10 / 190
10
しおりを挟む
ゲームの中のわたくしは自分が修道院に入ることを呪っていた。
今の、わたくしにはそこまでの忌避感はない。
もちろん修道院に入るということは、お兄様の伴侶に選ばれなかったということで、それはとても悲しい。
けれどお兄様以外の方に嫁がされることと比べれば、そう嘆くことないと思う。
公爵家を追い出されたことも、ゲームのわたくしは呪っていた。
けれど、そもそも「そこそこ」程度の実力しかないわたくしが公爵家を継ぐ可能性があるとすれば、当主の妻に選ばれる以外方法はない。
自身が公爵家の当主となりこの家に残ることは、お兄様がハッセン公爵家の養子となり、その実力を目の当たりにしたときにあきらめがついていた。
現実的にわたくしが選べる将来は、成人までに「そこそこ」の実力の人間が発揮できる最大限の能力を発揮して、貴族は無理でも礼族の当主となること。
あるいは貴族や礼族の異性に選ばれ、彼らの伴侶となること。
そしてまたあるいは、ゲームと同じく修道院に入り、神への祈りをささげることを人生の喜びとすることくらいだろう。
わたくしに施された教育をかんがみても、今更庶民として商売や生産業を営めるとは思えない。
ましてや、楽人や傭兵といった職業はもちろん選べるはずもない。
ゲームとはまったく社会構造が違うのに、現実的な将来像がゲームで設定されたものと異ならないのはとても不思議だけれど。
それも前世のわたくしと仲間たちの研究が進んでいたからなのかもしれない。
……現実的な将来像が異ならないという意味では、お兄様とエミリオの将来についても同じことが言える。
今回エミリオが養子に迎えられることになって、お兄様は不安を感じていらっしゃるようだけど、お兄様の能力やこれまでの教育を考えれば、お兄様がハッセン公爵家を継がれることはまちがいないと思う。
これはわたくしお兄様愛ゆえの偏見などではありませんわ。
お父様は、エミリオを迎えることについて、わたくしとお兄様にあまり多くのことをお話されなかった。
だから、わたくしたちも詳しくはうかがえなかったし、お父様の本当のお気持ちはわからない。
けれど、推測することはできる。
わたくしはハッセン公爵家の娘という身内として、また当主の跡継ぎレースからは外れた外部のものとして、わたくしはお父様のいちばん近くで見ている。
だから確信をもって言えるのだ。
お父様は、お兄様を跡継ぎとして申し分なく思っていると。
とすれば、なぜ今頃エミリオを養子に迎えたのか。
不思議なことだけれど、これはおそらく他家から教育を託されたのではないだろうか。
エミリオはもう14歳で、一般的に貴族家に養子に入る10歳という年齢よりも年かさだ。
それは彼が貴族家の人間として教育を受けられる時間が短いということでもある。
ましてやエミリオは庶民の中でも下層の出身と聞く。
いくらこちらの世界が前世の世界とは異なり実力主義とはいえ、下層庶民から公爵家の養子に入る子どもは少ない。
普通に考えれば、むしろ10歳よりも幼い年齢から教育が必要だろう。
その教育期間の短さをカバーするために、優秀なお兄様の兄弟とし、切磋琢磨させて短期間で実力をのばそうというかんがえなのではないだろうか。
ゲームでは描かれていなかった事情だけれど、こちらの世界の常識とお兄様の実力を考えれば、そんな推論が妥当かと思う。
今の、わたくしにはそこまでの忌避感はない。
もちろん修道院に入るということは、お兄様の伴侶に選ばれなかったということで、それはとても悲しい。
けれどお兄様以外の方に嫁がされることと比べれば、そう嘆くことないと思う。
公爵家を追い出されたことも、ゲームのわたくしは呪っていた。
けれど、そもそも「そこそこ」程度の実力しかないわたくしが公爵家を継ぐ可能性があるとすれば、当主の妻に選ばれる以外方法はない。
自身が公爵家の当主となりこの家に残ることは、お兄様がハッセン公爵家の養子となり、その実力を目の当たりにしたときにあきらめがついていた。
現実的にわたくしが選べる将来は、成人までに「そこそこ」の実力の人間が発揮できる最大限の能力を発揮して、貴族は無理でも礼族の当主となること。
あるいは貴族や礼族の異性に選ばれ、彼らの伴侶となること。
そしてまたあるいは、ゲームと同じく修道院に入り、神への祈りをささげることを人生の喜びとすることくらいだろう。
わたくしに施された教育をかんがみても、今更庶民として商売や生産業を営めるとは思えない。
ましてや、楽人や傭兵といった職業はもちろん選べるはずもない。
ゲームとはまったく社会構造が違うのに、現実的な将来像がゲームで設定されたものと異ならないのはとても不思議だけれど。
それも前世のわたくしと仲間たちの研究が進んでいたからなのかもしれない。
……現実的な将来像が異ならないという意味では、お兄様とエミリオの将来についても同じことが言える。
今回エミリオが養子に迎えられることになって、お兄様は不安を感じていらっしゃるようだけど、お兄様の能力やこれまでの教育を考えれば、お兄様がハッセン公爵家を継がれることはまちがいないと思う。
これはわたくしお兄様愛ゆえの偏見などではありませんわ。
お父様は、エミリオを迎えることについて、わたくしとお兄様にあまり多くのことをお話されなかった。
だから、わたくしたちも詳しくはうかがえなかったし、お父様の本当のお気持ちはわからない。
けれど、推測することはできる。
わたくしはハッセン公爵家の娘という身内として、また当主の跡継ぎレースからは外れた外部のものとして、わたくしはお父様のいちばん近くで見ている。
だから確信をもって言えるのだ。
お父様は、お兄様を跡継ぎとして申し分なく思っていると。
とすれば、なぜ今頃エミリオを養子に迎えたのか。
不思議なことだけれど、これはおそらく他家から教育を託されたのではないだろうか。
エミリオはもう14歳で、一般的に貴族家に養子に入る10歳という年齢よりも年かさだ。
それは彼が貴族家の人間として教育を受けられる時間が短いということでもある。
ましてやエミリオは庶民の中でも下層の出身と聞く。
いくらこちらの世界が前世の世界とは異なり実力主義とはいえ、下層庶民から公爵家の養子に入る子どもは少ない。
普通に考えれば、むしろ10歳よりも幼い年齢から教育が必要だろう。
その教育期間の短さをカバーするために、優秀なお兄様の兄弟とし、切磋琢磨させて短期間で実力をのばそうというかんがえなのではないだろうか。
ゲームでは描かれていなかった事情だけれど、こちらの世界の常識とお兄様の実力を考えれば、そんな推論が妥当かと思う。
0
お気に入りに追加
137
あなたにおすすめの小説
最後にひとつだけお願いしてもよろしいでしょうか
鳳ナナ
恋愛
第二王子カイルの婚約者、公爵令嬢スカーレットは舞踏会の最中突然婚約破棄を言い渡される。
王子が溺愛する見知らぬ男爵令嬢テレネッツァに嫌がらせをしたと言いがかりを付けられた上、
大勢の取り巻きに糾弾され、すべての罪を被れとまで言われた彼女は、ついに我慢することをやめた。
「この場を去る前に、最後に一つだけお願いしてもよろしいでしょうか」
乱れ飛ぶ罵声、弾け飛ぶイケメン──
手のひらはドリルのように回転し、舞踏会は血に染まった。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。
「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

婚約破棄の、その後は
冬野月子
恋愛
ここが前世で遊んだ乙女ゲームの世界だと思い出したのは、婚約破棄された時だった。
身体も心も傷ついたルーチェは国を出て行くが…
全九話。
「小説家になろう」にも掲載しています。

このやってられない世界で
みなせ
ファンタジー
筋肉馬鹿にビンタをくらって、前世を思い出した。
悪役令嬢・キーラになったらしいけど、
そのフラグは初っ端に折れてしまった。
主人公のヒロインをそっちのけの、
よく分からなくなった乙女ゲームの世界で、
王子様に捕まってしまったキーラは
楽しく生き残ることができるのか。

【完結】私ですか?ただの令嬢です。
凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!?
バッドエンドだらけの悪役令嬢。
しかし、
「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」
そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。
運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語!
※完結済です。
※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)
※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。
《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》

シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした
黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)

【完結】ヒロインであれば何をしても許される……わけがないでしょう
凛 伊緒
恋愛
シルディンス王国・王太子の婚約者である侯爵令嬢のセスアは、伯爵令嬢であるルーシアにとある名で呼ばれていた。
『悪役令嬢』……と。
セスアの婚約者である王太子に擦り寄り、次々と無礼を働くルーシア。
セスアはついに我慢出来なくなり、反撃に出る。
しかし予想外の事態が…?
ざまぁ&ハッピーエンドです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる