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Side キリ 6
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思わず、オサド商会の女子メンバーで目を交わす。
やったぁ……!
自分たちのおすすめのドレスを選んでいただけたことはもちろん、レイモンド様と美咲様の仲のよさにも嬉しくなる。
ちらりとクリスとケイトのことが頭をよぎったけど、あの二人の気持ちは、憧れのようなものだろう。
今までレイモンド様とお話したことがあるのって、オサドさんくらいだし。
ブロッケンシュタイン家に伺ったことはあっても、まだまだ若手の私たちでは、これまではずっと無言で上の人の指示に従って品物を用意するくらいだったものね。
その程度の関係で、恋なんていうほどの感情は動かないと思う。
……でも、レイモンド様が美咲様を見初められたのは、ひとめぼれなんだっけ。
そう思えば、あの二人にもチャンスはあったのかしら。
でも、レイモンド様は、あの二人には恋をしなかった。
あの二人だって十分美しいと思うけれど、恋とはそういうものではないのだろう。
私としては、お二人が仲良くご結婚され、今後もばんばんオサド商会の品をお買い上げくだされば嬉しいとだけ思うけど。
美咲様は、他にドーンピンクのコートドレスと、紺のリボンドレスをお選びになった。
もう少し選んでくださらないかしらと思ったのもつかの間、レイモンド様が次々にドレスを選び始める。
え、えええっ。
まさかと思ってみていると、オサドさんがさりげなくレイモンド様にお尋ねしたようだ。
「美咲に頼まれたんだよ。一緒に服を選んでほしいってよ」
っきゃーー!!きゃー!!
思わず赤くなりそうな顔を、そっと横に向ける。
私はなにも聞いてませんよーというふりで、お選びいただいたドレスを用意しつつ、必死で何事もなかったような顔をとりつくろう。
レイモンド様は、次から次へとドレスを選んでくださるから、だんだん顔はとりつくろえてきた。
それでも内心ではきゃーきゃー叫んでしまう。
あっまいなー。
レイモンド様自体にはなんの気持ちもないけど、恋人と臆面もなくいちゃいちゃしているのは、正直ちょっとうらやましくなる。
さらにレイモンド様は美咲様に、試着した姿を見せてほしい、とまで言ってきて。
恋人のドレス選びを面倒くさそうにしている男性もよく見ているので、ほんと仲良しですねぇ、と言いたい気分になった。
「愛されてますね」
試着のために、女性だけで寝室に入ると、すぐにメアリーさんが言う。
その親し気な口調に驚いたけど、美咲様はメイドの軽口をとがめず、恥ずかしそうに頬を染めた。
「どれから試着しようか迷ってしまうわ」
僭越ながら、美咲様のお好きなものをとお伝えすると、メアリーさんも美咲様がお選びになったものから試着するよう勧めた。
するとさっそく美咲様は、すみれ色のドレスをお選びになる。
誰かが「きゃぁ」と声をあげたので、声のほうをにらんでおく。
美咲様が、メイドであるメアリーさんに気安く接していらっしゃるからって、私たちまで気をぬいていいわけじゃない。
美咲様は、メアリーさんの手を借りて、ドレスをお着換えになった。
鏡を見ながら、メアリーさんは、美咲様とヘアアレンジをご相談されていた。
そして、私のほうを見て、ドレスに合うヘッドドレスをと言われた。
あのドレスには、共布でつくったヘッドドレスがあったはず。
私はすばやく布で作られたバラとリボンで飾られたヘッドドレスを、メアリーさんにお渡しした。
メアリーさんはそれを受け取ると、美咲様の頭に斜めになるように、ヘッドドレスをセットする。
その瞬間、なぜかリジーが壁にたたきつけられていた。
やったぁ……!
自分たちのおすすめのドレスを選んでいただけたことはもちろん、レイモンド様と美咲様の仲のよさにも嬉しくなる。
ちらりとクリスとケイトのことが頭をよぎったけど、あの二人の気持ちは、憧れのようなものだろう。
今までレイモンド様とお話したことがあるのって、オサドさんくらいだし。
ブロッケンシュタイン家に伺ったことはあっても、まだまだ若手の私たちでは、これまではずっと無言で上の人の指示に従って品物を用意するくらいだったものね。
その程度の関係で、恋なんていうほどの感情は動かないと思う。
……でも、レイモンド様が美咲様を見初められたのは、ひとめぼれなんだっけ。
そう思えば、あの二人にもチャンスはあったのかしら。
でも、レイモンド様は、あの二人には恋をしなかった。
あの二人だって十分美しいと思うけれど、恋とはそういうものではないのだろう。
私としては、お二人が仲良くご結婚され、今後もばんばんオサド商会の品をお買い上げくだされば嬉しいとだけ思うけど。
美咲様は、他にドーンピンクのコートドレスと、紺のリボンドレスをお選びになった。
もう少し選んでくださらないかしらと思ったのもつかの間、レイモンド様が次々にドレスを選び始める。
え、えええっ。
まさかと思ってみていると、オサドさんがさりげなくレイモンド様にお尋ねしたようだ。
「美咲に頼まれたんだよ。一緒に服を選んでほしいってよ」
っきゃーー!!きゃー!!
思わず赤くなりそうな顔を、そっと横に向ける。
私はなにも聞いてませんよーというふりで、お選びいただいたドレスを用意しつつ、必死で何事もなかったような顔をとりつくろう。
レイモンド様は、次から次へとドレスを選んでくださるから、だんだん顔はとりつくろえてきた。
それでも内心ではきゃーきゃー叫んでしまう。
あっまいなー。
レイモンド様自体にはなんの気持ちもないけど、恋人と臆面もなくいちゃいちゃしているのは、正直ちょっとうらやましくなる。
さらにレイモンド様は美咲様に、試着した姿を見せてほしい、とまで言ってきて。
恋人のドレス選びを面倒くさそうにしている男性もよく見ているので、ほんと仲良しですねぇ、と言いたい気分になった。
「愛されてますね」
試着のために、女性だけで寝室に入ると、すぐにメアリーさんが言う。
その親し気な口調に驚いたけど、美咲様はメイドの軽口をとがめず、恥ずかしそうに頬を染めた。
「どれから試着しようか迷ってしまうわ」
僭越ながら、美咲様のお好きなものをとお伝えすると、メアリーさんも美咲様がお選びになったものから試着するよう勧めた。
するとさっそく美咲様は、すみれ色のドレスをお選びになる。
誰かが「きゃぁ」と声をあげたので、声のほうをにらんでおく。
美咲様が、メイドであるメアリーさんに気安く接していらっしゃるからって、私たちまで気をぬいていいわけじゃない。
美咲様は、メアリーさんの手を借りて、ドレスをお着換えになった。
鏡を見ながら、メアリーさんは、美咲様とヘアアレンジをご相談されていた。
そして、私のほうを見て、ドレスに合うヘッドドレスをと言われた。
あのドレスには、共布でつくったヘッドドレスがあったはず。
私はすばやく布で作られたバラとリボンで飾られたヘッドドレスを、メアリーさんにお渡しした。
メアリーさんはそれを受け取ると、美咲様の頭に斜めになるように、ヘッドドレスをセットする。
その瞬間、なぜかリジーが壁にたたきつけられていた。
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