紫に抱かれたくて

むらさ樹

文字の大きさ
上 下
55 / 68

しおりを挟む
煌に案内され、あたしはソファに腰掛けた。

チラリと店内を見渡すと、紫苑は他のお客を接待していてあたしの方など向いていない。

…当たり前か。
だけどせっかく来たのに、紫苑を横目に煌と飲んでたんじゃ来た意味がない。

それに、これ以上煌に尽くしてたら逆に煌を傷付けるだけだから、出来れば今は煌と一緒にいたくないんだけど………

そう思ってた時だった。


「愛ちゃん、久し振り。
この間は来てくれたのに行けなくてゴメンねぇ」

そう言って、ひょっこり顔を出したのは頭から服 靴に至るまで全身真っ黒のクロウだった。

「ずっとご無沙汰だったよね。
ねぇ、今日はオレと呑まね?」

基本ヘルプが殆どの煌とばかりで、人気ホストなのもあって順番待ちが多いクロウとはあまり一緒にはいなかったな。だけど、一応クロウもあたしが永久指名してるホストの1人だったわね。
側には既に煌というプレイヤーホストはいるんだけど。
でもクロウはあたしの反対隣に強引に座った。

つまり…今あたしは両サイドに永久指名してるホストに挟まれてる状態だ。


ここのホストクラブは永久指名に2人までホストを選ぶ事ができるシステムではあるけれど、もちろん2人同時に同席させてはいけないとかそんな決まりはない。
しかし、何故かクロウはそんなあたしの隣に座る煌に冷たく言い放ったのだ。


「悪いけど、外してくんない?
今日はオレ、愛ちゃんと2人で呑みたいんだ」

…今までそんな事なかったのに。
クロウはそう言って煌を追い払おうとした。


「な…っ
お おれだって、愛さんの指名ホストだ。
立ち退く必要なんてない筈だ…!」

けれども、クロウの言葉に煌は食い下がった。

だけどその態度が勘に障ったらしいクロウは、立ち上がって煌を上から睨んだ。


「お前ヘルプ止まりの新人のクセに、立場わかってオレに刃向かってんの…?」

「…………………っ」

煌の言う通り、煌だってあたしの指名してるホストだから隣にいて全く問題はない。
だけど、こういう世界の上下関係は厳しいものだったりする。

うちの職場はそうでもないんだけど、でも新人の煌がナンバーワンのクロウに楯突くのは、先々の事を考えてもやっぱり良くないかもしれない。
ここは煌には悪いけど…


「…ごめん、煌。
あたしも今日はクロウと話したいの。
2人にしてくれる?」

「…………………っ
…わかりました……」

ショックを受けた表情が、見て取れた。
ゆっくりと腰を上げ、席を離れていく煌。

ごめん…っ
ごめんね、煌…!!


煌が立ち退いたのを満足げな表情で見送ったクロウは、ソファに座りあたしに向き直った。

「いつも新人なんかの相手ばかりさせて、ごめんな愛ちゃん?」

「…別に、あたしは…」

クロウはあたしの顔を覗き込むように下から見上げると、ニッと笑った。

「今夜は今までの事も含めて、オレがたっぷり接待するよ。
絶対、楽しいよ?」

…これがナンバーワンの余裕なのかしら。
確かに、煌とは違う空気をまとってる。

それに、あたしに合わせてくれる煌と違って、クロウは自分のペースに誘い込むって言うか強引な感じ。
束縛されたいって欲求のある女には、人気出そうなホストだ。


「…でもあたしはお酒とかそんな興味ないし、高いの注文しないかもよ?」

「いいっていいって!
オレと呑む酒は、安くても一級品の味になるから」

…クロウは人気のホストだから、どうせすぐに席を立つだろう。
そうしたら、また紫苑が来てくれないかな…。
とか、既にあたしは期待していた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

My Doctor

west forest
恋愛
#病気#医者#喘息#心臓病#高校生 病気系ですので、苦手な方は引き返してください。 初めて書くので読みにくい部分、誤字脱字等あると思いますが、ささやかな目で見ていただけると嬉しいです! 主人公:篠崎 奈々 (しのざき なな) 妹:篠崎 夏愛(しのざき なつめ) 医者:斎藤 拓海 (さいとう たくみ)

ナイショのお見合いは、甘くて危険な恋の駆け引き!

むらさ樹
恋愛
娘を嫁に出そうと、お見合い写真を送り続けている母 それに対し、心に決めた男性と同棲中の娘 「最後にこのお見合いをしてダメだったら、お母さんもう諦めるから」 「本当!?」 と、いう事情で 恋人には内緒でお見合いに応じた娘      相川 優 ところが、お見合い相手の男性はなんと年商3億の社長さん 「私の事なんて早く捨てちゃって下さい!」 「捨てるだなんて、まさか。 こんなかわいい子猫ちゃん、誰にもあげないよ」 彼の甘く優しい言動と、優への強引な愛に、 なかなか縁を切る事ができず… ふたりの馴れ初めは、 “3億円の強盗犯と人質の私!?”(と、“その後のふたり♡”) を、どうぞご覧ください(^^)

社長の奴隷

星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

【完結】俺のセフレが幼なじみなんですが?

おもち
恋愛
アプリで知り合った女の子。初対面の彼女は予想より断然可愛かった。事前に取り決めていたとおり、2人は恋愛NGの都合の良い関係(セフレ)になる。何回か関係を続け、ある日、彼女の家まで送ると……、その家は、見覚えのある家だった。 『え、ここ、幼馴染の家なんだけど……?』 ※他サイトでも投稿しています。2サイト計60万PV作品です。

婚約をなかったことにしてみたら…

宵闇 月
恋愛
忘れ物を取りに音楽室に行くと婚約者とその義妹が睦み合ってました。 この婚約をなかったことにしてみましょう。 ※ 更新はかなりゆっくりです。

処理中です...