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この世界の文明レベルを探ってみますが
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他国にお邪魔している以上、その国が自国よりも不便でも見下さない。批判しない。
その国の人の前なら、なおさら。
不満があっても、口に出すのはもちろん、表情にも不満をださないこと。
これ、海外旅行の鉄則だと、ひとりの海外旅行好きとして、私が心がけていることです。
自分で望んで来たわけじゃない異世界でも、それは同じだと心得ているんだ。
だって私は、ここで暮らす人の「当たり前」を断じるような立場の人間じゃないもの。
この世界のほんの片隅に今はいさせてもらって、可及的速やかに、元の世界に戻りたい。
それが私のスタンスです。
だけどさ、本音のところ、この世界の文明レベルって日本より劣っているっぽいって思ってる。
それは街行く人の服装や、道の整備からも見て取れる。
たとえば、店の表に掲げられている看板だ。
文字ではなく、お店が取り扱っているものを示す図が書かれている看板がほとんどなのに気づいていた。
それって、識字率があんまり高くない証拠のはず。
きっとこの世界では、まだ知識層といえるのは、せいぜいトップの階級の人だけなんだろう。
そして分母の小さな知識層では、めざましい発展はだんだんなくなるものだ。
例外は、チート級の天才がいて、イノベーションを起こしたときくらいだろうか。
だから、過剰な期待は禁物だ。
街灯を見て、電気があると思って喜んだのがぬか喜びだったら、がっかりするなんてものじゃない。
異世界転移なんてふざけた状況のせいで神経が焼き切れそうなんだから、これ以上がっかりするのはノーセンキューだ。
でもエネルギー源は違っても、効果が一緒なら普通に喜んでいいとこかな。
いい年齢して恥ずかしいんだけど、マッチもライターもつけられないんだもん。
ろうそくが光源の世界だったら、暗くなるたび誰かのお世話にならなくちゃいけないとこだった。
「街灯の他にも、魔力って使われているんですか?」
へこみそうな気分を笑顔でむりやり隠して、レイに尋ねる。
レイは「んー」と斜め上を見ながら答えた。
「いろいろだなー。明かり関係だろ、湯沸しだろ、冷蔵機に温熱器、連絡機とかな」
なんだそれ、エネルギー革命かよ!
つっこみたいのに、レイはしれっと教えてくれた後、すこし先のほうにある電燈を指さした。
「そこに、赤いポールの街灯みたいなのがあるだろ?」
「あ、はい」
たしかにレイが指し示す方角に、ポールの上の光が赤い街灯があった。
「それが緊急用の連絡機なんだぜー。それの球体部分に手を触れて、呼びかけたら軍部につながるから。危険を感じたら、すぐそれで連絡しろよ」
「えええっと、は、はい!」
ちょっと待って。ちょっと待って。
さらっとレイが言ったことを、頭の中で反駁する。
……せーの。
やったー!!!
まだ詳しいことは聞いてないけど!名前からすると、明かり関係はあり、お湯も簡便に得られる、冷蔵庫っぽいものもあり、温熱機はわからないけど、連絡機って電話かトランシーバーみたいなものかな。
ほんと、いろいろあるんだな。
思ったより、文明が進んでいたよー!
よかったよー!
例え短時間の滞在でも、便利に越したことはないしね。
一気に気分が浮上する。
微妙に足が重くなっていたせいで先を歩いていたレイとの距離があいちゃっていたから、小走りで駆け寄った。
「緊急用の連絡機なんてあるんですねー。軍部に連絡って緊張するんですけど、どういう要件で連絡したらいいんでしょうか。あの緊急呼び出し用の街灯は、誰でも使っていいんですか?」
「使うのは誰でもいいんだけどよー。基本は命の危険があるような重大な事件か病気や怪我の時しか使用不可なんだよな。……でも、まぁ。お前はうちの客人なんだし、こっちの危険かどうかの判断基準もわかんねーだろうし。とりあえず危険だと思ったらすぐ連絡しろ。明日には、軍部にも連絡いれとくから」
「ありがとうございます」
緊急時の連絡手段ゲット!
しかも軍部に連絡がいくっていうことは、守ってもらえる保障になりそう。
うわ。それは本気でありがたい。
ただ、さ。
そんな簡単に軍部を使えるレイって……。
貴族だから、だよね?
その国の人の前なら、なおさら。
不満があっても、口に出すのはもちろん、表情にも不満をださないこと。
これ、海外旅行の鉄則だと、ひとりの海外旅行好きとして、私が心がけていることです。
自分で望んで来たわけじゃない異世界でも、それは同じだと心得ているんだ。
だって私は、ここで暮らす人の「当たり前」を断じるような立場の人間じゃないもの。
この世界のほんの片隅に今はいさせてもらって、可及的速やかに、元の世界に戻りたい。
それが私のスタンスです。
だけどさ、本音のところ、この世界の文明レベルって日本より劣っているっぽいって思ってる。
それは街行く人の服装や、道の整備からも見て取れる。
たとえば、店の表に掲げられている看板だ。
文字ではなく、お店が取り扱っているものを示す図が書かれている看板がほとんどなのに気づいていた。
それって、識字率があんまり高くない証拠のはず。
きっとこの世界では、まだ知識層といえるのは、せいぜいトップの階級の人だけなんだろう。
そして分母の小さな知識層では、めざましい発展はだんだんなくなるものだ。
例外は、チート級の天才がいて、イノベーションを起こしたときくらいだろうか。
だから、過剰な期待は禁物だ。
街灯を見て、電気があると思って喜んだのがぬか喜びだったら、がっかりするなんてものじゃない。
異世界転移なんてふざけた状況のせいで神経が焼き切れそうなんだから、これ以上がっかりするのはノーセンキューだ。
でもエネルギー源は違っても、効果が一緒なら普通に喜んでいいとこかな。
いい年齢して恥ずかしいんだけど、マッチもライターもつけられないんだもん。
ろうそくが光源の世界だったら、暗くなるたび誰かのお世話にならなくちゃいけないとこだった。
「街灯の他にも、魔力って使われているんですか?」
へこみそうな気分を笑顔でむりやり隠して、レイに尋ねる。
レイは「んー」と斜め上を見ながら答えた。
「いろいろだなー。明かり関係だろ、湯沸しだろ、冷蔵機に温熱器、連絡機とかな」
なんだそれ、エネルギー革命かよ!
つっこみたいのに、レイはしれっと教えてくれた後、すこし先のほうにある電燈を指さした。
「そこに、赤いポールの街灯みたいなのがあるだろ?」
「あ、はい」
たしかにレイが指し示す方角に、ポールの上の光が赤い街灯があった。
「それが緊急用の連絡機なんだぜー。それの球体部分に手を触れて、呼びかけたら軍部につながるから。危険を感じたら、すぐそれで連絡しろよ」
「えええっと、は、はい!」
ちょっと待って。ちょっと待って。
さらっとレイが言ったことを、頭の中で反駁する。
……せーの。
やったー!!!
まだ詳しいことは聞いてないけど!名前からすると、明かり関係はあり、お湯も簡便に得られる、冷蔵庫っぽいものもあり、温熱機はわからないけど、連絡機って電話かトランシーバーみたいなものかな。
ほんと、いろいろあるんだな。
思ったより、文明が進んでいたよー!
よかったよー!
例え短時間の滞在でも、便利に越したことはないしね。
一気に気分が浮上する。
微妙に足が重くなっていたせいで先を歩いていたレイとの距離があいちゃっていたから、小走りで駆け寄った。
「緊急用の連絡機なんてあるんですねー。軍部に連絡って緊張するんですけど、どういう要件で連絡したらいいんでしょうか。あの緊急呼び出し用の街灯は、誰でも使っていいんですか?」
「使うのは誰でもいいんだけどよー。基本は命の危険があるような重大な事件か病気や怪我の時しか使用不可なんだよな。……でも、まぁ。お前はうちの客人なんだし、こっちの危険かどうかの判断基準もわかんねーだろうし。とりあえず危険だと思ったらすぐ連絡しろ。明日には、軍部にも連絡いれとくから」
「ありがとうございます」
緊急時の連絡手段ゲット!
しかも軍部に連絡がいくっていうことは、守ってもらえる保障になりそう。
うわ。それは本気でありがたい。
ただ、さ。
そんな簡単に軍部を使えるレイって……。
貴族だから、だよね?
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