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しおりを挟む「何だ、またフられたのかよ」
そう言って、コイツはテーブルの上の缶ビールの口を開けた。
「またって何よ! 失礼ね!」
「3回もフられりゃ、またって言ってもいいだろ?
そうか、このビールは俺に慰めてくれって買ってきたんだな」
なんて言いながら、コイツは開けたビールを私によこした。
「ほらよ、お前の3回目の失恋に乾杯」
「フン!」
私は向けられた缶ビールを強引に奪い取ると、グイグイと一気飲みする。
あーっ、もうムカつく!
何で私ばっかりこんな目にあうのよ。
自慢じゃないけど、学校だって良い所を出てる。顔やスタイルだって、悪くない。
なのに、どうして――――
「……性格、なんじゃねぇの?」
「なっ!?」
まるで私の考えてる事を見透かしたかのような口振り。
彼とは昔からの幼なじみで、しかも小中高とずっと同じ学校同じクラスという、究極の腐れ縁。
大学こそは私が女子大だったので分かれたものの、こうして今でもお互いの家に行ってはだべったりしているから、まるで家族ってぐらいお互いをよく理解し合っている。
だからこそ、今日も愚痴を言いに手みやげの缶ビールを持って来たってのに、そんな言い方しなくってもいいじゃない!
「お前は何かに夢中になると本っ当、他が見えなくなるんだよな」
「何よそれっ」
「心配しなくても、泣くんなら俺が胸貸してやるからよ」
「余計なお世話…きゃっ」
彼は私の肩をグイッと引っ張ると、無理やりその胸板に顔を押しつけた。
「………………!」
途端、ふわっと感じた彼の体温。
そして、私が昔から知ってる懐かしい匂い。
て言うかコイツ、こんなにいい身体つきしてたっけ…?
ついそんな感触に浸っていると、彼は私の背中に腕を回した。
「……どうした、泣かねぇんなら俺が鳴かせちまうぞ?」
ドキン と鳴り響いた私の心臓。
「鳴かせるもんなら、鳴かせてみなさいよっ」
わかってる。
誰よりも私の事をよく知ってるコイツなら、それが出来るって事を。
「……お前のそういう意地っ張りなとこ、昔から好きだったよ」
背中に回された腕がギュッと締めつけられ、彼の感触が私の身体全体に感じた。
あったかくて心地いい胸板の感触。
耳元で感じる彼の息づかい。
私の好きな所を把握している彼の手が、優しく這っていく。
だめ……、もっと……っ
「あぁ……んっ」
ほら、
もう私の口からは、鳴き声が漏れてしまった。
“スイートな腐れ縁のふたり”
*おしまい*
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