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●あたし、何だか複雑です!?①

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「まどかってさ、櫻井理央とどういう関係なの?」


「へぇぇっ!??」



ある日の、教室での朝だ。


今朝も途中までサイさんの車で送ってもらい、その後は歩きで学校まで行った。

やっぱりあたしたちの関係は秘密だからって事で、登校は離れてしなきゃいけないみたい。


だからこそ、あたしとご主人様の関係は誰にも知られていないと思っていたんだけど……



「あ、あたしと、ご主……いやいや、理央クンが!?
ど どどど どーしてそんな……っ」


「昨日まどかがひとりで帰ってるとこ見つけたんだけどさ。
そしたら、櫻井理央がいつも乗ってくる車が停まって、まどか乗せて行ったよね?」



ああほら、やっぱり。

いくら離れていても、あの車にあたしが乗ってたら意味ないんだよ。あんなお金持ちしか乗らない車、誰も乗らないもんね。



「まどかの家もあっち方向じゃなかったよね。
もしかして、櫻井理央の家に行ったの?」


「え え え~っとぉ……っ」



まさかもうバレちゃうとは思わなかった。

それでなくてもご主人様は友だちのいない人なのに。あたしが家に行ったなんて事になったら、密かに付き合ってるとか思われても不思議じゃないよぉ!



「落とし物を……届けてあげようと思って……」


「落とし物?」


「……そう! 落とし物。
帰る時にね、理央クンの学生証を拾ったの。
だから理央クンに返してあげようかなーって思ってね。
そしたら、たまたま理央クンとこの専属ドライバーさんがいてね、車で連れて行ってもらっちゃったぁ!」



わざとらしい? 変?
ううーん、アドリブのウソって苦手だぁ。

琴乃、お願いだからあんまりつっこまいでねーっ!



「学生証?
そのドライバーに渡すとか、教室の机に置いとけばいいじゃない?」



ギクーーン!!

そ、その通りです!
普通ならそうします!

だけど、それをわざわざ家に届けに行った理由は……届けに行った理由はぁ……っ




「ほら、理央クンってお金持ちじゃない?
届けに行ったらさ、お礼とかもらえると思って……っ」



わ、我ながら汚い理由だ!!
お礼が目的の親切だなんて、偽善この上ないよぉぉ!



「ふぅん、なるほどね。
で、何もらったの?」


「それは……………っ
……何ももらえなかったかな」


「は? 何で?」


「理央クンったら、お金持ちなクセにケチなんだよね~」



あー違う違う違う!!

ホントはそんな事ないんだけど、ウソがウソを呼んで止まらないのぉ!!




「……櫻井理央って、ケチなんだ」


「そう!
ほら、普段から何考えてるかわかんないじゃない?
やっぱお金持ちの頭って、あたしら貧乏人には理解できないのよ」



ヒドい!
あたしったら、どうしてそんなヒドい事言えちゃうの!?

ご主人様はケチでも何でもない、ちょっとドSで不器用だけど、優しい人なんだってばぁ!



「ふぅん、そうなんだね」


あたしのデタラメをまるで信じてしまった琴乃は、勝手に納得してしまったようだ。


どうしよう。
だからって今更ご主人様の事フォローなんて出来ないしぃっ



チラリ

あたしは窓際前の席に座るご主人様の方を見ると……



「……………っ!!?」



バチリ!

一瞬だけど、あたしと目が合ってしまった!!


まさか、今の聞こえてないよね!?


自分はお礼目的で親切したなんて言っておきながら。
なのにご主人様の事はケチで、貧乏人にはお金持ちの頭なんて理解できないなんて!


こんな事をご主人様に聞かれてたら、あたしどうなっちゃうーーっ!?














「……へぇ、オレがケチねぇ。
知らなかったよ」


「…………………………ごめんなさぃ……」



ご主人様を家に連れて帰った後の便で、サイさんの車であたしが帰った途端の事だった。


玄関のドアを開けてすぐ目の前に立っていたご主人様に、あたしは全身の毛穴が開いたんじゃないかってくらいビックリしたー!


……で、帰って開口一番がそれだったのだ。



あたしは頭をこれでもかってくらい下げて謝る事しかできなかったわけで。


サイさんも車を車庫に入れる為に行っちゃったから、フォローにも入ってもらえそうにない。


怒られる!
てゆーか、怒られるだけで済むハズがない!

どうしようー!!



「……………何いつまでも突っ立ってんの。
早く着替えて、仕事しなよ」


「え………?」


予想以上の穏便なセリフに、思わず拍子抜けした。

拍子抜け?
いや、肩透かし?



「何?」


「あ いえ、あの……っ
それだけ……ですか?」


「それだけって?
まだ何か言ってほしいの?」


「い、いえっ!
あ、あたし着替えてお仕事しまーす!!
それじゃあ、失礼しまーす!!」



ペコリ

ご主人様にお辞儀をすると、あたしは逃げるように自分の部屋へと走った。


また墓穴を掘って、あれこれ仕事を増やされちゃあ大変だもんね!


まだメイドを始めてほんの数日。
ご主人様のご機嫌にも気を付けて頑張らなくちゃだよー!!



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