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ドレスをプレゼントされる覚悟は決めましたが
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よし。覚悟は決めた。
「レイ」
気まずそうに、レイは私を見ている。
恩人に、こんな顔をさせるなんて、そもそもだめすぎる。
「お世話になりっぱなしで、心苦しいですが……。その、お洋服、いただきたいと思います。お心配りいただき、ありがとうございます。図々しいですけど、お願いできますか?」
「ああ……!」
あああああああああああああああああああああ覚悟を決めたとはいえ、なんかこういうの照れる。
自分のキャラじゃないんだよぉ。
でも、一気にレイに笑顔が戻ったので、よしとする。
ほんと、ほっとしたよ。
レイはさっと立ち上がって、私の手をひく。
「おし、ならよー。メシは、もう食ったよな? 服を選びに戻ろうぜ!」
きらっきらの笑顔で、レイが言う。
そんな嬉しそうな顔、反則すぎる。
ドレスをいただけるということ以上に、嬉しくなる。
この人を、私がこんなに喜ばせているんだなって。
こんなことで、こんなに喜んでくれるなんて、この人、私のことすごく大切にしてくれているんだなって……。
「レイ。ご存知のとおり、私にはこの世界の常識がわかりません。お洋服も、どんなものが必要なのか、皆様がどんなものをお召しなのかもわからなくて。お手数ですが、一緒に選んでいただけますか?」
「お前の服を、俺が……。いいのかよ! 俺的には、すげー嬉しいけど」
「あ、でも……! これは苦手、というのもあるのですが」
「そりゃそうだろ。そういうときは、はっきり言ってくれたほうが助かる」
こっちの世界の常識がわからないから、念のために拒否することもあるよ、と言っておく。
ないと思うけど、超ミニなスカートとか、ショーパンとかは、無理だし。
あとレイのセンスも、どうなのかわからないしね。
気を悪くされないといいなと思って、顔色をうかがいながら言ったけど、レイはむしろ嬉しそうにうなずいた。
「もどったぞー」
私のためにわりあててくださったラナンキュラスの間の扉の前で、レイが声をかける。
するとパッと中から扉が開いた。
「おかえりなさいませ。美咲様、レイ様」
ドアを開けてくれたのは、メアリーさんだ。
「お待たせしました」
また頭を下げそうになったけど、我慢我慢。
「ごめんなさい」の言葉もダメかもと思って、飲み込んだ。
メアリーさんは、レイの家のメイドさんだし、いちおう身内だ。
私の言動がお貴族様らしくないからって、レイの評価が悪くなるとかはないと思う。
でも、部屋には、お洋服屋さんたちも何人もいる。
この人たちは、レイから見ても「外」の人。
私の言動がそぐわなすぎたら、レイへの評価さえも下げてしまうかもしれない。
気をひきしめないと。
できるだけ優雅にほほ笑んで、お洋服屋さんたちひとりひとりへと首をめぐらせる。
と同時に、部屋をぐるりと見回し……。
ひんやりとした汗が、背中を伝った。
な、なにこれ!!
部屋中、ドレスだらけなんですけど!!!
「レイ」
気まずそうに、レイは私を見ている。
恩人に、こんな顔をさせるなんて、そもそもだめすぎる。
「お世話になりっぱなしで、心苦しいですが……。その、お洋服、いただきたいと思います。お心配りいただき、ありがとうございます。図々しいですけど、お願いできますか?」
「ああ……!」
あああああああああああああああああああああ覚悟を決めたとはいえ、なんかこういうの照れる。
自分のキャラじゃないんだよぉ。
でも、一気にレイに笑顔が戻ったので、よしとする。
ほんと、ほっとしたよ。
レイはさっと立ち上がって、私の手をひく。
「おし、ならよー。メシは、もう食ったよな? 服を選びに戻ろうぜ!」
きらっきらの笑顔で、レイが言う。
そんな嬉しそうな顔、反則すぎる。
ドレスをいただけるということ以上に、嬉しくなる。
この人を、私がこんなに喜ばせているんだなって。
こんなことで、こんなに喜んでくれるなんて、この人、私のことすごく大切にしてくれているんだなって……。
「レイ。ご存知のとおり、私にはこの世界の常識がわかりません。お洋服も、どんなものが必要なのか、皆様がどんなものをお召しなのかもわからなくて。お手数ですが、一緒に選んでいただけますか?」
「お前の服を、俺が……。いいのかよ! 俺的には、すげー嬉しいけど」
「あ、でも……! これは苦手、というのもあるのですが」
「そりゃそうだろ。そういうときは、はっきり言ってくれたほうが助かる」
こっちの世界の常識がわからないから、念のために拒否することもあるよ、と言っておく。
ないと思うけど、超ミニなスカートとか、ショーパンとかは、無理だし。
あとレイのセンスも、どうなのかわからないしね。
気を悪くされないといいなと思って、顔色をうかがいながら言ったけど、レイはむしろ嬉しそうにうなずいた。
「もどったぞー」
私のためにわりあててくださったラナンキュラスの間の扉の前で、レイが声をかける。
するとパッと中から扉が開いた。
「おかえりなさいませ。美咲様、レイ様」
ドアを開けてくれたのは、メアリーさんだ。
「お待たせしました」
また頭を下げそうになったけど、我慢我慢。
「ごめんなさい」の言葉もダメかもと思って、飲み込んだ。
メアリーさんは、レイの家のメイドさんだし、いちおう身内だ。
私の言動がお貴族様らしくないからって、レイの評価が悪くなるとかはないと思う。
でも、部屋には、お洋服屋さんたちも何人もいる。
この人たちは、レイから見ても「外」の人。
私の言動がそぐわなすぎたら、レイへの評価さえも下げてしまうかもしれない。
気をひきしめないと。
できるだけ優雅にほほ笑んで、お洋服屋さんたちひとりひとりへと首をめぐらせる。
と同時に、部屋をぐるりと見回し……。
ひんやりとした汗が、背中を伝った。
な、なにこれ!!
部屋中、ドレスだらけなんですけど!!!
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