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廊下に出てみると、桐生君の姿はもうなかった。
さっさと行っちゃったんだろうな。

わたしも急いで階段を上がって3階に向かう。



…わたしの提出した案、何か問題があったのかな。
学校のシステムを変えるなんて事自体がまずかったかしら。

だけど、うちは本気で勉強する事を目指したバリバリの進学校だもの。これくらいは認められてもいいと思うのに。

…ま、今となっては、どっちでもいい気分ではあるんだけど。話が面倒くさそうだったら、適当に妥協して穏便に済ませよう…。




人通りの少ない3階廊下をまっすぐ突き進み、わたしは生徒会室の前まで来た。

「……………」

朝行かなかったのは、ちゃんと連絡が伝わってなかったからって事にしよう。生徒会の話があるんなら、ちゃんとアイツがそう言うべきなのよっ

「………はぁ…」

もう一度ため息をつくと、わたしは生徒会室のドアに手をかけて開けた…


「あ、あれっ」

…の、つもりだったけど、カギがかかっていて開かなかった。

「え、何で?」

さっき桐生君が来いって言ったの、ここじゃなかったの?
でも他にどこに…

それとも、もしかしてわたしの方が先に来ちゃったとか?
そんなわけないよね。

桐生君、職員室に行ったのかな。
それとも今から総会があるなら体育館とか?


「うーん…」

て言うか!
だからちゃんと連絡事項は正確に伝えなさいよね!
わたしなんかお昼ご飯も食べずに来たってのに!

一応、わたしはカギを開けて生徒会室の中を確認してみる事にした。
カチリと錠が外れた音がした後、ガラガラと音をたてながらドアを開けた。

中には、何も置かれていない長机2台が見えるだけ。メンバーたちがそこに座っているとか、資料が並べられているとか、そんな事は全くなかった。


「なによ、やっぱり居ないんじゃ…」

「やっと来たね。
またすっぽかされるかと思ったよ」

誰も居ないと思っていた生徒会室。
だけどドアのすぐ横にある棚の陰で見えなかっただけで、そこに桐生君は腕を組んだまま立っていた。


「ちょっ!
…て言うか、何なのよ!
カギをかけたまま中にいるなんて、入らせる気なかったって事と一緒じゃない!」

「カギなら返しただろ?
だから入ってこれたじゃないか」

「違うわよ!
これじゃあ他のメンバーたちは入って来れないでしょって言ってるの!」

「入って来なくていいよ。
来てほしかったのは、榊だけなんだから」

「なんでっ………え?
だって生徒会の話があるから、みんなを呼んだんでしょ?」

桐生君の言う事はいつもよくわからない。
一体何を考えているのよ。

「いや?
まぁある意味そうなんだけど、オレが呼んだのは榊だけだよ」


ある意味そうってのもわからないし、呼んだのがわたしだけってのも謎だ。



「じゃあ…何の話を…」

「その前にさ、まずは閉めようよ。ドア」

まだ開けたままになっている生徒会室のドアを指した桐生君に従い、わたしはまたガラガラと音を立てて閉めた。


「まだだよ。カギも閉めて。
ほら、早くしないと昼休み終わっちまうだろっ」

「…カギも?」


ドキン とした。
以前にもあった環境。

カギを閉めた生徒会室は密室。
…わたしと桐生君だけの、特別な空間という名の、密室。


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