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ガイ 5
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まだリアの傍にいたかったが、昼食後エミリオを教師たちと顔合わせさせなければならなかった。
顔色を青くさせながら気丈に微笑んで送り出してくれたリアに心を残しながらも、エミリオを教師に引き合わせる。
エミリオにとっても私の話は重かったようで、しばらくはこわばった表情をうかべていた。
が、教師たちと顔を合わせると、エミリオは次第に快活な調子を取り戻した。
「至らないことが多いと思いますが、体力には自信があります!よろしくお願いします」
ハキハキと快活に話し、親し気でありながら相手への敬意を表すエミリオに、教師たちも仕事として以上の好意を感じたようだ。
「こちらこそ。ハッセン公爵の養子をお教えできる機会をいただき、光栄です」
「数か月もすれば、見習いとして王城にあがるんだろう?ビシバシ鍛えるから、覚悟しておけよ」
「うっ。頑張ります!」
笑顔で礼を交わすエミリオと教師たちを見て、自分とエミリオの違いを改めて感じる。
私の教師たちも優秀だし、熱心に私を教えてくれた。
だが、こんなふうに親しみをもって接してはくれなかった。
もちろん熱心に指導してくれた彼らに不満などない。
が、エミリオの人好きする雰囲気は私にはない。
かわいがってくださる方もいるものの、私はあまり人と親しくなるのが上手ではない。
エミリオがひきだす教師たちの態度に、劣等感を刺激された。
とはいえ、私自身エミリオを認めざるを得ない。
彼がファラン商会とつながりがあるということは知っていた。
が、跡取りであるマリオから様々な情報を得ているとは知らなかった。
ザーシュ海での異変について、……ハッセン公爵から取り扱いに注意するよう教わったばかりの情報を、まだハッセン公爵家に入ったばかりの彼に与えてもよいものか迷っていた私が、イプセン国の内情まで口にしたのは、彼が持つ情報に価値を感じたからだ。
海賊ラジントンの話は、初めて聞いた。
義賊という存在は、私の情報源である王族貴族の間では重視されず、庶民の間ではもてはやされるからだろう。
私も庶民からも積極的に情報を集めようとしているのだが、庶民の情報は幅広く雑多で、有用なものを手にするのは難しい。
ファラン商会という情報源を持つエミリオは、ハッセン公爵家に思いがけない利益をもたらしてくれるかもしれない。
リーリアは義賊について一定の評価を示したが、義賊といっても、盗賊である。
人から盗むというなら、暴力をもって行うこともあるだろう。
悪事を行えば、人の魂は汚れる。
首領たち上層部の人間は、その穢れを退けられるほど強い心をもって盗賊行為に手を出していたとしても、海賊ラジントンが組織である以上、強い心をもたない人間もいるはずだ。
盗賊行為で人様の財産を奪うことに慣れた人間が、悪事で私財をこやした貴族だけでなく、被害者の善悪を問わず盗みを行うようになるのは、時間の問題だろう。
ザーシュ海が最近騒がしいというのも、海賊ラジントンの存在が影響しているのかもしれない。
エミリオと教師たちが明日以降の打ち合わせを始めたので、私は席を外した。
海賊ラジントンについて調べるよう部下に命令を追加し、執事からはリアが王城へ向かったとの報告を受ける。
リアは今日、仕事は休みだったはずだ。
おそらく私が口にしたイプセンの情報について、調べに言ったのだろう。
その生真面目さがほほえましく、いとおしい。
彼女が、昼食の席でエミリオに何度か見惚れていたのに気づいていた。
リアは、貴族としての新しい生き方を積極的に受け入れようとするエミリオを、好まし気に眺めていた。
そしてエミリオと楽しそうに、会話を弾ませていた。
リアは優しい少女なので、新しく迎えた弟を気遣っているだけだと思おうとした。
しかしエミリオは私には真似できない魅力を持つ少年だ。
リアも、彼に心惹かれたのかもしれないと考えてしまう。
話を弾ませる二人の間に、何度も割って入ったことを、リアに気づかれただろうか。
自分の余裕のなさが恥ずかしい。
だがリアを知って心惹かれない男がいるとは思えない。
彼女と親しくあるのは、私だけならいいのにと願わずにはいられない。
ただでさえ、王城にはやっかいな男がいるというのに……。
顔色を青くさせながら気丈に微笑んで送り出してくれたリアに心を残しながらも、エミリオを教師に引き合わせる。
エミリオにとっても私の話は重かったようで、しばらくはこわばった表情をうかべていた。
が、教師たちと顔を合わせると、エミリオは次第に快活な調子を取り戻した。
「至らないことが多いと思いますが、体力には自信があります!よろしくお願いします」
ハキハキと快活に話し、親し気でありながら相手への敬意を表すエミリオに、教師たちも仕事として以上の好意を感じたようだ。
「こちらこそ。ハッセン公爵の養子をお教えできる機会をいただき、光栄です」
「数か月もすれば、見習いとして王城にあがるんだろう?ビシバシ鍛えるから、覚悟しておけよ」
「うっ。頑張ります!」
笑顔で礼を交わすエミリオと教師たちを見て、自分とエミリオの違いを改めて感じる。
私の教師たちも優秀だし、熱心に私を教えてくれた。
だが、こんなふうに親しみをもって接してはくれなかった。
もちろん熱心に指導してくれた彼らに不満などない。
が、エミリオの人好きする雰囲気は私にはない。
かわいがってくださる方もいるものの、私はあまり人と親しくなるのが上手ではない。
エミリオがひきだす教師たちの態度に、劣等感を刺激された。
とはいえ、私自身エミリオを認めざるを得ない。
彼がファラン商会とつながりがあるということは知っていた。
が、跡取りであるマリオから様々な情報を得ているとは知らなかった。
ザーシュ海での異変について、……ハッセン公爵から取り扱いに注意するよう教わったばかりの情報を、まだハッセン公爵家に入ったばかりの彼に与えてもよいものか迷っていた私が、イプセン国の内情まで口にしたのは、彼が持つ情報に価値を感じたからだ。
海賊ラジントンの話は、初めて聞いた。
義賊という存在は、私の情報源である王族貴族の間では重視されず、庶民の間ではもてはやされるからだろう。
私も庶民からも積極的に情報を集めようとしているのだが、庶民の情報は幅広く雑多で、有用なものを手にするのは難しい。
ファラン商会という情報源を持つエミリオは、ハッセン公爵家に思いがけない利益をもたらしてくれるかもしれない。
リーリアは義賊について一定の評価を示したが、義賊といっても、盗賊である。
人から盗むというなら、暴力をもって行うこともあるだろう。
悪事を行えば、人の魂は汚れる。
首領たち上層部の人間は、その穢れを退けられるほど強い心をもって盗賊行為に手を出していたとしても、海賊ラジントンが組織である以上、強い心をもたない人間もいるはずだ。
盗賊行為で人様の財産を奪うことに慣れた人間が、悪事で私財をこやした貴族だけでなく、被害者の善悪を問わず盗みを行うようになるのは、時間の問題だろう。
ザーシュ海が最近騒がしいというのも、海賊ラジントンの存在が影響しているのかもしれない。
エミリオと教師たちが明日以降の打ち合わせを始めたので、私は席を外した。
海賊ラジントンについて調べるよう部下に命令を追加し、執事からはリアが王城へ向かったとの報告を受ける。
リアは今日、仕事は休みだったはずだ。
おそらく私が口にしたイプセンの情報について、調べに言ったのだろう。
その生真面目さがほほえましく、いとおしい。
彼女が、昼食の席でエミリオに何度か見惚れていたのに気づいていた。
リアは、貴族としての新しい生き方を積極的に受け入れようとするエミリオを、好まし気に眺めていた。
そしてエミリオと楽しそうに、会話を弾ませていた。
リアは優しい少女なので、新しく迎えた弟を気遣っているだけだと思おうとした。
しかしエミリオは私には真似できない魅力を持つ少年だ。
リアも、彼に心惹かれたのかもしれないと考えてしまう。
話を弾ませる二人の間に、何度も割って入ったことを、リアに気づかれただろうか。
自分の余裕のなさが恥ずかしい。
だがリアを知って心惹かれない男がいるとは思えない。
彼女と親しくあるのは、私だけならいいのにと願わずにはいられない。
ただでさえ、王城にはやっかいな男がいるというのに……。
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