7 / 52
②
しおりを挟む
「副…生徒会長…」
一般生徒たちの投票には、かなりの偏りがあった。
その殆どが桐生珪とわたしに集中していて、他の当選した生徒の投票数は微々たるものだった。
いや、それよりもすっかり忘れていた。
わたしは生徒会長になる事ばかり考えていたけど、生徒会執行部になる事自体は上位5人に選ばれればいいんだ。
ただ、生徒会長の座は桐生珪に奪われてしまったけれど、でもその差はほんの2票。
もちろん負けは負けなんだけどね。
掲示板の一番下には、早速今日の放課後に生徒会室集まる旨が書かれていた。
一般生徒立ち入り禁止の生徒会室…!
これまで入室を許されなかった生徒会室に、いよいよ入れる権利を得たんだ。
だけど…
あとたった2票、いや3票あれば桐生珪を負かす事が出来た今回の総選挙。
放課後、わたしに向ける余裕じみた桐生珪の笑みを予想すると、今からちょっとイライラもしてきた。
__それから。
待ちに待った…いや、来るべき時が来てしまった放課後。
わたしは帰宅の支度を済ませると、通学カバンは自分の机のサイドにかけたまま生徒会室に向かった。
ついこの間ドアの前まで覗きに行った生徒会室。
当然生徒会役員になれる気は満々だったのではあるけど、いざ本当になってしまうと緊張する。
もともと興味なかった筈の生徒会。
入室の禁止された生徒会室に入れるとなると、一応はドキドキするものだった。
1年の教室がある1階から階段を2回上がって3階のフロアに着く。職員室や校長室、それから保健室の並ぶ更にずっと奥に生徒会室はある。
その長い廊下を歩いて行くと見覚えのある生徒が3人、生徒会室のドアの前に立っていた。
…だけどその中には、桐生珪の姿はまだないみたい。
「あ…えっと…」
人の顔や名前を覚えるのはあんまり得意な方ではないけれど、とりあえず立候補者の中にいた3人だという事はわかった。
桐生珪が生徒会長でわたしが副会長なら、この3人は会計と書記に選ばれた人なんだろう。
「榊さんだよね。副生徒会長、おめでとう!
榊さんの演説、とても良かったよ。
私にも選挙権があったら榊さんに投票してたくらい」
口ごもったわたしに最初に話しかけてきたのは、3人いるうちの唯一の女子生徒だった。
名札を見ると、2年A組 伊集院 と書かれている。
2年生の割には小柄で、わたしよりも背も低い。ふわふわした柔らかい髪は天然ではなく、きっと朝から随分手入れされたものに違いないと思う。
「確かに、副会長の演説は面白かったよ。
だってムカつくセンコーの授業受けずに済むんだもんな。
でも、俺だったら生徒会長に入れてたぜ」
そう言ったのは、2年B組更科と名札に書かれた男子だった。
背は高く、サバサバした軽率な印象を受ける。
一応先輩になるんだけど、第一印象的にもとてもじゃないが尊敬は出来そうにないわね。
「生徒の大半が生徒会長と副会長に票を入れてましたもんね。
僕たちがこの票で執行部に入れたのが奇跡みたいなものですよ」
最後に口を開いたのは1年B組、相良という男子だ。
同じ学年でも、隣のクラスになると顔も名前も記憶にすらない。わたしにはメガネをかけた、頼りなさ気な印象しかなかった。
…この3人がどんな演説したのかなんて、もうわたしの記憶からは消えてる。それだけ印象に残らないつまらないものだったに違いない。
これから1年、このメンバーでやっていく事になるんだ。
もちろん、あと桐生珪を入れての5人なんだけども。
「そういえば、生徒会長はまだ来てないですね」
「今日集まりがある事、知らないなんてわけないよね?」
「生徒会長モテそうだからな。
あんな演説したんだから、早速女子から誘われたりしてんじゃないか?」
他のメンバーたちがあれこれ勝手に詮索する。
…ははぁ、なるほど。
演説じゃあ一般生徒たちから絶賛されてたけど、結局自分がチヤホヤされたかったから恋愛禁止を解除なんて言ったんだわ。
良い事言ったつもりで結局自分の為だったなんて。
こんな奴に負けたなんて思うと、とことんムカついてくるーっ!
「そんないい加減な人なんか置いといて、先に入りましょうよ。
カギ、開いてないの?」
わたしが生徒会室のドアに手をかけようとした時、背後から声がかかった。
一般生徒たちの投票には、かなりの偏りがあった。
その殆どが桐生珪とわたしに集中していて、他の当選した生徒の投票数は微々たるものだった。
いや、それよりもすっかり忘れていた。
わたしは生徒会長になる事ばかり考えていたけど、生徒会執行部になる事自体は上位5人に選ばれればいいんだ。
ただ、生徒会長の座は桐生珪に奪われてしまったけれど、でもその差はほんの2票。
もちろん負けは負けなんだけどね。
掲示板の一番下には、早速今日の放課後に生徒会室集まる旨が書かれていた。
一般生徒立ち入り禁止の生徒会室…!
これまで入室を許されなかった生徒会室に、いよいよ入れる権利を得たんだ。
だけど…
あとたった2票、いや3票あれば桐生珪を負かす事が出来た今回の総選挙。
放課後、わたしに向ける余裕じみた桐生珪の笑みを予想すると、今からちょっとイライラもしてきた。
__それから。
待ちに待った…いや、来るべき時が来てしまった放課後。
わたしは帰宅の支度を済ませると、通学カバンは自分の机のサイドにかけたまま生徒会室に向かった。
ついこの間ドアの前まで覗きに行った生徒会室。
当然生徒会役員になれる気は満々だったのではあるけど、いざ本当になってしまうと緊張する。
もともと興味なかった筈の生徒会。
入室の禁止された生徒会室に入れるとなると、一応はドキドキするものだった。
1年の教室がある1階から階段を2回上がって3階のフロアに着く。職員室や校長室、それから保健室の並ぶ更にずっと奥に生徒会室はある。
その長い廊下を歩いて行くと見覚えのある生徒が3人、生徒会室のドアの前に立っていた。
…だけどその中には、桐生珪の姿はまだないみたい。
「あ…えっと…」
人の顔や名前を覚えるのはあんまり得意な方ではないけれど、とりあえず立候補者の中にいた3人だという事はわかった。
桐生珪が生徒会長でわたしが副会長なら、この3人は会計と書記に選ばれた人なんだろう。
「榊さんだよね。副生徒会長、おめでとう!
榊さんの演説、とても良かったよ。
私にも選挙権があったら榊さんに投票してたくらい」
口ごもったわたしに最初に話しかけてきたのは、3人いるうちの唯一の女子生徒だった。
名札を見ると、2年A組 伊集院 と書かれている。
2年生の割には小柄で、わたしよりも背も低い。ふわふわした柔らかい髪は天然ではなく、きっと朝から随分手入れされたものに違いないと思う。
「確かに、副会長の演説は面白かったよ。
だってムカつくセンコーの授業受けずに済むんだもんな。
でも、俺だったら生徒会長に入れてたぜ」
そう言ったのは、2年B組更科と名札に書かれた男子だった。
背は高く、サバサバした軽率な印象を受ける。
一応先輩になるんだけど、第一印象的にもとてもじゃないが尊敬は出来そうにないわね。
「生徒の大半が生徒会長と副会長に票を入れてましたもんね。
僕たちがこの票で執行部に入れたのが奇跡みたいなものですよ」
最後に口を開いたのは1年B組、相良という男子だ。
同じ学年でも、隣のクラスになると顔も名前も記憶にすらない。わたしにはメガネをかけた、頼りなさ気な印象しかなかった。
…この3人がどんな演説したのかなんて、もうわたしの記憶からは消えてる。それだけ印象に残らないつまらないものだったに違いない。
これから1年、このメンバーでやっていく事になるんだ。
もちろん、あと桐生珪を入れての5人なんだけども。
「そういえば、生徒会長はまだ来てないですね」
「今日集まりがある事、知らないなんてわけないよね?」
「生徒会長モテそうだからな。
あんな演説したんだから、早速女子から誘われたりしてんじゃないか?」
他のメンバーたちがあれこれ勝手に詮索する。
…ははぁ、なるほど。
演説じゃあ一般生徒たちから絶賛されてたけど、結局自分がチヤホヤされたかったから恋愛禁止を解除なんて言ったんだわ。
良い事言ったつもりで結局自分の為だったなんて。
こんな奴に負けたなんて思うと、とことんムカついてくるーっ!
「そんないい加減な人なんか置いといて、先に入りましょうよ。
カギ、開いてないの?」
わたしが生徒会室のドアに手をかけようとした時、背後から声がかかった。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。
伝える前に振られてしまった私の恋
メカ喜楽直人
恋愛
母に連れられて行った王妃様とのお茶会の席を、ひとり抜け出したアーリーンは、幼馴染みと友人たちが歓談する場に出くわす。
そこで、ひとりの令息が婚約をしたのだと話し出した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる