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「16歳」 リィリィの日記-2

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【若緑月20日】
王子とロゼッタ様のご婚約が発表された。
とはいえまだ内定で、公けでは語ってはいけないらしい。

それって発表っていうのだろうかと思うんだけど、
これを機にロゼッタ様は王子の婚約者として扱われるらしい。
そこで一定期間、問題がなければ正式な婚約者になるそう。

なんか品定めって感じでちょっと気分悪いけど、王族の結婚ってそんなものなのかな。
まぁロゼッタ様がふさわしくないと判断されることはないだろうし、二人の仲を深める期間なのかなって思う。

成金貴族の派閥では、わたしのほうが王子の婚約者にふさわしいのにって言ってる人もいて笑ってしまう。

最近の貴族の位はお金で買えると言われているし実際買えちゃうけど、さすがに男爵令嬢が王子のお相手として選ばれることはないと思う。

図書館で、久しぶりに王子にお会いした。

「ご婚約、おめでとうございます」とお伝えしたら、なんだか泣きそうな顔をされた。

一瞬、去年わたしが王子にパーティで助けられた時のように、今回はわたしがなにか王子を救う言葉をおかけしたい……なんて考えちゃった。

でも、これは慶事だ。
「おめでとうございます」以上の言葉は、ないはず。

なのにどうして、間違ったことをした気分になるんだろう。
どうしようもなく、胸が痛む。

王子にも、ロゼッタ様にも、幸せになってほしいのに。





【蛍月5日】
王子とロゼッタ様のご成婚は、卒業後すぐって噂されている。

あと2年弱。
まだまだ先のことな気がするけど、きっとすぐなんだろうな。

卒業した後のことなんて、まだかんがえたくない。
この生活が、ずっと続けばいいのに。

そろそろゲームが始まる時期が来る。
あのゲームでも、開始時期には、王子とロゼッタ様はすでにご婚約されていたんだっけ。

実際には婚約はまだ内定で、ロゼッタ様が王子の婚約者と紹介されることはない。
けど、最近のパーティでは、王子はいちばんにロゼッタ様と踊る。
それはゲームと同じだ。

ゲームでは、ヒロインであるわたしリィリィが王子と結婚するルートもあった。
そのルートが進むと、王子といちばんに踊るのはわたしになる。
でも、現実には、ありえないことだ。

……いちばんじゃなくていいから、王子と踊ってみたいな、なんてね。
お二人が踊っている姿を見て、たまに考えてしまう。
自分のあさましさが嫌になる。

実際には、最近はずっと王子を避けている。
だから、お話もほとんどしていない。

それがわたしの望んだことなのに、寂しいなんて思ってしまう。
こんなこと、考えるべきじゃないのに。

ゲームの王子ルートでは、ロゼッタ様が王子と仲がいいわたしを疎ましく思って、全力で嫌がらせをする。
それで二人の婚約が破棄されて、わたしと王子が結婚することになってた。
そしてロゼッタ様は、嫌がらせの罰として公爵家を追われ、平民として暮らす。

あの誇り高い方が、平民としてなんて暮らせるわけない。
というか美人さんだから、悪いおじさんに騙されてさらわれそう。
そんなの絶対ダメ!

ロゼッタ様は、他人に嫌がらせをするような方じゃない。
だから、ゲームのような展開はありえない。

ロゼッタ様にゲームのことを聞いてみたけど、やっぱりご存じないみたい。

この世界がゲームと似ているなんて言って、ロゼッタ様に嫌われたくないから、このことは言わないつもり。
ロゼッタ様がわたしに嫌がらせするなんてありえないし、言う必要ないだろう。

だけど万が一にもロゼッタ様を不幸にしないためにも、わたしもそろそろ婚約者を探そう。
他の人との結婚が決まれば、王子のことをつい考えるクセも治るだろうし。
いつまでも、こんなふうにぐちゃぐちゃ悩んでいるのは、よくないことだよね。
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