113 / 190
エミリオ 9
しおりを挟むリーリア姉様は、なにをするにも一生懸命ってかんじだ。
その真剣な目で見つめられると、なんか、こう……照れるんだよなぁ。
「っと、ですね。えーと。なんていうか、街の噂って、娯楽なんですよ。ほら、王族とかって有名じゃないですか。で、女の子って恋愛話が好きなので、きゃぁきゃぁ言っているだけっていうか」
「ええ。まぁ、わたくしも女の子の末席にはおりますので、わかります」
リーリア姉様は、真面目にうなずく。
っていうか、リーリア姉様も恋愛話とか、興味あるんだ。
意外って言ったら怒られるかな?
けど、ぜんぜんそんな感じなかったけど。
「話を楽しむための種みたいなものなので、噂の真偽はそんなに重要じゃないんですよ。真実なんて、二の次です。面白ければ面白いほうがいいってもんなんで、こうも話が広まった後に、面白味のない真実なんて広めてもぜんぜん広がらないと思います」
「真実よりも、面白味のほうが重んじられるのですか?」
「王族のうわさ話なんて、そういうもんなんですって。庶民には、王子様なんて雲の上の人ですからね。自分たちの噂が、相手の耳に入るなんて考えてもみませんし」
「そうですか……」
リーリア姉様はがっくりとうなだれて、また考え込む。
うーん、なんかまた難しく考えているな。
「だから、心配無用ってことですよ。放っておいたら、そのうちみんな飽きて、沈静化しますって。なんか新しいネタがあれば盛り上がることもあるでしょうけど、王子様が8歳なら、婚約とかはないんですよね?」
「……ええ。その心配はありません」
安心させるつもりで言ったのに、リーリア姉様はまだ難しい顔だ。
リーリア姉様にかぎって疑ってるってことはないと思うけど、俺が面倒だから断ったんじゃないよってこと、はっきり言っておこう。
「それに、リーリア姉様と噂のある王子が8歳だと知られれば、それはそれで年の差恋愛だとかで盛り上がる層と、実は別の王子が相手なんじゃないかってお相手探しに盛り上がる層で、逆に噂が広まりやすいと思うんですよ。だから、噂はこのまま風化するのを待つほうがいいですよ」
「……そう」
あ、リーリア姉様、また落ち込んじゃったな。
やべーかな。
でもなぁ、この手の噂話なんてほうっておく以上の手段ってないんだよなぁ。
力になれなくて残念だけど、ハッセン公爵やガイ様のことで落ち込んでいるよりは、王子様との噂についてかんがえているほうが気も楽だろう。
案外リーリア姉様も無意識では、家族の安否を考えたくなくて、こんなこと言いだしているのかも。
……しかしほんとうにわかりにくい子だよなぁ。
好きになるのはやっかいすぎるって思うんだけど、なぁ。
0
お気に入りに追加
137
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された侯爵令嬢は、元婚約者の側妃にされる前に悪役令嬢推しの美形従者に隣国へ連れ去られます
葵 遥菜
恋愛
アナベル・ハワード侯爵令嬢は婚約者のイーサン王太子殿下を心から慕い、彼の伴侶になるための勉強にできる限りの時間を費やしていた。二人の仲は順調で、結婚の日取りも決まっていた。
しかし、王立学園に入学したのち、イーサン王太子は真実の愛を見つけたようだった。
お相手はエリーナ・カートレット男爵令嬢。
二人は相思相愛のようなので、アナベルは将来王妃となったのち、彼女が側妃として召し上げられることになるだろうと覚悟した。
「悪役令嬢、アナベル・ハワード! あなたにイーサン様は渡さない――!」
アナベルはエリーナから「悪」だと断じられたことで、自分の存在が二人の邪魔であることを再認識し、エリーナが王妃になる道はないのかと探り始める――。
「エリーナ様を王妃に据えるにはどうしたらいいのかしらね、エリオット?」
「一つだけ方法がございます。それをお教えする代わりに、私と約束をしてください」
「どんな約束でも守るわ」
「もし……万が一、王太子殿下がアナベル様との『婚約を破棄する』とおっしゃったら、私と一緒に隣国ガルディニアへ逃げてください」
これは、悪役令嬢を溺愛する従者が合法的に推しを手に入れる物語である。
※タイトル通りのご都合主義なお話です。
※他サイトにも投稿しています。
目が覚めたら夫と子供がいました
青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。
1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。
「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」
「…あなた誰?」
16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。
シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。
そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。
なろう様でも同時掲載しています。
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
光の王太子殿下は愛したい
葵川真衣
恋愛
王太子アドレーには、婚約者がいる。公爵令嬢のクリスティンだ。
わがままな婚約者に、アドレーは元々関心をもっていなかった。
だが、彼女はあるときを境に変わる。
アドレーはそんなクリスティンに惹かれていくのだった。しかし彼女は変わりはじめたときから、よそよそしい。
どうやら、他の少女にアドレーが惹かれると思い込んでいるようである。
目移りなどしないのに。
果たしてアドレーは、乙女ゲームの悪役令嬢に転生している婚約者を、振り向かせることができるのか……!?
ラブラブを望む王太子と、未来を恐れる悪役令嬢の攻防のラブ(?)コメディ。
☆完結しました。ありがとうございました。番外編等、不定期更新です。
婚約破棄は踊り続ける
お好み焼き
恋愛
聖女が現れたことによりルベデルカ公爵令嬢はルーベルバッハ王太子殿下との婚約を白紙にされた。だがその半年後、ルーベルバッハが訪れてきてこう言った。
「聖女は王太子妃じゃなく神の花嫁となる道を選んだよ。頼むから結婚しておくれよ」
転生した悪役令嬢は破滅エンドを避けるため、魔法を極めたらなぜか攻略対象から溺愛されました
平山和人
恋愛
悪役令嬢のクロエは八歳の誕生日の時、ここが前世でプレイしていた乙女ゲーム『聖魔と乙女のレガリア』の世界であることを知る。
クロエに割り振られたのは、主人公を虐め、攻略対象から断罪され、破滅を迎える悪役令嬢としての人生だった。
そんな結末は絶対嫌だとクロエは敵を作らないように立ち回り、魔法を極めて断罪フラグと破滅エンドを回避しようとする。
そうしていると、なぜかクロエは家族を始め、周りの人間から溺愛されるのであった。しかも本来ならば主人公と結ばれるはずの攻略対象からも
深く愛されるクロエ。果たしてクロエの破滅エンドは回避できるのか。
悪役令嬢に転生したので、やりたい放題やって派手に散るつもりでしたが、なぜか溺愛されています
平山和人
恋愛
伯爵令嬢であるオフィーリアは、ある日、前世の記憶を思い出す、前世の自分は平凡なOLでトラックに轢かれて死んだことを。
自分が転生したのは散財が趣味の悪役令嬢で、王太子と婚約破棄の上、断罪される運命にある。オフィーリアは運命を受け入れ、どうせ断罪されるなら好きに生きようとするが、なぜか周囲から溺愛されてしまう。
【完結】私ですか?ただの令嬢です。
凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!?
バッドエンドだらけの悪役令嬢。
しかし、
「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」
そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。
運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語!
※完結済です。
※作者がシステムに不慣れな時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる