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「じゃあ…また臨時総会に向けての話し合いを今からするんですか?」
「次の木曜日なら文化祭よりも先に話さなきゃかな」
今更新しい校則とかわたしにはどうでもいい話。
総会の日時を知らせたら今日はすぐに帰ろうかと思ったけど、自分で立てた計画なら残って話し合いに参加しないといけないか…。
「いや、総会で話す事はもう決まってるからいいよ。
それより、各クラスで決めてもらった文化祭の出し物のプリントをまとめよう」
「あ、いいんですか?
じゃあ早速、僕が集めたこのプリントを…」
__結局。
何で総会をするのかとか、何を話すのかとか、そういった話はまったくわからずじまいだった。
そして、その後もずっと桐生君はわたしと目も合わそうとしなかった。
これじゃあここにいるだけツラい。
早く元の生活に戻った方がいっそ…。
__そうして次の木曜日を控えた前日の水曜日。
放課後の生徒会の集まりには相変わらず理由をつけて欠席している。と言っても、最近は文化祭の為の準備で買い出しやら手配ばかりで生徒会室での活動はないみたい。
全校生徒も各クラスで準備したりしてるわけだから、生徒会のメンバーだけが忙しいわけじゃあない。
しかも自分のクラスの出し物の準備は、生徒会メンバーを理由に免除されているから、実質わたしは何もしていない事になっているのだけど。
そんなわけで、とぼとぼと帰り道を1人歩いていた。
学校の行事なんて面倒くさい。
他の生徒が文化祭の準備をしている今こそ、わたしは帰って期末試験に備えないと…。
そう思っていると、
「…榊」
わたしを呼ぶ声に、ドキッとして足を止めた。
ゆっくりと後ろを振り返り、声がした方を向いた。
誰の声なのかはわかっている。
「…何?桐生君…」
文化祭の買い出しの途中なんだろう。
ビニール袋に、文房具やら布切れやら入ったものを持っている。生徒会長やってるんだもの、わたしみたいにサボったりなんか出来ないわよね。
「…………………」
わたしの問いに、桐生君はなかなか返答をしない。
目を伏せて顔をまともに見てないので、桐生君がどんな表情をしてるかはわからない。
「…用事ないなら、わたし帰るから…」
そう言ってまた正面に向き直り、足を進ませた。
「オレの事避けてるのってさ…」
「…!」
「本当に、嫌いだから…なのか?」
「……………っ」
何で今更そんな事を言ってくるのよ。
どうしてそれをわたしに答えさせるのよ!
わたしが桐生君を避けてるのは、嫌いになったからじゃない。この恋愛を禁止された校内で、一般生徒の立ち入り禁止をされた生徒会室で秘密の恋愛をしていた事が更科にバレてしまったから…。
それを口外されたくなくて、更科の言う事をきくしかなかったから…!
だから、無理やり自分の気持ちを押し殺してるんじゃない!
本心を隠して生きる事は、今まで普通だったから。
単にそう、戻るだけ。
あの窮屈だった生活に戻るだけなんだから、平気…っ
「…当たり前でしょ。
前も言ったじゃない…」
だけど、その窮屈な生活から息抜きできたのは桐生君のおかげ。居心地良かった生徒会室だったけど、どちみちそれはもう戻れない。
だから決めたの。
…全てをリセットするって。
桐生君。
アンタとの思い出も、みんなリセットするのよ。
「じゃあ…さよなら」
わたしは背を向けると、家に向かって歩いた。
「待てよ、榊!」
再び呼び止められ、わたしは肩をグイッと引っ張られる。
「ちょっ
何するのよ!」
振り向き様に、わたしは掴まれた肩を思い切り振り払った。
その後、桐生君はわたしの手に何かをギュッと握らせた。
「え?」
「…もう一度、榊の本音を聞きたい。
明日の朝、始業ベルが鳴る15分前にふたりで会おう」
「は?会うって…」
「じゃあ、待ってるから」
そう言って桐生君はわたしから離れ、多分学校の方に戻って行った。
本音って…今更言える事なんて何にもないわよ。
それに、ふたりで会うなんて…
わたしは握らせられた手を開き、中を見た。
…生徒会室のカギだ。
一度は返した筈の生徒会室のカギ。
またわたしの手に戻ってくるなんて…。
「次の木曜日なら文化祭よりも先に話さなきゃかな」
今更新しい校則とかわたしにはどうでもいい話。
総会の日時を知らせたら今日はすぐに帰ろうかと思ったけど、自分で立てた計画なら残って話し合いに参加しないといけないか…。
「いや、総会で話す事はもう決まってるからいいよ。
それより、各クラスで決めてもらった文化祭の出し物のプリントをまとめよう」
「あ、いいんですか?
じゃあ早速、僕が集めたこのプリントを…」
__結局。
何で総会をするのかとか、何を話すのかとか、そういった話はまったくわからずじまいだった。
そして、その後もずっと桐生君はわたしと目も合わそうとしなかった。
これじゃあここにいるだけツラい。
早く元の生活に戻った方がいっそ…。
__そうして次の木曜日を控えた前日の水曜日。
放課後の生徒会の集まりには相変わらず理由をつけて欠席している。と言っても、最近は文化祭の為の準備で買い出しやら手配ばかりで生徒会室での活動はないみたい。
全校生徒も各クラスで準備したりしてるわけだから、生徒会のメンバーだけが忙しいわけじゃあない。
しかも自分のクラスの出し物の準備は、生徒会メンバーを理由に免除されているから、実質わたしは何もしていない事になっているのだけど。
そんなわけで、とぼとぼと帰り道を1人歩いていた。
学校の行事なんて面倒くさい。
他の生徒が文化祭の準備をしている今こそ、わたしは帰って期末試験に備えないと…。
そう思っていると、
「…榊」
わたしを呼ぶ声に、ドキッとして足を止めた。
ゆっくりと後ろを振り返り、声がした方を向いた。
誰の声なのかはわかっている。
「…何?桐生君…」
文化祭の買い出しの途中なんだろう。
ビニール袋に、文房具やら布切れやら入ったものを持っている。生徒会長やってるんだもの、わたしみたいにサボったりなんか出来ないわよね。
「…………………」
わたしの問いに、桐生君はなかなか返答をしない。
目を伏せて顔をまともに見てないので、桐生君がどんな表情をしてるかはわからない。
「…用事ないなら、わたし帰るから…」
そう言ってまた正面に向き直り、足を進ませた。
「オレの事避けてるのってさ…」
「…!」
「本当に、嫌いだから…なのか?」
「……………っ」
何で今更そんな事を言ってくるのよ。
どうしてそれをわたしに答えさせるのよ!
わたしが桐生君を避けてるのは、嫌いになったからじゃない。この恋愛を禁止された校内で、一般生徒の立ち入り禁止をされた生徒会室で秘密の恋愛をしていた事が更科にバレてしまったから…。
それを口外されたくなくて、更科の言う事をきくしかなかったから…!
だから、無理やり自分の気持ちを押し殺してるんじゃない!
本心を隠して生きる事は、今まで普通だったから。
単にそう、戻るだけ。
あの窮屈だった生活に戻るだけなんだから、平気…っ
「…当たり前でしょ。
前も言ったじゃない…」
だけど、その窮屈な生活から息抜きできたのは桐生君のおかげ。居心地良かった生徒会室だったけど、どちみちそれはもう戻れない。
だから決めたの。
…全てをリセットするって。
桐生君。
アンタとの思い出も、みんなリセットするのよ。
「じゃあ…さよなら」
わたしは背を向けると、家に向かって歩いた。
「待てよ、榊!」
再び呼び止められ、わたしは肩をグイッと引っ張られる。
「ちょっ
何するのよ!」
振り向き様に、わたしは掴まれた肩を思い切り振り払った。
その後、桐生君はわたしの手に何かをギュッと握らせた。
「え?」
「…もう一度、榊の本音を聞きたい。
明日の朝、始業ベルが鳴る15分前にふたりで会おう」
「は?会うって…」
「じゃあ、待ってるから」
そう言って桐生君はわたしから離れ、多分学校の方に戻って行った。
本音って…今更言える事なんて何にもないわよ。
それに、ふたりで会うなんて…
わたしは握らせられた手を開き、中を見た。
…生徒会室のカギだ。
一度は返した筈の生徒会室のカギ。
またわたしの手に戻ってくるなんて…。
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