25 / 113
元の世界に帰れるヒントを模索中ですが
しおりを挟む
メンタル豆腐なので、キツい言葉とかいらないんで、気を遣ってくれたら嬉しいけど。
ここまでお世話になっている人に、そんなこと言えないしな。
貴族って、言葉とか態度とかバリバリ気を遣って情報戦してそうなイメージなんだけど。
この人、お人好しだし、言葉が雑だし、ほんとイメージと違うよな。
内容だけじゃなく言葉遣いそのものも、乱暴だし。
うーん、そういう文化な世界なのかな。
「私が気にしているのは、そっちじゃなくてですね。魔獣は、月の色が変われば、たぶん元いた世界に戻ってるんですよね?」
「ああ。そりゃ俺らだって、あいつらが消えた先を知っているわけじゃないけどよ。魔獣の生体を調べてるやつらが言うには、元の世界に戻っている可能性が高いらしいぜ。なんだったかな、詳しい話は覚えてねぇんだけど、実験してわかったとか」
「だったら! 私もなんらかの条件が整えば、元の世界に戻れるかもと思って、考え込んでたんです」
「ああ、そっか。そうかもなー」
意気揚々と私が言うと、レイは口は同意しながら、どこか複雑な顔で笑う。
……わかってるよ、そう簡単じゃないってことは。
だいじょうぶですよと、私は苦笑いを返した。
「私は月の色が変わった今もここにいますから、魔獣と同じようには元の世界に戻れないのはわかってます。でも少しは可能性があがったかなぁと思いまして」
「んー、まぁそうかもなー」
異世界からきた魔獣が簡単に元の世界に戻っているからって、自分も元の世界に簡単に帰れるかもなんて、少ししか期待していない。
駄目な可能性は、ちゃんと理解している。
期待しすぎているわけじゃないんだと言っても、レイはまだすっきりした表情にはならなかった。
この人、なんでこんなに優しいんだろ。
さっき初めてあったばかりの女のこと、こんなに考えてくれて。
異常な事態なのに、胸が温かくなる。
この人のこの態度は、私にだけ特別って訳じゃないと思う。
だけどその気持ちが嬉しくて、自然に笑みがうかんだ。
「レイは、心配性ですね」
「え?なんでだ?」
「私が帰れるかもって期待しすぎるのを心配してくれているんでしょう?……だいじょうぶですよ。これでも期待を裏切られるのには慣れています。レイには頼りなく見えているでしょうけど、これでも30年近く生きているんですよ」
こころもち胸をそらして、大人っぽく笑う。
レイは口は悪いし、考えなしな発言はするけど、ほんとにいい人だよな。
「……べつにそんなことを心配していたわけじゃないんだけどな」
「え?」
「なんでもない。それより、街についたぞ。門兵に話をつけるから、適当に話を合わせてくれよなー」
レイに促されて、周囲に人が増えていることに気づいた。
辺りは薄暗くなり、もうすぐ夜を迎えるからだろうか、街へと入る門の前は、短い列ができている。
高くそびえたつ壁をくぐるための門のところには、簡素な鎧に身を包んだ門兵らしき人影が数名見えた。
いよいよ、異世界の街に入るんだ……!
ここまでの道のりでは、暗い森と質素な街道、畑と遠くにぽつりぽつりと立っている小さな家しか目に入らなかった。
この中の街はどんな様子なのか、あまり想像できない。
不安と好奇心で胸がおどる。
私はうなずくと、レイのマントをちょこんと握った。
ここまでお世話になっている人に、そんなこと言えないしな。
貴族って、言葉とか態度とかバリバリ気を遣って情報戦してそうなイメージなんだけど。
この人、お人好しだし、言葉が雑だし、ほんとイメージと違うよな。
内容だけじゃなく言葉遣いそのものも、乱暴だし。
うーん、そういう文化な世界なのかな。
「私が気にしているのは、そっちじゃなくてですね。魔獣は、月の色が変われば、たぶん元いた世界に戻ってるんですよね?」
「ああ。そりゃ俺らだって、あいつらが消えた先を知っているわけじゃないけどよ。魔獣の生体を調べてるやつらが言うには、元の世界に戻っている可能性が高いらしいぜ。なんだったかな、詳しい話は覚えてねぇんだけど、実験してわかったとか」
「だったら! 私もなんらかの条件が整えば、元の世界に戻れるかもと思って、考え込んでたんです」
「ああ、そっか。そうかもなー」
意気揚々と私が言うと、レイは口は同意しながら、どこか複雑な顔で笑う。
……わかってるよ、そう簡単じゃないってことは。
だいじょうぶですよと、私は苦笑いを返した。
「私は月の色が変わった今もここにいますから、魔獣と同じようには元の世界に戻れないのはわかってます。でも少しは可能性があがったかなぁと思いまして」
「んー、まぁそうかもなー」
異世界からきた魔獣が簡単に元の世界に戻っているからって、自分も元の世界に簡単に帰れるかもなんて、少ししか期待していない。
駄目な可能性は、ちゃんと理解している。
期待しすぎているわけじゃないんだと言っても、レイはまだすっきりした表情にはならなかった。
この人、なんでこんなに優しいんだろ。
さっき初めてあったばかりの女のこと、こんなに考えてくれて。
異常な事態なのに、胸が温かくなる。
この人のこの態度は、私にだけ特別って訳じゃないと思う。
だけどその気持ちが嬉しくて、自然に笑みがうかんだ。
「レイは、心配性ですね」
「え?なんでだ?」
「私が帰れるかもって期待しすぎるのを心配してくれているんでしょう?……だいじょうぶですよ。これでも期待を裏切られるのには慣れています。レイには頼りなく見えているでしょうけど、これでも30年近く生きているんですよ」
こころもち胸をそらして、大人っぽく笑う。
レイは口は悪いし、考えなしな発言はするけど、ほんとにいい人だよな。
「……べつにそんなことを心配していたわけじゃないんだけどな」
「え?」
「なんでもない。それより、街についたぞ。門兵に話をつけるから、適当に話を合わせてくれよなー」
レイに促されて、周囲に人が増えていることに気づいた。
辺りは薄暗くなり、もうすぐ夜を迎えるからだろうか、街へと入る門の前は、短い列ができている。
高くそびえたつ壁をくぐるための門のところには、簡素な鎧に身を包んだ門兵らしき人影が数名見えた。
いよいよ、異世界の街に入るんだ……!
ここまでの道のりでは、暗い森と質素な街道、畑と遠くにぽつりぽつりと立っている小さな家しか目に入らなかった。
この中の街はどんな様子なのか、あまり想像できない。
不安と好奇心で胸がおどる。
私はうなずくと、レイのマントをちょこんと握った。
0
お気に入りに追加
94
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
異世界に来たようですが何も分かりません ~【買い物履歴】スキルでぼちぼち生活しています~
ぱつきんすきー
ファンタジー
突然「神」により異世界転移させられたワタシ
以前の記憶と知識をなくし、右も左も分からないワタシ
唯一の武器【買い物履歴】スキルを利用して異世界でぼちぼち生活
かつてオッサンだった少女による、異世界生活のおはなし
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています

騎士団寮のシングルマザー
古森きり
恋愛
夫と離婚し、実家へ帰る駅への道。
突然突っ込んできた車に死を覚悟した歩美。
しかし、目を覚ますとそこは森の中。
異世界に聖女として召喚された幼い娘、真美の為に、歩美の奮闘が今、始まる!
……と、意気込んだものの全く家事が出来ない歩美の明日はどっちだ!?
※ノベルアップ+様(読み直し改稿ナッシング先行公開)にも掲載しましたが、カクヨムさん(は改稿・完結済みです)、小説家になろうさん、アルファポリスさんは改稿したものを掲載しています。
※割と鬱展開多いのでご注意ください。作者はあんまり鬱展開だと思ってませんけども。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる