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サラベス王 1
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息子というのは、いくつになってもかわいいものだ。
特に、その息子がまだ成人もしていない幼い子であれば、なおさら。
生まじめな顔でわたしを見るコンラッドを見つめて、しみじみ思う。
「母上。お時間いただき、ありがとうございます」
「そんなかしこまらなくていいのに」
一礼して部屋を出ていこうとするコンラッドに言えば、困ったような顔で笑う。
コンラッドが小翼になってから、ますます距離がひらいた気がする。
困ったものだ。
親子とはいえ、わたしが王として多忙なため、コンラッドと会話らしい会話をしたのも久しぶりだったのに。
そそくさと部屋を出ていく息子の後ろ姿に、ため息がでる。
その久しぶりの話の内容も、養子である末弟シャナルを危険地帯に送ったことへの苦言だとは、すこし寂しい。
わたしに似た地味な容姿に、わたしより数段劣る魔力をもつコンラッドは、王族として自分ができることを常に模索している。
今回のシャナル王子の件にしても、王であるわたしに苦言を呈するのが、実子である自分の役目と考えてのことだろう。
わたしの子どもでさえなければ、王族としてもぎりぎり通用する魔力を持つコンラッドは、決して魔力が弱いほうではない。
だが、わたしの実子として生まれたがゆえ、苦労させていると思う。
魔力は親から子へと受け継がれるわけではない。
そんなこと子どもだって知っているというのに、王の子には王としてふさわしい魔力をと望む層がいなくならないのは、なんなのだろうか。
わたしは、ふぅとため息をついた。
スノーが、ぽんと頭をたたく。
「今日もお疲れ様」
「うん、疲れた」
しみじみ言うと、スノーは「くくく」と人の悪い笑い声をあげる。
むぅと睨めば、ますますスノーは笑顔を深くした。
その笑顔に、どきりと胸が騒ぐ。
……まったく、この男は。
わたしより3歳年下なだけで、もうすぐ50歳に手が届こうという年齢なのに、どうしてこうも美しいのだろう。
歳を経て、顔立ちも若いころのように妖精のような美少年とはいえなくなっているのだが、ますます神々しく美しくなっている気がする。
神にでもなる気かと、なんだか憎たらしい。
こちらは年齢相応に老け、もともとの地味な容姿がますます残念になってきているというのに。
隣にたって「妻です」と胸をはらねばならないわたしのことも少しは考えて美しくなってほしいものだ。
スノーは、人前では常に穏やかで、王であるわたしをたててくれている。
なのに、二人きりでいるときは少しばかり意地悪だ。
けれどスノーの意地悪な笑顔には、昔から弱い。
この顔を見ると、どうしようもなく胸が騒ぎ、あぁ、この男が好きだなと思う。
連れ添って30年にもなるのに、この感情はなんなのだろうなぁ。
一般的に、魔力の強い人間は、愛情についても一途で強い。
例外はあれど、基本的に魔力の強い人間は、その能力に比例するように、一途に恋をする。
だから王であるわたしが、いい年齢をして少女のように夫にときめくのも無理はないと思うのだが、そんな自分が気恥ずかしい時もある。
だがスノーがいたからこそ、わたしは王になった。
そしてこれまでの在位をつとめあげられたのも、スノーという夫がいたからだ。
今でこそ王としてこの国を愛しているわたしだが、若いころは正直、国とかどうでもよかった。
わたしが王になったのは、単純に愛するスノーがそれを望んだからだ。
スノーは若いころからずっと、この国を愛し、民を愛し、自分にできることを模索していた。
そして王としての能力をもつわたしに、王となるよう願い出た。
その時、王になれるのは実質わたししかいなかったからだ。
特に、その息子がまだ成人もしていない幼い子であれば、なおさら。
生まじめな顔でわたしを見るコンラッドを見つめて、しみじみ思う。
「母上。お時間いただき、ありがとうございます」
「そんなかしこまらなくていいのに」
一礼して部屋を出ていこうとするコンラッドに言えば、困ったような顔で笑う。
コンラッドが小翼になってから、ますます距離がひらいた気がする。
困ったものだ。
親子とはいえ、わたしが王として多忙なため、コンラッドと会話らしい会話をしたのも久しぶりだったのに。
そそくさと部屋を出ていく息子の後ろ姿に、ため息がでる。
その久しぶりの話の内容も、養子である末弟シャナルを危険地帯に送ったことへの苦言だとは、すこし寂しい。
わたしに似た地味な容姿に、わたしより数段劣る魔力をもつコンラッドは、王族として自分ができることを常に模索している。
今回のシャナル王子の件にしても、王であるわたしに苦言を呈するのが、実子である自分の役目と考えてのことだろう。
わたしの子どもでさえなければ、王族としてもぎりぎり通用する魔力を持つコンラッドは、決して魔力が弱いほうではない。
だが、わたしの実子として生まれたがゆえ、苦労させていると思う。
魔力は親から子へと受け継がれるわけではない。
そんなこと子どもだって知っているというのに、王の子には王としてふさわしい魔力をと望む層がいなくならないのは、なんなのだろうか。
わたしは、ふぅとため息をついた。
スノーが、ぽんと頭をたたく。
「今日もお疲れ様」
「うん、疲れた」
しみじみ言うと、スノーは「くくく」と人の悪い笑い声をあげる。
むぅと睨めば、ますますスノーは笑顔を深くした。
その笑顔に、どきりと胸が騒ぐ。
……まったく、この男は。
わたしより3歳年下なだけで、もうすぐ50歳に手が届こうという年齢なのに、どうしてこうも美しいのだろう。
歳を経て、顔立ちも若いころのように妖精のような美少年とはいえなくなっているのだが、ますます神々しく美しくなっている気がする。
神にでもなる気かと、なんだか憎たらしい。
こちらは年齢相応に老け、もともとの地味な容姿がますます残念になってきているというのに。
隣にたって「妻です」と胸をはらねばならないわたしのことも少しは考えて美しくなってほしいものだ。
スノーは、人前では常に穏やかで、王であるわたしをたててくれている。
なのに、二人きりでいるときは少しばかり意地悪だ。
けれどスノーの意地悪な笑顔には、昔から弱い。
この顔を見ると、どうしようもなく胸が騒ぎ、あぁ、この男が好きだなと思う。
連れ添って30年にもなるのに、この感情はなんなのだろうなぁ。
一般的に、魔力の強い人間は、愛情についても一途で強い。
例外はあれど、基本的に魔力の強い人間は、その能力に比例するように、一途に恋をする。
だから王であるわたしが、いい年齢をして少女のように夫にときめくのも無理はないと思うのだが、そんな自分が気恥ずかしい時もある。
だがスノーがいたからこそ、わたしは王になった。
そしてこれまでの在位をつとめあげられたのも、スノーという夫がいたからだ。
今でこそ王としてこの国を愛しているわたしだが、若いころは正直、国とかどうでもよかった。
わたしが王になったのは、単純に愛するスノーがそれを望んだからだ。
スノーは若いころからずっと、この国を愛し、民を愛し、自分にできることを模索していた。
そして王としての能力をもつわたしに、王となるよう願い出た。
その時、王になれるのは実質わたししかいなかったからだ。
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