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エミリオ 9

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リーリア姉様は、なにをするにも一生懸命ってかんじだ。
その真剣な目で見つめられると、なんか、こう……照れるんだよなぁ。

「っと、ですね。えーと。なんていうか、街の噂って、娯楽なんですよ。ほら、王族とかって有名じゃないですか。で、女の子って恋愛話が好きなので、きゃぁきゃぁ言っているだけっていうか」

「ええ。まぁ、わたくしも女の子の末席にはおりますので、わかります」

リーリア姉様は、真面目にうなずく。
っていうか、リーリア姉様も恋愛話とか、興味あるんだ。
意外って言ったら怒られるかな?
けど、ぜんぜんそんな感じなかったけど。

「話を楽しむための種みたいなものなので、噂の真偽はそんなに重要じゃないんですよ。真実なんて、二の次です。面白ければ面白いほうがいいってもんなんで、こうも話が広まった後に、面白味のない真実なんて広めてもぜんぜん広がらないと思います」

「真実よりも、面白味のほうが重んじられるのですか?」

「王族のうわさ話なんて、そういうもんなんですって。庶民には、王子様なんて雲の上の人ですからね。自分たちの噂が、相手の耳に入るなんて考えてもみませんし」

「そうですか……」

リーリア姉様はがっくりとうなだれて、また考え込む。
うーん、なんかまた難しく考えているな。

「だから、心配無用ってことですよ。放っておいたら、そのうちみんな飽きて、沈静化しますって。なんか新しいネタがあれば盛り上がることもあるでしょうけど、王子様が8歳なら、婚約とかはないんですよね?」

「……ええ。その心配はありません」

安心させるつもりで言ったのに、リーリア姉様はまだ難しい顔だ。
リーリア姉様にかぎって疑ってるってことはないと思うけど、俺が面倒だから断ったんじゃないよってこと、はっきり言っておこう。

「それに、リーリア姉様と噂のある王子が8歳だと知られれば、それはそれで年の差恋愛だとかで盛り上がる層と、実は別の王子が相手なんじゃないかってお相手探しに盛り上がる層で、逆に噂が広まりやすいと思うんですよ。だから、噂はこのまま風化するのを待つほうがいいですよ」

「……そう」

あ、リーリア姉様、また落ち込んじゃったな。
やべーかな。
でもなぁ、この手の噂話なんてほうっておく以上の手段ってないんだよなぁ。

力になれなくて残念だけど、ハッセン公爵やガイ様のことで落ち込んでいるよりは、王子様との噂についてかんがえているほうが気も楽だろう。
案外リーリア姉様も無意識では、家族の安否を考えたくなくて、こんなこと言いだしているのかも。

……しかしほんとうにわかりにくい子だよなぁ。
好きになるのはやっかいすぎるって思うんだけど、なぁ。
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