7 / 34
●あたし、何だか複雑です!?①
しおりを挟む「まどかってさ、櫻井理央とどういう関係なの?」
「へぇぇっ!??」
ある日の、教室での朝だ。
今朝も途中までサイさんの車で送ってもらい、その後は歩きで学校まで行った。
やっぱりあたしたちの関係は秘密だからって事で、登校は離れてしなきゃいけないみたい。
だからこそ、あたしとご主人様の関係は誰にも知られていないと思っていたんだけど……
「あ、あたしと、ご主……いやいや、理央クンが!?
ど どどど どーしてそんな……っ」
「昨日まどかがひとりで帰ってるとこ見つけたんだけどさ。
そしたら、櫻井理央がいつも乗ってくる車が停まって、まどか乗せて行ったよね?」
ああほら、やっぱり。
いくら離れていても、あの車にあたしが乗ってたら意味ないんだよ。あんなお金持ちしか乗らない車、誰も乗らないもんね。
「まどかの家もあっち方向じゃなかったよね。
もしかして、櫻井理央の家に行ったの?」
「え え え~っとぉ……っ」
まさかもうバレちゃうとは思わなかった。
それでなくてもご主人様は友だちのいない人なのに。あたしが家に行ったなんて事になったら、密かに付き合ってるとか思われても不思議じゃないよぉ!
「落とし物を……届けてあげようと思って……」
「落とし物?」
「……そう! 落とし物。
帰る時にね、理央クンの学生証を拾ったの。
だから理央クンに返してあげようかなーって思ってね。
そしたら、たまたま理央クンとこの専属ドライバーさんがいてね、車で連れて行ってもらっちゃったぁ!」
わざとらしい? 変?
ううーん、アドリブのウソって苦手だぁ。
琴乃、お願いだからあんまりつっこまいでねーっ!
「学生証?
そのドライバーに渡すとか、教室の机に置いとけばいいじゃない?」
ギクーーン!!
そ、その通りです!
普通ならそうします!
だけど、それをわざわざ家に届けに行った理由は……届けに行った理由はぁ……っ
「ほら、理央クンってお金持ちじゃない?
届けに行ったらさ、お礼とかもらえると思って……っ」
わ、我ながら汚い理由だ!!
お礼が目的の親切だなんて、偽善この上ないよぉぉ!
「ふぅん、なるほどね。
で、何もらったの?」
「それは……………っ
……何ももらえなかったかな」
「は? 何で?」
「理央クンったら、お金持ちなクセにケチなんだよね~」
あー違う違う違う!!
ホントはそんな事ないんだけど、ウソがウソを呼んで止まらないのぉ!!
「……櫻井理央って、ケチなんだ」
「そう!
ほら、普段から何考えてるかわかんないじゃない?
やっぱお金持ちの頭って、あたしら貧乏人には理解できないのよ」
ヒドい!
あたしったら、どうしてそんなヒドい事言えちゃうの!?
ご主人様はケチでも何でもない、ちょっとドSで不器用だけど、優しい人なんだってばぁ!
「ふぅん、そうなんだね」
あたしのデタラメをまるで信じてしまった琴乃は、勝手に納得してしまったようだ。
どうしよう。
だからって今更ご主人様の事フォローなんて出来ないしぃっ
チラリ
あたしは窓際前の席に座るご主人様の方を見ると……
「……………っ!!?」
バチリ!
一瞬だけど、あたしと目が合ってしまった!!
まさか、今の聞こえてないよね!?
自分はお礼目的で親切したなんて言っておきながら。
なのにご主人様の事はケチで、貧乏人にはお金持ちの頭なんて理解できないなんて!
こんな事をご主人様に聞かれてたら、あたしどうなっちゃうーーっ!?
「……へぇ、オレがケチねぇ。
知らなかったよ」
「…………………………ごめんなさぃ……」
ご主人様を家に連れて帰った後の便で、サイさんの車であたしが帰った途端の事だった。
玄関のドアを開けてすぐ目の前に立っていたご主人様に、あたしは全身の毛穴が開いたんじゃないかってくらいビックリしたー!
……で、帰って開口一番がそれだったのだ。
あたしは頭をこれでもかってくらい下げて謝る事しかできなかったわけで。
サイさんも車を車庫に入れる為に行っちゃったから、フォローにも入ってもらえそうにない。
怒られる!
てゆーか、怒られるだけで済むハズがない!
どうしようー!!
「……………何いつまでも突っ立ってんの。
早く着替えて、仕事しなよ」
「え………?」
予想以上の穏便なセリフに、思わず拍子抜けした。
拍子抜け?
いや、肩透かし?
「何?」
「あ いえ、あの……っ
それだけ……ですか?」
「それだけって?
まだ何か言ってほしいの?」
「い、いえっ!
あ、あたし着替えてお仕事しまーす!!
それじゃあ、失礼しまーす!!」
ペコリ
ご主人様にお辞儀をすると、あたしは逃げるように自分の部屋へと走った。
また墓穴を掘って、あれこれ仕事を増やされちゃあ大変だもんね!
まだメイドを始めてほんの数日。
ご主人様のご機嫌にも気を付けて頑張らなくちゃだよー!!
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
根暗令嬢の華麗なる転身
しろねこ。
恋愛
「来なきゃよかったな」
ミューズは茶会が嫌いだった。
茶会デビューを果たしたものの、人から不細工と言われたショックから笑顔になれず、しまいには根暗令嬢と陰で呼ばれるようになった。
公爵家の次女に産まれ、キレイな母と実直な父、優しい姉に囲まれ幸せに暮らしていた。
何不自由なく、暮らしていた。
家族からも愛されて育った。
それを壊したのは悪意ある言葉。
「あんな不細工な令嬢見たことない」
それなのに今回の茶会だけは断れなかった。
父から絶対に参加してほしいという言われた茶会は特別で、第一王子と第二王子が来るものだ。
婚約者選びのものとして。
国王直々の声掛けに娘思いの父も断れず…
応援して頂けると嬉しいです(*´ω`*)
ハピエン大好き、完全自己満、ご都合主義の作者による作品です。
同名主人公にてアナザーワールド的に別な作品も書いています。
立場や環境が違えども、幸せになって欲しいという思いで作品を書いています。
一部リンクしてるところもあり、他作品を見て頂ければよりキャラへの理解が深まって楽しいかと思います。
描写的なものに不安があるため、お気をつけ下さい。
ゆるりとお楽しみください。
こちら小説家になろうさん、カクヨムさんにも投稿させてもらっています。
メイドから家庭教師にジョブチェンジ~特殊能力持ち貧乏伯爵令嬢の話~
Na20
恋愛
ローガン公爵家でメイドとして働いているイリア。今日も洗濯物を干しに行こうと歩いていると茂みからこどもの泣き声が聞こえてきた。なんだかんだでほっとけないイリアによる秘密の特訓が始まるのだった。そしてそれが公爵様にバレてメイドをクビになりそうになったが…
※恋愛要素ほぼないです。続きが書ければ恋愛要素があるはずなので恋愛ジャンルになっています。
※設定はふんわり、ご都合主義です
小説家になろう様でも掲載しています
Home, Sweet Home
茜色
恋愛
OL生活7年目の庄野鞠子(しょうのまりこ)は、5つ年上の上司、藤堂達矢(とうどうたつや)に密かにあこがれている。あるアクシデントのせいで自宅マンションに戻れなくなった藤堂のために、鞠子は自分が暮らす一軒家に藤堂を泊まらせ、そのまま期間限定で同居することを提案する。
亡き祖母から受け継いだ古い家での共同生活は、かつて封印したはずの恋心を密かに蘇らせることになり・・・。
☆ 全19話です。オフィスラブと謳っていますが、オフィスのシーンは少なめです 。「ムーンライトノベルズ」様に投稿済のものを一部改稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる