7 / 29
「16歳」 リィリィの日記-2
しおりを挟む
【若緑月20日】
王子とロゼッタ様のご婚約が発表された。
とはいえまだ内定で、公けでは語ってはいけないらしい。
それって発表っていうのだろうかと思うんだけど、
これを機にロゼッタ様は王子の婚約者として扱われるらしい。
そこで一定期間、問題がなければ正式な婚約者になるそう。
なんか品定めって感じでちょっと気分悪いけど、王族の結婚ってそんなものなのかな。
まぁロゼッタ様がふさわしくないと判断されることはないだろうし、二人の仲を深める期間なのかなって思う。
成金貴族の派閥では、わたしのほうが王子の婚約者にふさわしいのにって言ってる人もいて笑ってしまう。
最近の貴族の位はお金で買えると言われているし実際買えちゃうけど、さすがに男爵令嬢が王子のお相手として選ばれることはないと思う。
図書館で、久しぶりに王子にお会いした。
「ご婚約、おめでとうございます」とお伝えしたら、なんだか泣きそうな顔をされた。
一瞬、去年わたしが王子にパーティで助けられた時のように、今回はわたしがなにか王子を救う言葉をおかけしたい……なんて考えちゃった。
でも、これは慶事だ。
「おめでとうございます」以上の言葉は、ないはず。
なのにどうして、間違ったことをした気分になるんだろう。
どうしようもなく、胸が痛む。
王子にも、ロゼッタ様にも、幸せになってほしいのに。
【蛍月5日】
王子とロゼッタ様のご成婚は、卒業後すぐって噂されている。
あと2年弱。
まだまだ先のことな気がするけど、きっとすぐなんだろうな。
卒業した後のことなんて、まだかんがえたくない。
この生活が、ずっと続けばいいのに。
そろそろゲームが始まる時期が来る。
あのゲームでも、開始時期には、王子とロゼッタ様はすでにご婚約されていたんだっけ。
実際には婚約はまだ内定で、ロゼッタ様が王子の婚約者と紹介されることはない。
けど、最近のパーティでは、王子はいちばんにロゼッタ様と踊る。
それはゲームと同じだ。
ゲームでは、ヒロインであるわたしリィリィが王子と結婚するルートもあった。
そのルートが進むと、王子といちばんに踊るのはわたしになる。
でも、現実には、ありえないことだ。
……いちばんじゃなくていいから、王子と踊ってみたいな、なんてね。
お二人が踊っている姿を見て、たまに考えてしまう。
自分のあさましさが嫌になる。
実際には、最近はずっと王子を避けている。
だから、お話もほとんどしていない。
それがわたしの望んだことなのに、寂しいなんて思ってしまう。
こんなこと、考えるべきじゃないのに。
ゲームの王子ルートでは、ロゼッタ様が王子と仲がいいわたしを疎ましく思って、全力で嫌がらせをする。
それで二人の婚約が破棄されて、わたしと王子が結婚することになってた。
そしてロゼッタ様は、嫌がらせの罰として公爵家を追われ、平民として暮らす。
あの誇り高い方が、平民としてなんて暮らせるわけない。
というか美人さんだから、悪いおじさんに騙されてさらわれそう。
そんなの絶対ダメ!
ロゼッタ様は、他人に嫌がらせをするような方じゃない。
だから、ゲームのような展開はありえない。
ロゼッタ様にゲームのことを聞いてみたけど、やっぱりご存じないみたい。
この世界がゲームと似ているなんて言って、ロゼッタ様に嫌われたくないから、このことは言わないつもり。
ロゼッタ様がわたしに嫌がらせするなんてありえないし、言う必要ないだろう。
だけど万が一にもロゼッタ様を不幸にしないためにも、わたしもそろそろ婚約者を探そう。
他の人との結婚が決まれば、王子のことをつい考えるクセも治るだろうし。
いつまでも、こんなふうにぐちゃぐちゃ悩んでいるのは、よくないことだよね。
王子とロゼッタ様のご婚約が発表された。
とはいえまだ内定で、公けでは語ってはいけないらしい。
それって発表っていうのだろうかと思うんだけど、
これを機にロゼッタ様は王子の婚約者として扱われるらしい。
そこで一定期間、問題がなければ正式な婚約者になるそう。
なんか品定めって感じでちょっと気分悪いけど、王族の結婚ってそんなものなのかな。
まぁロゼッタ様がふさわしくないと判断されることはないだろうし、二人の仲を深める期間なのかなって思う。
成金貴族の派閥では、わたしのほうが王子の婚約者にふさわしいのにって言ってる人もいて笑ってしまう。
最近の貴族の位はお金で買えると言われているし実際買えちゃうけど、さすがに男爵令嬢が王子のお相手として選ばれることはないと思う。
図書館で、久しぶりに王子にお会いした。
「ご婚約、おめでとうございます」とお伝えしたら、なんだか泣きそうな顔をされた。
一瞬、去年わたしが王子にパーティで助けられた時のように、今回はわたしがなにか王子を救う言葉をおかけしたい……なんて考えちゃった。
でも、これは慶事だ。
「おめでとうございます」以上の言葉は、ないはず。
なのにどうして、間違ったことをした気分になるんだろう。
どうしようもなく、胸が痛む。
王子にも、ロゼッタ様にも、幸せになってほしいのに。
【蛍月5日】
王子とロゼッタ様のご成婚は、卒業後すぐって噂されている。
あと2年弱。
まだまだ先のことな気がするけど、きっとすぐなんだろうな。
卒業した後のことなんて、まだかんがえたくない。
この生活が、ずっと続けばいいのに。
そろそろゲームが始まる時期が来る。
あのゲームでも、開始時期には、王子とロゼッタ様はすでにご婚約されていたんだっけ。
実際には婚約はまだ内定で、ロゼッタ様が王子の婚約者と紹介されることはない。
けど、最近のパーティでは、王子はいちばんにロゼッタ様と踊る。
それはゲームと同じだ。
ゲームでは、ヒロインであるわたしリィリィが王子と結婚するルートもあった。
そのルートが進むと、王子といちばんに踊るのはわたしになる。
でも、現実には、ありえないことだ。
……いちばんじゃなくていいから、王子と踊ってみたいな、なんてね。
お二人が踊っている姿を見て、たまに考えてしまう。
自分のあさましさが嫌になる。
実際には、最近はずっと王子を避けている。
だから、お話もほとんどしていない。
それがわたしの望んだことなのに、寂しいなんて思ってしまう。
こんなこと、考えるべきじゃないのに。
ゲームの王子ルートでは、ロゼッタ様が王子と仲がいいわたしを疎ましく思って、全力で嫌がらせをする。
それで二人の婚約が破棄されて、わたしと王子が結婚することになってた。
そしてロゼッタ様は、嫌がらせの罰として公爵家を追われ、平民として暮らす。
あの誇り高い方が、平民としてなんて暮らせるわけない。
というか美人さんだから、悪いおじさんに騙されてさらわれそう。
そんなの絶対ダメ!
ロゼッタ様は、他人に嫌がらせをするような方じゃない。
だから、ゲームのような展開はありえない。
ロゼッタ様にゲームのことを聞いてみたけど、やっぱりご存じないみたい。
この世界がゲームと似ているなんて言って、ロゼッタ様に嫌われたくないから、このことは言わないつもり。
ロゼッタ様がわたしに嫌がらせするなんてありえないし、言う必要ないだろう。
だけど万が一にもロゼッタ様を不幸にしないためにも、わたしもそろそろ婚約者を探そう。
他の人との結婚が決まれば、王子のことをつい考えるクセも治るだろうし。
いつまでも、こんなふうにぐちゃぐちゃ悩んでいるのは、よくないことだよね。
0
お気に入りに追加
42
あなたにおすすめの小説
その国外追放、謹んでお受けします。悪役令嬢らしく退場して見せましょう。
ユズ
恋愛
乙女ゲームの世界に転生し、悪役令嬢になってしまったメリンダ。しかもその乙女ゲーム、少し変わっていて?断罪される運命を変えようとするも失敗。卒業パーティーで冤罪を着せられ国外追放を言い渡される。それでも、やっぱり想い人の前では美しくありたい!
…確かにそうは思ったけど、こんな展開は知らないのですが!?
*小説家になろう様でも投稿しています
悪役令嬢はどうしてこうなったと唸る
黒木メイ
恋愛
私の婚約者は乙女ゲームの攻略対象でした。 ヒロインはどうやら、逆ハー狙いのよう。 でも、キースの初めての初恋と友情を邪魔する気もない。 キースが幸せになるならと思ってさっさと婚約破棄して退場したのに……どうしてこうなったのかしら。
※同様の内容をカクヨムやなろうでも掲載しています。
侯爵令嬢の置き土産
ひろたひかる
恋愛
侯爵令嬢マリエは婚約者であるドナルドから婚約を解消すると告げられた。マリエは動揺しつつも了承し、「私は忘れません」と言い置いて去っていった。***婚約破棄ネタですが、悪役令嬢とか転生、乙女ゲーとかの要素は皆無です。***今のところ本編を一話、別視点で一話の二話の投稿を予定しています。さくっと終わります。
「小説家になろう」でも同一の内容で投稿しております。
【完結】攻略を諦めたら騎士様に溺愛されました。悪役でも幸せになれますか?
うり北 うりこ
恋愛
メイリーンは、大好きな乙女ゲームに転生をした。しかも、ヒロインだ。これは、推しの王子様との恋愛も夢じゃない! そう意気込んで学園に入学してみれば、王子様は悪役令嬢のローズリンゼットに夢中。しかも、悪役令嬢はおかめのお面をつけている。
これは、巷で流行りの悪役令嬢が主人公、ヒロインが悪役展開なのでは?
命一番なので、攻略を諦めたら騎士様の溺愛が待っていた。
前世軍医だった傷物令嬢は、幸せな花嫁を夢見る
花雨宮琵
恋愛
侯爵令嬢のローズは、10歳のある日、背中に刀傷を負い生死の境をさまよう。
その時に見た夢で、軍医として生き、結婚式の直前に婚約者を亡くした前世が蘇る。
何とか一命を取り留めたものの、ローズの背中には大きな傷が残った。
“傷物令嬢”として揶揄される中、ローズは早々に貴族女性として生きることを諦め、隣国の帝国医学校へ入学する。
背中の傷を理由に六回も婚約を破棄されるも、18歳で隣国の医師資格を取得。自立しようとした矢先に王命による7回目の婚約が結ばれ、帰国を余儀なくされる。
7人目となる婚約者は、弱冠25歳で東の将軍となった、ヴァンドゥール公爵家次男のフェルディナンだった。
長年行方不明の想い人がいるフェルディナンと、義務ではなく愛ある結婚を夢見るローズ。そんな二人は、期間限定の条件付き婚約関係を結ぶことに同意する。
守られるだけの存在でいたくない! と思うローズは、一人の医師として自立し、同時に、今世こそは愛する人と結ばれて幸せな家庭を築きたいと願うのであったが――。
この小説は、人生の理不尽さ・不条理さに傷つき悩みながらも、幸せを求めて奮闘する女性の物語です。
※この作品は2年前に掲載していたものを大幅に改稿したものです。
(C)Elegance 2025 All Rights Reserved.無断転載・無断翻訳を固く禁じます。
悪役令嬢はあらかじめ手を打つ
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしは公爵令嬢のアレクサンドラ。
どうやら悪役令嬢に転生したみたい。
でもゲーム開始したばかりなのに、ヒロインのアリスに対する攻略対象たちの好感度はMAX。
それっておかしすぎない?
アルファポリス(以後敬称略)、小説家になろうにも掲載。
筆者は体調不良なことが多いので、コメントなどの受け取らない設定にしております。
どうぞよろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる