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シスレイと一緒に休憩をいただいたので、そそくさと休憩室へ向かう。
お茶と小さなタルトをいただいて、わたくしとシスレイは「ふぅ」とため息をついた。
そのタイミングが同時だったので、おたがいに顔を見合わせて笑ってしまう。
「……自分から願い出てふがいないことですけれども、疲れましたわ……」
「わたくしも。一度はここで小翼見習いをしていたのですから、もっと簡単になじめると思っておりました」
「なんというか……、別世界ですわね」
シスレイはしみじみと言って、真剣な顔でわたくしに頭をさげた。
「リーリア。いまさらですけれども、ごめんなさい。あなたを利用して、王子宮で働かせてもらって」
「頭をあげて、シスレイ。わたくしも了承したことですわ」
昨日も何度も謝ってもらったのだ。
確かにシスレイの行動は、文化部の小翼として望ましいとはいえなかったし、わたくしも仰天した。
けれども、シャナル王子も、リンダ様も許されたことだ。
いまさら謝罪してもらうこともない。
シスレイはわたくしの言葉に頭をあげ、けれど唇をかみながら言う。
「いいえ。わたくし、わかっていなかったの。シャナル王子が真剣にあなたを配偶者にと望んでいらしたなんて。王子宮の方々が、それを後押ししていたなんて……」
「それは、わたくしも一緒よ、シスレイ」
シスレイは配慮が足りなかったと謝るけれども、その件で最も責められるべきはわたくしだ。
真剣にとりあっているつもりで、所詮子どものことだとあしらっていたのだ。
自分だって、お兄様に恋をしたのは、あの年頃だったというのに。
その思いを子どもの戯言などとかたづけるのなら、そのころからずっとお兄様を思い続けているわたくしのこの恋情はなんだというのだ。
「わたくし、好きな方がいるの」
「え……」
今まで、文化部の小翼の女子が集まって恋の話をしている時も、わたくしはただみんなの話を聞いているだけだった。
だからシスレイは、とうとつなわたくしの言葉に戸惑いをうかべる。
「シャナル王子にも、そのことをお伝えするわ」
決意を固めるように、わたくしはそう言った。
シャナル王子に、好きな人がいると言わなかったのは、このことがお兄様の耳に入って、お兄様をこまらせないため。
公けの場でわたくしの想いを表明してしまえば、お兄様はわたくしへの家族愛や義務的な感情から、わたくしを受け入れてくださるかもしれないと思っていたから。
お兄様を、困らせたくなかった。
でも、本当はそれだけじゃない。
お兄様ご本人に大好きだと伝えながらも、わたくしは、それを家族愛だとごまかせるように……、お兄様にこの想いを拒絶されても逃げられるように逃げ道を作っていた。
シャナル王子に、お兄様という好きな人がいるから王子の気持ちは受け入れられないと言えなかったのも、この件が耳に入って、お兄様に拒絶されるのが怖かったからでもある。
そうやって狡い自分を隠して、王子はまだ子どもだからと誤魔化してきたのだ。
そのせいでシャナル王子は、ご自分の気持ちを公言なさるようになり、王子宮の方々は王子を思われるがゆえに年の差や魔力量の差などに目をつむり、わたくしを王子の妻にと望まれるようになってしまった。
王子宮の方々の常識が違うとか、ふつう8歳の子どもの求婚を真に受けないなどということは、言い訳だ。
そのこと自体は今でもまちがっているとは思えないけれども、なによりもわたくしが早々にシャナル王子にただ「他に好きな人がいる」とお伝えすればよかっただけのことだ。
わたくしは、もう15歳なのだ。
逃げてばかりいるわけには、いかない。
お茶と小さなタルトをいただいて、わたくしとシスレイは「ふぅ」とため息をついた。
そのタイミングが同時だったので、おたがいに顔を見合わせて笑ってしまう。
「……自分から願い出てふがいないことですけれども、疲れましたわ……」
「わたくしも。一度はここで小翼見習いをしていたのですから、もっと簡単になじめると思っておりました」
「なんというか……、別世界ですわね」
シスレイはしみじみと言って、真剣な顔でわたくしに頭をさげた。
「リーリア。いまさらですけれども、ごめんなさい。あなたを利用して、王子宮で働かせてもらって」
「頭をあげて、シスレイ。わたくしも了承したことですわ」
昨日も何度も謝ってもらったのだ。
確かにシスレイの行動は、文化部の小翼として望ましいとはいえなかったし、わたくしも仰天した。
けれども、シャナル王子も、リンダ様も許されたことだ。
いまさら謝罪してもらうこともない。
シスレイはわたくしの言葉に頭をあげ、けれど唇をかみながら言う。
「いいえ。わたくし、わかっていなかったの。シャナル王子が真剣にあなたを配偶者にと望んでいらしたなんて。王子宮の方々が、それを後押ししていたなんて……」
「それは、わたくしも一緒よ、シスレイ」
シスレイは配慮が足りなかったと謝るけれども、その件で最も責められるべきはわたくしだ。
真剣にとりあっているつもりで、所詮子どものことだとあしらっていたのだ。
自分だって、お兄様に恋をしたのは、あの年頃だったというのに。
その思いを子どもの戯言などとかたづけるのなら、そのころからずっとお兄様を思い続けているわたくしのこの恋情はなんだというのだ。
「わたくし、好きな方がいるの」
「え……」
今まで、文化部の小翼の女子が集まって恋の話をしている時も、わたくしはただみんなの話を聞いているだけだった。
だからシスレイは、とうとつなわたくしの言葉に戸惑いをうかべる。
「シャナル王子にも、そのことをお伝えするわ」
決意を固めるように、わたくしはそう言った。
シャナル王子に、好きな人がいると言わなかったのは、このことがお兄様の耳に入って、お兄様をこまらせないため。
公けの場でわたくしの想いを表明してしまえば、お兄様はわたくしへの家族愛や義務的な感情から、わたくしを受け入れてくださるかもしれないと思っていたから。
お兄様を、困らせたくなかった。
でも、本当はそれだけじゃない。
お兄様ご本人に大好きだと伝えながらも、わたくしは、それを家族愛だとごまかせるように……、お兄様にこの想いを拒絶されても逃げられるように逃げ道を作っていた。
シャナル王子に、お兄様という好きな人がいるから王子の気持ちは受け入れられないと言えなかったのも、この件が耳に入って、お兄様に拒絶されるのが怖かったからでもある。
そうやって狡い自分を隠して、王子はまだ子どもだからと誤魔化してきたのだ。
そのせいでシャナル王子は、ご自分の気持ちを公言なさるようになり、王子宮の方々は王子を思われるがゆえに年の差や魔力量の差などに目をつむり、わたくしを王子の妻にと望まれるようになってしまった。
王子宮の方々の常識が違うとか、ふつう8歳の子どもの求婚を真に受けないなどということは、言い訳だ。
そのこと自体は今でもまちがっているとは思えないけれども、なによりもわたくしが早々にシャナル王子にただ「他に好きな人がいる」とお伝えすればよかっただけのことだ。
わたくしは、もう15歳なのだ。
逃げてばかりいるわけには、いかない。
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