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スマホが動きませんが

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「え。いやいやいやいやいやマジで?」

 何度かスマホの電源ボタンを押す。
だけどスマホはぴくとも動かない。

「ちょ。マジで?いやいやちょっとお願いがんばって動いてください」

 長押ししても、ダメ。
ふってみたり、拝んでみたりしたけど、それもダメでした。

 うそでしょー…。

 充電は昨夜ばっちりしておいて、空港で見ていた時も80%以上は残っていた。
だから充電が切れているわけじゃないはずだと思う。
携帯用充電器はバッグにいれてなかった。
充電が切れた可能性もないではないけど、爆発に巻き込まれた時にぶつけて壊したか、異世界だから動かないのか…。

 慌ててデジカメを確認する。
こっちは問題なく電源が入ったけど、さてどうしよう……。

 未練がましく何度もスマホを触ってみたけど、やっぱりスマホは動かない。
アナログな人間だから、普段はスマホがないと生きていけないってことはないけど、まったく動かないとなると動じずにはいられない。
まぁここは異世界だし、電波とかは通じないだろうけど、でもやっぱりないと落ち着かないよ。

「がんばれっ、がんばれっ」

 などと言ってみるけど、やっぱりスマホは動かない。
諦めなくちゃと思うんだけど、なかなか決心がつかなくて、机においたスマホに土下座してみる。

 と、控えめなノックの音がしたかと思うと、昨日のメイドさんが部屋に入ってきた。

「……あ」

「おはようございます、美咲さま」

 うぎゃ。
床に頭をこすりつけて、机の上の小さな箱を拝む謎の女。
こわいこわい。

 超絶気まずく思いながら、とりあえずへろりと笑う。
だけどメイドさんはまったく動揺したふうもなく、にっこりと笑って挨拶をしてくれた。

「オハヨウゴザイマス」

 プロフェッショナルだなぁと思いつつ、こちらの返答は引きつってしまう。
 メイドさんは、今日も美人だ。
えっと確かお名前は、メアリーさんだっけ。

「お早いんですね。昨日はお疲れのようでしたので、ごゆっくりしていただくようレイ様からうかがっていますが、もう起きられますか?」

「えっと、はい。もう目が覚めたので、ご迷惑でなければこのまま起きていたいです」

「かしこまりました。もう身支度もされていらっしゃるんですね」

「そうですね。簡単にですが」

「お手伝いできず、申し訳ございません。お目覚めにとお水とお茶を持ってまいりましたが、いかがですか?」

「あ、じゃぁお願いします」

 ひんやり冷えたお水をいただいた後、メアリーさんが淹れてくれたお茶をいただく。
ちょっと濃い目のミルクティーっぽい味。
あーこれめっちゃ好きだわ。

「朝食は、レイモンド様は食堂で召し上がられますが、美咲さまもご一緒でよろしいでしょうか」
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