33 / 113
街の中に入りましたが
しおりを挟む
「わぁ…っ」
門をくぐり、街を見た私は感嘆の声をあげた。
外から門の長さを見ていても、この街が大きな街だということは気づいていたけど、壁の中の建物がこんなに立派なんて思ってなかった。
しかもなんていうかこの街、かわいいの!
建物は、見上げるほど高い。
ぱっと見は5階建てくらいに見えるそびえたつような建物が、道の両側にぎっしりと建っていた。
家々の壁は真っ白い大理石みたいな石でできていて、屋根にはキャラメル色の瓦が敷き詰められている。
窓は格子が入っているんだけど、それが優美な曲線を描いていて、優雅なかざりのように見える。
壁のところどころにはチョコレート色やピンク、淡い緑色の石もアクセントのように入っていて、なんともいえず、かわいいのだ。
初めて見る街は、元の世界でも、異世界でも、わくわくしちゃう。
この建物は、ちょっとフィレンツェに似ているかな。
屋根の色とかが、ちょっと明るい茶色で、建物の石の感じも似ている気がする。
だけどどこかドイツっぽい雰囲気もあるんだよなー、どこの辺がそんな印象にしているんだろ。
なんて考えながら、街のあちこちに目を見張る。
完全におのぼりさん状態の私を、レイがほほえましげに見ているけど、異世界からはるばるきたおのぼりさんなんだし、ちょっとくらい興奮してても許されるよね。
レイに連れられるままに歩いていて、街のあちこちに見慣れた、けれどこの世界にはないなじゃないかと思っていたものがあるのに気づいた。
道のところどころにある、街灯だ。
道の随所に黒いポールが立っていて、その先端にはバスケットボールくらいのサイズの白い球体がついている。
その球体が白々と光り、暗くなってきた街を照らしている。
街灯の高さは一律ではなく、私の腰のあたりの長さのものもあれば、見上げるくらい高いものもある。
その統一感のなさが街をより幻想的に、かわいく見せているんだと思うけど…!
それより気になるのは、やっぱり。
この世界にも、電気ってあるの!?
「レイ!ねぇ、あれっ」
「ん?街灯か?」
私は、レイの腕に触れ、その光るポールを指さした。
レイは、興奮した私の態度に首をかしげつつ、その名を口にする。
「街灯」。
形態はちょっと違うけど、呼び名は一緒なんだ。
「そうそう!あれってどうやって光っているんですか?やっぱり電気なんですか!?電気あるんですか!?」
勢いごんで問えば、レイはきょとんとして瞬いた。
「電気?いや、それは知らないな。ミサキの世界にはあったものなんだよな? それで街灯に明かりをともしていたのか? ……こっちでは街灯が光ってるのは、光るように魔力設定してあるだけだぜ?」
「……魔力」
そうかー。
魔獣がいるんだしね。
魔力がどうって話になっても、ぜんぜん不思議じゃないよね。
ははははははは…。
あー乾いた笑いがこみあげるわ。
やばい。
異世界だ異世界だってさっきから何度も思っているのに、また新たな衝撃が。
この世界って、思っていた以上に私の常識とは違うみたい。
赤い月に魔獣、謎の癒し人なる人間がいるってだけでもお腹いっぱいな感じなのに、電気代わりになる魔力もあるんですか。
はははははははは……。
まぁ人間がちゃんと生命活動できる世界だったことに感謝すべきかなぁ。
これが恐竜が闊歩する世界だったり、サルの惑星みたいだったりしたら、私の絶望はこんなもんじゃなかっただろうし。
私ってば運がいい!はず。
「魔力ってすごいんですね」
無性に疲れたっていうか。
できるものなら、家に帰って、ベッドに飛び込んで、お布団かぶって現実逃避したい。
一喜一憂した私を心配そうに見ているレイに、笑ってみる。
若干ひきつっているのは、仕様です。
門をくぐり、街を見た私は感嘆の声をあげた。
外から門の長さを見ていても、この街が大きな街だということは気づいていたけど、壁の中の建物がこんなに立派なんて思ってなかった。
しかもなんていうかこの街、かわいいの!
建物は、見上げるほど高い。
ぱっと見は5階建てくらいに見えるそびえたつような建物が、道の両側にぎっしりと建っていた。
家々の壁は真っ白い大理石みたいな石でできていて、屋根にはキャラメル色の瓦が敷き詰められている。
窓は格子が入っているんだけど、それが優美な曲線を描いていて、優雅なかざりのように見える。
壁のところどころにはチョコレート色やピンク、淡い緑色の石もアクセントのように入っていて、なんともいえず、かわいいのだ。
初めて見る街は、元の世界でも、異世界でも、わくわくしちゃう。
この建物は、ちょっとフィレンツェに似ているかな。
屋根の色とかが、ちょっと明るい茶色で、建物の石の感じも似ている気がする。
だけどどこかドイツっぽい雰囲気もあるんだよなー、どこの辺がそんな印象にしているんだろ。
なんて考えながら、街のあちこちに目を見張る。
完全におのぼりさん状態の私を、レイがほほえましげに見ているけど、異世界からはるばるきたおのぼりさんなんだし、ちょっとくらい興奮してても許されるよね。
レイに連れられるままに歩いていて、街のあちこちに見慣れた、けれどこの世界にはないなじゃないかと思っていたものがあるのに気づいた。
道のところどころにある、街灯だ。
道の随所に黒いポールが立っていて、その先端にはバスケットボールくらいのサイズの白い球体がついている。
その球体が白々と光り、暗くなってきた街を照らしている。
街灯の高さは一律ではなく、私の腰のあたりの長さのものもあれば、見上げるくらい高いものもある。
その統一感のなさが街をより幻想的に、かわいく見せているんだと思うけど…!
それより気になるのは、やっぱり。
この世界にも、電気ってあるの!?
「レイ!ねぇ、あれっ」
「ん?街灯か?」
私は、レイの腕に触れ、その光るポールを指さした。
レイは、興奮した私の態度に首をかしげつつ、その名を口にする。
「街灯」。
形態はちょっと違うけど、呼び名は一緒なんだ。
「そうそう!あれってどうやって光っているんですか?やっぱり電気なんですか!?電気あるんですか!?」
勢いごんで問えば、レイはきょとんとして瞬いた。
「電気?いや、それは知らないな。ミサキの世界にはあったものなんだよな? それで街灯に明かりをともしていたのか? ……こっちでは街灯が光ってるのは、光るように魔力設定してあるだけだぜ?」
「……魔力」
そうかー。
魔獣がいるんだしね。
魔力がどうって話になっても、ぜんぜん不思議じゃないよね。
ははははははは…。
あー乾いた笑いがこみあげるわ。
やばい。
異世界だ異世界だってさっきから何度も思っているのに、また新たな衝撃が。
この世界って、思っていた以上に私の常識とは違うみたい。
赤い月に魔獣、謎の癒し人なる人間がいるってだけでもお腹いっぱいな感じなのに、電気代わりになる魔力もあるんですか。
はははははははは……。
まぁ人間がちゃんと生命活動できる世界だったことに感謝すべきかなぁ。
これが恐竜が闊歩する世界だったり、サルの惑星みたいだったりしたら、私の絶望はこんなもんじゃなかっただろうし。
私ってば運がいい!はず。
「魔力ってすごいんですね」
無性に疲れたっていうか。
できるものなら、家に帰って、ベッドに飛び込んで、お布団かぶって現実逃避したい。
一喜一憂した私を心配そうに見ているレイに、笑ってみる。
若干ひきつっているのは、仕様です。
0
お気に入りに追加
94
あなたにおすすめの小説
雨上がりに僕らは駆けていく Part1
平木明日香
恋愛
「隕石衝突の日(ジャイアント・インパクト)」
そう呼ばれた日から、世界は雲に覆われた。
明日は来る
誰もが、そう思っていた。
ごくありふれた日常の真後ろで、穏やかな陽に照らされた世界の輪郭を見るように。
風は時の流れに身を任せていた。
時は風の音の中に流れていた。
空は青く、どこまでも広かった。
それはまるで、雨の降る予感さえ、消し去るようで
世界が滅ぶのは、運命だった。
それは、偶然の産物に等しいものだったが、逃れられない「時間」でもあった。
未来。
——数えきれないほどの膨大な「明日」が、世界にはあった。
けれども、その「時間」は来なかった。
秒速12kmという隕石の落下が、成層圏を越え、地上へと降ってきた。
明日へと流れる「空」を、越えて。
あの日から、決して止むことがない雨が降った。
隕石衝突で大気中に巻き上げられた塵や煤が、巨大な雲になったからだ。
その雲は空を覆い、世界を暗闇に包んだ。
明けることのない夜を、もたらしたのだ。
もう、空を飛ぶ鳥はいない。
翼を広げられる場所はない。
「未来」は、手の届かないところまで消え去った。
ずっと遠く、光さえも追いつけない、距離の果てに。
…けれども「今日」は、まだ残されていた。
それは「明日」に届き得るものではなかったが、“そうなれるかもしれない可能性“を秘めていた。
1995年、——1月。
世界の運命が揺らいだ、あの場所で。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
外では氷の騎士なんて呼ばれてる旦那様に今日も溺愛されてます
刻芦葉
恋愛
王国に仕える近衛騎士ユリウスは一切笑顔を見せないことから氷の騎士と呼ばれていた。ただそんな氷の騎士様だけど私の前だけは優しい笑顔を見せてくれる。今日も私は不器用だけど格好いい旦那様に溺愛されています。
私の愛する夫たちへ
エトカ
恋愛
日高真希(ひだかまき)は、両親の墓参りの帰りに見知らぬ世界に迷い込んでしまう。そこは女児ばかりが命を落とす病が蔓延する世界だった。そのため男女の比率は崩壊し、生き残った女性たちは複数の夫を持たねばならなかった。真希は一妻多夫制度に戸惑いを隠せない。そんな彼女が男たちに愛され、幸せになっていく物語。
*Rシーンは予告なく入ります。
よろしくお願いします!
【完結】フェリシアの誤算
伽羅
恋愛
前世の記憶を持つフェリシアはルームメイトのジェシカと細々と暮らしていた。流行り病でジェシカを亡くしたフェリシアは、彼女を探しに来た人物に彼女と間違えられたのをいい事にジェシカになりすましてついて行くが、なんと彼女は公爵家の孫だった。
正体を明かして迷惑料としてお金をせびろうと考えていたフェリシアだったが、それを言い出す事も出来ないままズルズルと公爵家で暮らしていく事になり…。
【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!
雨宮羽那
恋愛
いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。
◇◇◇◇
私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。
元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!
気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?
元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!
だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。
◇◇◇◇
※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。
※アルファポリス先行公開。
※表紙はAIにより作成したものです。
異世界の美醜と私の認識について
佐藤 ちな
恋愛
ある日気づくと、美玲は異世界に落ちた。
そこまでならラノベなら良くある話だが、更にその世界は女性が少ない上に、美醜感覚が美玲とは激しく異なるという不思議な世界だった。
そんな世界で稀人として特別扱いされる醜女(この世界では超美人)の美玲と、咎人として忌み嫌われる醜男(美玲がいた世界では超美青年)のルークが出会う。
不遇の扱いを受けるルークを、幸せにしてあげたい!そして出来ることなら、私も幸せに!
美醜逆転・一妻多夫の異世界で、美玲の迷走が始まる。
* 話の展開に伴い、あらすじを変更させて頂きました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる