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あるいは、逆にシャナル王子を王位につけないために、王族にふさわしい魔力をもたないわたくしと結婚させようとしている、ということも考えられるだろうか。
いいえ。
おそらく、それはありえない。
わたくしの魔力はそう強くはないけれども、王配に望まれる魔力はそう多くはない。
現に、現王配であるスノー様の魔力よりは、恐れ多いことだけれども、わたくしの魔力のほうが多いのではないかと思う。
王となる方があまり魔力が強くなく、王配の力添えを必要とするのであればまた事情も変わるだろうけれども、シャナル王子については、そのような心配もない。
わたくしと結婚することで、シャナル王子を王位から遠ざける企みというのは、あまりなさそうだ。
ということは、わたくしが把握していない「なにか」の事情があるのだろう。
考えているうちに、王子宮に到着していた。
シスレイの後について、宮に入り、先に出勤されている皆様にご挨拶をする。
ひととおりの挨拶を終えると、ハウアー様に小部屋に呼び出された。
「リーリア・ハッセン。昨夜はきちんと睡眠をとれましたか?」
「……はい。皆様のお心遣いのおかげで、平常通りの休息を得られました」
強がりまじりのわたくしの返答に、ハウアー様はじっとわたくしの顔をのぞきこみ、観察される。
そして、「ふむ」とうなずかれた。
「まぁ、いいでしょう。体調管理も、我々の大切な職務のひとつです。貴女が王城に勤めている限り、貴女の立場がどう変わろうと、そのことは変わりません。忙しいからといって、睡眠や食事をおろそかにし、体調を崩すのは、職務に反すると覚えておきなさい」
「はい」
ハウアー様のお言葉は、時折とても厳しく、正しい。
そしてその正しさは、いつも誰かを想っての正しさなのだ。
今回のお言葉は、わたくしのためのお言葉だ。
現在のわたくしは、王都においてはハッセン公爵の一時代理のようなものだ。
それはわたくしには重すぎる任で、わたくしは気を抜けばすぐにその重責にのまれるだろう。
ハウアー様はそれを予見して、睡眠と食事はきちんととるようにと伝えてくださっている。
シャナル王子の筆頭側仕えとして、王子を危険にさらす一因となったわたくしにおもうところがないわけではないだろうに、こうして気遣ってくださる。
信頼のできる方なのだと、思う。
だからこそ、わたくしとシャナル王子の噂について、どのようにお考えなのかと思うと、恐ろしかった。
わたくしはハウアー様のお言葉を聞きながら、先ほどの話をハウアー様が切り出されるのを怯えつつ待っていた。
けれども、ハウアー様は言葉を切ると、とつぜんわたくしへと頭を下げた。
いいえ。
おそらく、それはありえない。
わたくしの魔力はそう強くはないけれども、王配に望まれる魔力はそう多くはない。
現に、現王配であるスノー様の魔力よりは、恐れ多いことだけれども、わたくしの魔力のほうが多いのではないかと思う。
王となる方があまり魔力が強くなく、王配の力添えを必要とするのであればまた事情も変わるだろうけれども、シャナル王子については、そのような心配もない。
わたくしと結婚することで、シャナル王子を王位から遠ざける企みというのは、あまりなさそうだ。
ということは、わたくしが把握していない「なにか」の事情があるのだろう。
考えているうちに、王子宮に到着していた。
シスレイの後について、宮に入り、先に出勤されている皆様にご挨拶をする。
ひととおりの挨拶を終えると、ハウアー様に小部屋に呼び出された。
「リーリア・ハッセン。昨夜はきちんと睡眠をとれましたか?」
「……はい。皆様のお心遣いのおかげで、平常通りの休息を得られました」
強がりまじりのわたくしの返答に、ハウアー様はじっとわたくしの顔をのぞきこみ、観察される。
そして、「ふむ」とうなずかれた。
「まぁ、いいでしょう。体調管理も、我々の大切な職務のひとつです。貴女が王城に勤めている限り、貴女の立場がどう変わろうと、そのことは変わりません。忙しいからといって、睡眠や食事をおろそかにし、体調を崩すのは、職務に反すると覚えておきなさい」
「はい」
ハウアー様のお言葉は、時折とても厳しく、正しい。
そしてその正しさは、いつも誰かを想っての正しさなのだ。
今回のお言葉は、わたくしのためのお言葉だ。
現在のわたくしは、王都においてはハッセン公爵の一時代理のようなものだ。
それはわたくしには重すぎる任で、わたくしは気を抜けばすぐにその重責にのまれるだろう。
ハウアー様はそれを予見して、睡眠と食事はきちんととるようにと伝えてくださっている。
シャナル王子の筆頭側仕えとして、王子を危険にさらす一因となったわたくしにおもうところがないわけではないだろうに、こうして気遣ってくださる。
信頼のできる方なのだと、思う。
だからこそ、わたくしとシャナル王子の噂について、どのようにお考えなのかと思うと、恐ろしかった。
わたくしはハウアー様のお言葉を聞きながら、先ほどの話をハウアー様が切り出されるのを怯えつつ待っていた。
けれども、ハウアー様は言葉を切ると、とつぜんわたくしへと頭を下げた。
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