異世界で(口の悪い)騎士様に拾われたのですが

木村 真理

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誉められるのは嬉しいのですが慣れないのですが

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 とか思っても、すぐに考え方や行動が変わるわけじゃないんだけど。
ずっと庶民かつ責任のない立場で生きてきたのに、そんな簡単に領主一族の婚約者としてなんて振る舞えるはずない。

 でも、少しの間だけかもしれないけど、レイの側にいるなら、少しはそれらしくふるまいたい。
こんなによくしてくれているレイに、私のことで恥ずかしい思いなんてさせたくない。

 うまくはできなくても、心がけだけでも、と思う。

 お洋服屋さんたちに促され、メアリーさんにドアを開けてもらって、化粧室に踏み入れる。

 レイは、窓際の椅子にゆるく腰かけていた。
私が化粧室に入ると、はっと目を開く。
そして、すっと立ち上がって、こちらに数歩近寄った。

「……似合いますか?」

 こんなこと訊くのも、すごく恥ずかしいけど!
でも無言で、じっと見られるのも恥ずかしいんだよ……!

 レイは、私を見つめたまま、身動きもしない。
その反応を見ていれば、好意的な反応だろうってことはわかるけど、この間がいたたまれないっていうか。
 黙って見つめられているなんて耐えられないっていうか。

 顔が熱くなる。
耐えかねて訊けば、レイははっとして息を飲んで、

「……すげぇ似合ってる。綺麗だ」

 うわ。
誉めてくれるんじゃないかなって思ってたけど、直球の誉め言葉に、さらに顔が熱くなる。
 こういうの、慣れてないんだよーー!!

 女の子同士とか、挨拶的な感じで誉められるのとか、誉められてもぜんぜん嬉しくない人に誉められるのとかとは、威力がぜんぜん違う。
好きだなって思ってる人に、改めて言われる「かわいい」の威力って、ほんと慣れない。

 言葉だけじゃなく、レイの視線とか空気とかが、何もかも熱っぽい。

「ありがとうございます」

 メアリーさんたちのによによ笑いを感じつつ、そう返すのが、精一杯だった。

 その後も、ドレスの試着は続く。
わたしが選んだドレスの他に、レイが選んだドレスもなん着も。

 中には、テーマパークでプリンセスが着ているようなドレスもあった。
こんなの着る時があるのって目眩を感じつつ、次から次にドレスの試着をさせられて、考える間もなく流されていく。

「つ、疲れた……」

 なん着もドレスを着替えているのに、レイは飽きずに誉めてくれる。
それどころか、だんだん慣れてきたみたいで、誉め言葉が流暢になってきた。

「あぁ、そのグリーンもいいな。新緑みたいな爽やかさが、美咲の髪に映えて、初々しさを醸し出してるっていうか。美咲は大人だから、しっとりした綺麗さもあるけど、どっかかわいい雰囲気だからよー、そういうのも似合うな!」

とか、

「やっぱり、美咲は紫も似合うよな。濃い色も薄い色も、違うよさがあるし。嫌いじゃなかったら、ドレスだけじゃなく、部屋着とかも揃えねぇ?」

とかね!

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