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門は開きましたが
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レイは、黒く光る重そうな門の前で「ついたわ」って言う。
「ここが俺んちなんだぜ」と、言う。
その言葉を聞いたかのように、門は重さを感じさせない滑らかな動きで左右に開いた。
そこで目に入ったのは、まっすぐに伸びた道と、その両脇に並ぶ細長い糸杉の列だけだった。
わけがわからないよね。
「俺んち」なのに、家が見当たらないなんて。
一瞬、暗くてお邸が見えてないのかと思った。
けど、糸杉の根元には明かりが点々と置かれていて、その道が長く続いていることを示唆していた。
……どこまで続いているのか、はっきり見えないくらい、長く道が続いていることだけは、はっきりわかる。
え。
まさか、コレが、「俺んち」なの?
「俺んち」って、どういう意味だっけ。
なんかまだ、家すら見えないんですけど。
高くそびえたつ塀は、ずっと遠くまで続いていた。
それに、レイは貴族で、このにぎわった街の元領主だ。
大豪邸に住んでいて当たり前、そうじゃないほうが不思議なものだ。
それに、お金持ちなんて、地球にもいっぱいいる。
豪邸に住んでいる人も、いっぱいいるだろう。
テレビや映画でなら、想像も追いつかないほどのすごい豪邸を見たことある。
ハリウッドの豪邸やロワールの古城めぐりの旅もしたことあるよ。
だから豪邸を見たこともない、というわけじゃない。
でもさ。
でも、でも!!
でも自分のリアルな知り合いが、こんな見渡す限り庭が続いているような場所を「俺んち」って言ったのは、ぎょっとするね。
信じられないっていうか、言葉の違和感がすごすぎて。
茫然としていると、開いた門の傍らにいたおそろいの服を身に着けたごつい男性が二人、胸に手をあてて私たちを迎えてくれた。
「エーリッヒ。イプス。ただいま。帰りが遅くなってしまって、すまない」
「お帰りなさいませ、レイ様」
ごつい男性たちは、レイの隣に立つ私を一瞥する。
その目は、私の上から下までスキャンして、分析しているかのよう。
色などなく、私という存在を推しはかるような。
だけど、彼らの視線は、すぐさまレイに向けられた。
そして儀礼的な仕草で、頭を垂れた。
彼らの黒い外套の肩には、飛び立つ鷹の見事な刺繍が入っている。
黄色で形作られたその刺繍は、レイの剣と同じ意匠だ。
「馬車をご用意いたしましょうか?」
私のほうをちらりと見て、赤毛のお兄さんが言う。
「…そうだな。美咲。玄関まで馬車に乗るか?」
レイは私を気遣うように言う。
確かに、ここまでの道のりはそれなりに長く、私は疲れている。
歩かなくてすむなら、歩きたくない。
だけどね。
馬車って、なんだ。
家の門から玄関までどれくらいの距離があるっていうのよ!
「ここが俺んちなんだぜ」と、言う。
その言葉を聞いたかのように、門は重さを感じさせない滑らかな動きで左右に開いた。
そこで目に入ったのは、まっすぐに伸びた道と、その両脇に並ぶ細長い糸杉の列だけだった。
わけがわからないよね。
「俺んち」なのに、家が見当たらないなんて。
一瞬、暗くてお邸が見えてないのかと思った。
けど、糸杉の根元には明かりが点々と置かれていて、その道が長く続いていることを示唆していた。
……どこまで続いているのか、はっきり見えないくらい、長く道が続いていることだけは、はっきりわかる。
え。
まさか、コレが、「俺んち」なの?
「俺んち」って、どういう意味だっけ。
なんかまだ、家すら見えないんですけど。
高くそびえたつ塀は、ずっと遠くまで続いていた。
それに、レイは貴族で、このにぎわった街の元領主だ。
大豪邸に住んでいて当たり前、そうじゃないほうが不思議なものだ。
それに、お金持ちなんて、地球にもいっぱいいる。
豪邸に住んでいる人も、いっぱいいるだろう。
テレビや映画でなら、想像も追いつかないほどのすごい豪邸を見たことある。
ハリウッドの豪邸やロワールの古城めぐりの旅もしたことあるよ。
だから豪邸を見たこともない、というわけじゃない。
でもさ。
でも、でも!!
でも自分のリアルな知り合いが、こんな見渡す限り庭が続いているような場所を「俺んち」って言ったのは、ぎょっとするね。
信じられないっていうか、言葉の違和感がすごすぎて。
茫然としていると、開いた門の傍らにいたおそろいの服を身に着けたごつい男性が二人、胸に手をあてて私たちを迎えてくれた。
「エーリッヒ。イプス。ただいま。帰りが遅くなってしまって、すまない」
「お帰りなさいませ、レイ様」
ごつい男性たちは、レイの隣に立つ私を一瞥する。
その目は、私の上から下までスキャンして、分析しているかのよう。
色などなく、私という存在を推しはかるような。
だけど、彼らの視線は、すぐさまレイに向けられた。
そして儀礼的な仕草で、頭を垂れた。
彼らの黒い外套の肩には、飛び立つ鷹の見事な刺繍が入っている。
黄色で形作られたその刺繍は、レイの剣と同じ意匠だ。
「馬車をご用意いたしましょうか?」
私のほうをちらりと見て、赤毛のお兄さんが言う。
「…そうだな。美咲。玄関まで馬車に乗るか?」
レイは私を気遣うように言う。
確かに、ここまでの道のりはそれなりに長く、私は疲れている。
歩かなくてすむなら、歩きたくない。
だけどね。
馬車って、なんだ。
家の門から玄関までどれくらいの距離があるっていうのよ!
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