だろうからな」
南とケンカしちゃって、意地張ってお金も得ないまま1人になっちゃった強盗さん。
これからもずっと普通の生活には戻れず、逃げ回ってばかりになっちゃうんだろうな…。
…グズっ。
目の前の強盗さんの顔が涙で歪んだ。
「そんな目で俺を見るな!
…わかったから、ある程度近くまで送ってやるよ!」
涙目で下から見上げた私を見て、強盗さんは根負けしたようだった。
よかったぁ。
「あ、待って」
「今度は何だっ!?」
「…トイレ、もうずっと我慢してて…」
「お前は小便ばっかりだな!」
ばっかりじゃないよぉ!
昨日からずっとしてないんだってば!!
木の影でこっそり用を足すと、私は強盗さんについて歩いた。
しばらく一緒に山道を行くと、青い軽の車が駐車してあるのが見えた。
そこから先は、多少道らしい道がある。
多分、車で来れるギリギリの場所がここだったんだ。
その青い車まで来ると、強盗さんはポケットからカギを取り出して車のドアを開けた。
強盗さんはもちろん運転席に乗り込み、私はグルッと半周して助手席のドアを開けて乗った。
「…うひゃ~」
車の中は食べ物のクズやら雑誌やら新聞、脱ぎ捨てられた服などがあちこち散らばっていた。
「…俺の車じゃないからな。
文句なら南に言えよ」
「あ、これアイツの車なんだ」
そう言えば南は、強盗したお金をこの車に乗せてあの小屋まで行くみたいな計画を話していたかな。
「お前が送れって言うから、ちょっと借りるだけだからな」
「うん」
…今頃南はどうしてるかしら。
身体の自由を奪われたまま大金と小屋の中で、どうするのかな…。
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