上 下
3 / 29

「13歳」 リィリィの日記

しおりを挟む
 【若緑月5日】
4年生なので、入寮。
なんと奇跡的に、ロゼッタ様と一緒の寮になれた!
ラッキー!!

寮長であるドラクロワ公爵令嬢のお茶会に、ロゼッタ様とふたりでお招きを受けた。

成金派と伝統派、ふたつの派閥のシンボル的存在になっているわたしたちが仲良く成長することを願っています、っておっしゃってくださった。

どうもドラクロワ公爵令嬢が、わたしたちを同じ寮にって采配してくださったっぽい。
女神か!

「もちろん仲良くしたいです」なんて答えたけど、もう仲良しだよねって
二人きりになった時言ったら、ロゼッタ様は頬を染めてうなずいてくださった。
相変わらず、かわいい。大好き。

最近、クレイン王子とときどきお話する機会があって、ちょっと王子にときめいちゃったりしたけど
やっぱり王子とは距離をおくようにしようと再決意した。

王子、いいやつなんだけどね。
ゲームでも真面目で優等生な王子様って感じで好きだったけど、
リアルクレイン王子は、王国の未来を真面目に考えてて、努力家で、尊敬する。
なにも知らなかったら、好きになっちゃっていたかも。

でもロゼッタ様も素敵な方なので、ふたりで幸せになってくれればいいなーって思う。
そう心から思えているうちに、離れようっと。



【蛍月7日】
会わないようにしようと思っているのに、王子によく会う。
今日は、図書館でお会いした。

わたしはお目付け役の侍女をひとり連れているだけだけど、王子はいつも側近の方々や側仕えの方々がご一緒だ。

側近の方や側仕えの方でも、身分的にはわたしよりずっと上の貴族だったりするので
遭遇すると緊張するんだけど、王子と目があって、微笑まれるとつい応えてしまう。

身分的にも無視はできないんだけど、それだけじゃなくて。

あの生真面目な、だけど優しい緑の目は、魔力でもあるんじゃないだろうか。
あの目で見つめられて「リィリィ」って呼ばれると、すごく心臓がどきどきする。
自分が女の子なんだって全身が叫んでいるみたいで、泣きたくなる。
切ないほど嬉しいけど、ロゼッタ様を裏切っているようで、自分が嫌になる。

とはいえ、お話した内容は、近年銀行業が発達して力を増している隣国についてという
色気なんてない会話だったんだけど。



【葡萄月12日】
ドラクロワ公爵令嬢のお供として、街へお買い物に出かけました!
警護の者たちは一緒だけど、子どもだけで街へ行くなんて初めて!
寮長は、時としてお買い物に出る必要があるんですって。
なんて素敵なの!

しかも、ロゼッタ様もご一緒。
はしゃぎすぎて、先輩たちに「めっ」とされました。
「めっ」ってかわいいな、先輩たち。
そんな怒り方じゃ、わたしのテンションは下げられません!

寮のお使いは雑多なものが多いので、王室御用達のデパートでまとめて買いました。

我が家ではけっこうデパートに出向くことも多いんだけど、ロゼッタ様たちはおうちに呼び出したことしかないんだそう。

自然な感じを装いつつ、興味深そうに周囲を眺めていらした。
かわいい。

最近はかなり高位の貴族の方もデパートに足を運ぶことが多いのは、このディスプレイや内装が素敵だからだと思う。

ロゼッタ様ももっとはしゃいでいいのよ?
なーんてね。

寮のお使いが終わっても時間に余裕があったので、ドラクロワ公爵令嬢の許可をいただいて
ふたりでおそろいのレースのハンカチを買った。

ロゼッタ様とお揃い!!
わーい!!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

その国外追放、謹んでお受けします。悪役令嬢らしく退場して見せましょう。

ユズ
恋愛
乙女ゲームの世界に転生し、悪役令嬢になってしまったメリンダ。しかもその乙女ゲーム、少し変わっていて?断罪される運命を変えようとするも失敗。卒業パーティーで冤罪を着せられ国外追放を言い渡される。それでも、やっぱり想い人の前では美しくありたい! …確かにそうは思ったけど、こんな展開は知らないのですが!? *小説家になろう様でも投稿しています

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。

木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。 彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。 こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。 だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。 そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。 そんな私に、解放される日がやって来た。 それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。 全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。 私は、自由を得たのである。 その自由を謳歌しながら、私は思っていた。 悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

悪役令嬢はどうしてこうなったと唸る

黒木メイ
恋愛
私の婚約者は乙女ゲームの攻略対象でした。 ヒロインはどうやら、逆ハー狙いのよう。 でも、キースの初めての初恋と友情を邪魔する気もない。 キースが幸せになるならと思ってさっさと婚約破棄して退場したのに……どうしてこうなったのかしら。 ※同様の内容をカクヨムやなろうでも掲載しています。

侯爵令嬢の置き土産

ひろたひかる
恋愛
侯爵令嬢マリエは婚約者であるドナルドから婚約を解消すると告げられた。マリエは動揺しつつも了承し、「私は忘れません」と言い置いて去っていった。***婚約破棄ネタですが、悪役令嬢とか転生、乙女ゲーとかの要素は皆無です。***今のところ本編を一話、別視点で一話の二話の投稿を予定しています。さくっと終わります。 「小説家になろう」でも同一の内容で投稿しております。

【完結】攻略を諦めたら騎士様に溺愛されました。悪役でも幸せになれますか?

うり北 うりこ
恋愛
メイリーンは、大好きな乙女ゲームに転生をした。しかも、ヒロインだ。これは、推しの王子様との恋愛も夢じゃない! そう意気込んで学園に入学してみれば、王子様は悪役令嬢のローズリンゼットに夢中。しかも、悪役令嬢はおかめのお面をつけている。 これは、巷で流行りの悪役令嬢が主人公、ヒロインが悪役展開なのでは? 命一番なので、攻略を諦めたら騎士様の溺愛が待っていた。

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

前世軍医だった傷物令嬢は、幸せな花嫁を夢見る

花雨宮琵
恋愛
侯爵令嬢のローズは、10歳のある日、背中に刀傷を負い生死の境をさまよう。 その時に見た夢で、軍医として生き、結婚式の直前に婚約者を亡くした前世が蘇る。 何とか一命を取り留めたものの、ローズの背中には大きな傷が残った。 “傷物令嬢”として揶揄される中、ローズは早々に貴族女性として生きることを諦め、隣国の帝国医学校へ入学する。 背中の傷を理由に六回も婚約を破棄されるも、18歳で隣国の医師資格を取得。自立しようとした矢先に王命による7回目の婚約が結ばれ、帰国を余儀なくされる。 7人目となる婚約者は、弱冠25歳で東の将軍となった、ヴァンドゥール公爵家次男のフェルディナンだった。 長年行方不明の想い人がいるフェルディナンと、義務ではなく愛ある結婚を夢見るローズ。そんな二人は、期間限定の条件付き婚約関係を結ぶことに同意する。 守られるだけの存在でいたくない! と思うローズは、一人の医師として自立し、同時に、今世こそは愛する人と結ばれて幸せな家庭を築きたいと願うのであったが――。 この小説は、人生の理不尽さ・不条理さに傷つき悩みながらも、幸せを求めて奮闘する女性の物語です。 ※この作品は2年前に掲載していたものを大幅に改稿したものです。 (C)Elegance 2025 All Rights Reserved.無断転載・無断翻訳を固く禁じます。

悪役令嬢はあらかじめ手を打つ

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしは公爵令嬢のアレクサンドラ。 どうやら悪役令嬢に転生したみたい。 でもゲーム開始したばかりなのに、ヒロインのアリスに対する攻略対象たちの好感度はMAX。 それっておかしすぎない? アルファポリス(以後敬称略)、小説家になろうにも掲載。 筆者は体調不良なことが多いので、コメントなどの受け取らない設定にしております。 どうぞよろしくお願いいたします。

処理中です...